【レポート】

革新的なPC企業誕生をアピールするIBM、一部では警戒感も

 

7日夜、米国のプライムタイムのニュースは、どこも「IBMのPC事業売却」がトップだった。米国の象徴的な企業が、PCという注目度の高い事業を中国企業に売却する。そのニュースは、中国との関係を模索する企業を刺激し、そして中国の台頭を危惧する人たちに衝撃を与えた。当のIBMは、同社のPC事業のサイトで、グローバルリーダーと呼べる新PC企業の誕生につながる合意だとしている。

81年に米IBMがIBM PCを発売した時、Apple Computerは「IBMを歓迎します。心から…(Welcome, IBM. Seriously)」という広告で迎え撃った。こんな広告が飛び出すほど、IBMの参入はパソコン業界に黒船がやってくるようなインパクトがあったのだ。そのIBMにとってもPC事業はスムーズな道のりではなかったが、同社の参入は、それまで趣味やゲームに使われていたPCをビジネスの道具に脱皮させる原動力となった。

既報の通り、7日夜にIBMはPC事業の聯想集団への売却を発表した。聯想は12億5,000万ドルを現金と株式の組み合わせ(少なくとも6億5,000万ドルは現金)で支払う。さらに約5億ドルの負債も引き継ぐため、買収総額は約17億5,000万ドルとなる。

これにより、IBMは事実上PC事業から撤退することになる。だが、米IBMは、同社PC事業のサイトで「通常、私たちは革新的なPCを発表していますが、今日は革新的なPC企業を紹介します」という見出しを付けて、聯想との合意を説明している。内容も、IBMと聯想の合意によって、お互いに必要な部分を補完し合う革新的な新PC企業が誕生する点をアピールしている。

変わらぬ製品とサービスの提供を約束

PC新会社は本社をニューヨークに置き、主要拠点を中国・北京と米ノースカロライナ州ラレイに設置。営業拠点を世界中に展開する計画だという。IBMの上級副社長でパーソナルシステムグループのGeneral ManagerであるStephen Ward氏がCEOに就任、聯想の社長兼CEOである楊元慶氏が会長に就く。社員数はIBMからの約10,000人の移籍社員を含めて約19,000人となる。

両社の戦略的提携合意では、IBMが聯想に対して優先的にサービスやファイナンシングを提供、聯想はIBMにパソコンを供給する優先サプライヤーとなる。聯想のPC製品顧客に対して、IBMはグローバルサービス事業を通じて、リモートカスタマーサポートや技術サービスを提供、聯想の売上げの中からサービス料を受け取る。

ブランドに関しては、18ヶ月間はIBMおよびThinkPadやThinkCentreなどの現行の製品ブランド名が製品に付けられ、その後の40ヶ月はIBMとLenovo(聯想)の二つブランドが使われる見込み。6年目からは、Lenovoがメインブランドとなり、IBMは「技術提供」というような立場に収まる可能性がある。

つまり、今後しばらくはIBM ThinkPadやIBM ThinkCentreという製品が販売され、それらのユーザーは今と変わらないサービスを受けられる。ユーザーにとっては変化はなく、むしろ将来的にさらに優れた製品、そしてサービスを受けられるチャンスになる、としている。

余裕のDell、米市場独占のチャンス?

では、なぜ今回の売却劇が起こったのか? 原因の一つは"PCの日用品(コモディティ)化"と言われている。PCの価格は過去20年で10分の1程度までに下がり、米国ではノートPCで800ドル台、デスクトップPCなら300ドル台で、それなりの性能を持った製品が手に入る。ただ、アッという間に機能的に古くなってしまうPC、次々に新しい機能を取り込むPCは、このぐらい手頃な価格でなければ、一般消費者からは不満が出てくるのだ。その代わり、普及帯のPCはどれも同じような機能・デザインになってしまう。それでも、オリジナリティのある製品に比べて、没個性でも求めやすい価格帯の製品が売れている。

結果、PCメーカーはどこも製造のコスト削減と効率化で苦しんでいる。IBMもPC事業が年間90億ドル以上の売上を上げているにも関わらず、採算が合わない。パーツを安く仕入れ、在庫と受注のバランスを管理しながら、労働賃金の安い地域で組み立てる。それがPC事業が生き残るための手だてとなっている昨今、低価格戦略で成長する聯想にPC製造を手放すのは、理にかなった一手と言える。

IBMのPC事業売却が発表された日、PC製造でトップを行くDellのMichael Dell会長がサンフランシスコで開かれたOracleのカンファレンスに参加しており、その会場でレポーターのQ&Aに答えていた。同氏の立場としては当然とも思えるコメントだが、世界第3位となる聯想のPC新会社に特に警戒感を抱いていないと言う。「コンピュータ業界において、最後に合併や吸収が成功したのはいつのことだっただろう? 少なくとも、ずいぶんと昔までたどらなければ、そんな例はないはずだ」と述べ、異なった文化への挑戦だとしても、結局は自ら着実にビジネスを開拓していくのが成功への近道になるという持論を示した。

IBM製品の独特なユーザー層も不安材料の一つに挙げられている。米国においては、IBMのPC製品はほとんど小売店では販売されていない。と言うのも、ユーザーの多くは開発者やエンジニアなどのプロフェッショナル、または企業ユーザーに偏っているため、通販やオンライン直販に絞った方が効率的なのだ。実際、普段ThinkPadを見かける機会は少ないが、開発者会議などではズラリと見事なほどにThinkPadが並ぶ。それらのユーザーは価格よりも、製品の品質や耐久性/パーツの品揃え/サポートなどを重視する。

IBMのPC事業売却によって、DellやHP製品と価格的に競争力のあるThinkPadの登場を期待する声がある一方で、一部のユーザーからはIBM製品の独自性や品質が今後維持できるか疑問符を付ける声も出てきている。IBMは同社のサイトで「より革新的に、豊富な選択肢と価値を提供」とアピールしているが、それがどのような形で実現するのか。米国におけるLenovo-IBMのシェア、そしてこれまでThinkPadをよく見かけた場所でのIBM製品比率のを変化に注目していこうと思う。



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