【レポート】
日本のインターネット業界の一年を締めくくるイベントとして毎年恒例の「Internet Week」が、今年も11月30日から12月3日までの予定でパシフィコ横浜において開幕した。初日の30日はOSDNジャパン主催の「オープンソースウェイ」が開かれ、午前中には今夏のセキュリティキャンプなど、昨今の様々なIT振興政策の仕掛け人としても知られる経済産業省商務情報政策局情報処理振興課の久米孝氏が登場し、政府の経済産業政策としてのオープンソースを推進する意味について講演を行った。
まず久米氏は、経済産業省がオープンソースソフトウェアの開発を支援する意味について、ベンダに対しては「独占的なソフトウェアが市場に存在する場合に、それをコモディティ化するための選択肢を提供する」ことや「ソフトウェアの対外依存構造から脱却する」こと、またユーザに対しては「オープンソース環境に円滑に移行できるような相互運用性を確保すること」といった目的があるほか、人材育成の観点から「中身がブラックボックス化されたソフトの設定のみを覚えたところで真のエンジニアは育たない」ということで、きちんと内部の動作原理を理解した形で開発が行えるエンジニアを育てる場として、オープンソースは重要な役割を持っているとの見解を示した。
これに対し、マイクロソフトの古川亨氏などは「政府が(IPAなどを通じて)オープンソースソフトウェアの開発に資金を提供することはソフトウェア産業の衰退につながる」などと批判していると久米氏は述べた上で「古川さんは話がうまいのでつい信じてしまいそうになるが、そもそも前提の部分で事実誤認がある」と主張。同氏は「政府がGPLのソフトウェアのみを特に優遇している事実はないし、ソフトウェア産業全体に対する様々な振興策の中で、逆にGPLのソフトにだけ補助金を出さないと言うのも変な話」「それに特定の企業だけが利益を受けるようなプロジェクトにしか補助金を出してはいけないのなら、インターネットに補助金を出したアメリカのやり方こそ責められるべきだが、誰もそれには文句を言っていない」と述べ、オープンソース支援策の正当性を訴えた。
オープンソースソフトウェアの開発に関する日中韓を始めとするアジア各国の連携については「因果関係はよくわからないものの、東南アジアで政府がオープンソース振興策を打ち出すと、その国でOSの価格が下がるなどの動きが出始めた」として、実際にその成果が出つつあることを示した。ただ現実にはオープンソースを扱う開発者の絶対数がまだまだ少ないため、久米氏はLinux 2.6カーネルの例を挙げて「現在はコード全体における日中韓の貢献度は2%程度にとどまっているが、これをとりあえず5%ぐらいに引き上げたい」との数値目標を示し、実際にそれに向けて3カ国の間で協議を行っていることを明らかにした。
またアジア諸国における連携は、特に対中国政策としても意味があると久米氏は語る。中国が国策としてLinuxの開発支援を行っていることはよく知られているところだが、久米氏はその開発過程について「中国も悪気があるわけではないのだが、いわゆる国際標準を定める標準化プロセスに対し、一定の見識を持っている人材が不足しているため、どうしても国際的に通用しない中国独自の標準案を作る方向に向きがち」とその問題点を指摘。中国が国際標準と整合性の取れた形の標準化を行うことは、日本のソフトウェアベンダが中国市場で活動しやすくなるメリットもあることから、「日本は国際標準化プロセスについて一日の長がある」として、日本が積極的に中国に対しこの点についてアドバイスを行っていく方向で活動を進めているとも語った。
後半で久米氏はオープンソースを利用した人材育成のメリットについて「現在の小・中・高校における情報の授業は、特定ソフトのマニュアルのようになってしまっているが、それでは真のエンジニアは育たない」「ソースコードを読んでプログラムの働きを理解し、自分でもコードを書いてみることができるという点で、オープンソースはエンジニアの育成に適している」とその利点を語った。
その上で同氏は「エンジニアを目指す青少年を集めて、囲碁や将棋における奨励会(プロ育成組織)のようなものを作れないだろうか」と考え、現在オープンソースを教材として学生をエンジニアとして育成する「ITクラフトマンシップ・プロジェクト」構想の準備を進めていることを明らかにした。実際のところ「アイデアとしてはいろんな人からいいと言われるが、実際どのようなカリキュラムでやるかとか、ボランティアベースで協力をお願いできる人探しなど、いろいろ難問が多い」ということで、具体的な方法については提案募集中の段階だということなのだが、既に来年度予算の概算請求には同構想の予算も計上されているとのことなので、どのような形でこの構想が実現するか注目が必要といえそうだ。
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