【レポート】

地底文化フォーラムが開催、地底のパルテノン神殿でドラえもんが語られる…

    大塚実  [2004/12/02]

    いまさら説明するまでもないかもしれないが、今年は台風の"当たり年"だった。過去最多となる10個もの台風が上陸しており(これまでの記録は6個)、特に10月の台風23号などは各地に甚大な被害をもたらし、自然の驚異をまざまざと見せつけることになった。だが、こういった洪水被害を軽減・解消するため、地下で巨大なプロジェクトが進められていることをご存じだろうか。

    それは、「首都圏外郭放水路」。埼玉県の中川・綾瀬川流域の地下50mにある全長6.3kmの人工河川だ。この一帯は荒川・利根川・江戸川などの大河川に囲まれた低い土地であるため、これまでもたびたび浸水の被害にあってきた。この首都圏外郭放水路は、大雨で溢れそうになった河川の水をバイパス、江戸川に排出してしまうことでこの地域の浸水被害を防ごう、というもの。現在、江戸川寄りの3.3kmが完成しており、試験通水が実施されている。

    全体イメージ

    庄和排水機場

    その人工河川の出口にあたる埼玉県北葛飾郡庄和町・庄和排水機場にて21日、映画監督の庵野秀明氏らを招き、地底の魅力などについて語り合う「地底文化フォーラム」(主催:G-CANS PROJECT制作委員会)が開催された。当日は、硬軟入り乱れたプレゼンテーションが行われたが、フォーラム開始前に一般公開されたこの施設について、まずご紹介してみたい。

    首都圏外郭放水路は、5つの立坑と、その間を結ぶ地下水路から構成される。立坑は地上の河川に接続されており、洪水時にはこの立坑から水を流し込むことになる。上流から第5立坑、第4立坑と続き、最後の第1立坑の奥には、流水の一時的なバッファとなる「調圧水槽」と呼ばれる巨大な地下空間がある。どのくらい巨大かというと、その大きさは幅78m、奥行き177m、高さ25.4mにもなるもので、25mプールで言うと900杯分もの水を貯めることができる。

    調圧水槽の地上部分はグラウンドになっている

    これが地下への入り口。ここよりだいぶしっかりしている

    階段をグルグル降りていくと、突如巨大な柱が現れる。柱は全部で59本

    調圧水槽は、この様子から"地底のパルテノン神殿"とも例えられる

    ここに一旦蓄えられた水は、付随するポンプ設備によって、江戸川へと排出される。水槽の大きさが大きさだけにこのポンプも超強力で、パワーは1万4,000馬力。飛行機用のガスタービンエンジンを改造したものが使われているという。現在、ポンプは2つ設置されており、合計排水量は100立方m/秒。完成時にはこれが4つになる予定で、こうなると25mプールの水を1秒程度で吸い出すことが可能になる。

    奥がエンジンで、手前は減速機。4,000rpmを145rpmにしてプロペラを回す

    入っているエンジンはこれ。見るからに飛行機用という

    隣では3・4号エンジンの設置準備も

    そして、地上で江戸川へと合流する

    フォーラムは、この調圧水槽の中で開催された。地下愛好者だという作家の荒俣宏氏からの開催メッセージで幕を開け、その後、ゲストが登場。招待されたのは、東京タワー・霞ヶ関ビル・黒四ダムなどの巨大建造物を愛することでも知られる映画監督の庵野秀明氏、地下室一筋30年という日本鋼製地下室協会・会長の東方洋雄氏、この首都圏外郭放水路建造にも関わった国土交通大学校・教授の宮尾博一氏、国内各地の地底空間を撮影した写真集も出している写真家・内山英明氏という、一癖も二癖もありそうな人たちばかり。

    荒俣氏からのメッセージ

    会場には、抽選で選ばれた250人が詰めかけた

    そんなゲストを前に、早速プレゼンが開始された。最初のプレゼンターとして登場したのは地底文化総合研究所からの2人で、内容は「のび太の冒険に見る地底の存在意義」というもの。ドラえもんの長編映画を研究したもので、それによると、地底が舞台となったのは25作品中15作品で、ドラえもん達が地底を冒険していたのは14,674秒(ストップウォッチで計測したそうだ…)。という感じで始まり、地底シーン時間と観客動員数の関係などについて報告した。これについて、庵野氏は「ドラえもんは1本も見ていないんで…」、宮尾氏は「役所の立場からは評価できないんですが…」と困惑気味のコメント。

    地底的ひみつ道具の第1位は「どこでもホール」、らしい

    地底時間と観客動員数の比較。関連があるようなないような

    そして、3番目のプレゼンにはその宮尾氏が登壇、首都圏外郭放水路についての説明を行った。概略については省略するが、前述の試験通水は平成14年から開始されており、同年に6回、翌15年には5回、今年は6回、すでに実際に水を通している。特に、今年の台風22号の時は、660万トン(東京ドーム5.4杯分)の水を排出し、被害を激減させた実績があるとのことだ。

    試験通水による治水効果(H14年)。同程度の雨量だが、浸水は激減

    試験通水での調節量。今年の台風22号・23号でも利用された

    フォーラムを締めるコメントは以下の通り。「役所の仕事は面白い。建設途中のものもオープンにしてもらえれば」(庵野氏)、「今は自分史がブーム。タイムカプセル的な使い方はできないか」(東方氏)、「堤防の補強には土が必要。地下に構造物を作ると一石二鳥」(宮尾氏)。

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