【レビュー】

ひっそりとリリースされたPentium 4 570J

1 E0 Steppingへの変更

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日本時間の11月16日、IntelはLGA775ソケットで利用できるPentium 4の最上位製品である3.8GHz駆動のPentium 4 570Jをリリースした。従来と異なり、製品発表はおろかプレスリリースすらないひっそりとした製品出荷となったこのPentium 4 570Jは既存のPentium 4コア、つまり800MHz FSBで1MBキャッシュを搭載するPrescottアーキテクチャとしては最終製品となるものである。その最後の製品を色々とご紹介したい。

E0 Steppingへの変更

冒頭にも書いたとおり、現在のPentium 4に関してはこの3.80GHz駆動の570Jが最終製品となる。厳密に言えば、この後派生型が登場してくることになるのだが、とりあえずLGA775としてはこの3.80GHzがハイエンドである。以前Pentium 4は4GHzに達するという話はあったが、これに関しては正式にキャンセルになった事が確認された。ただ、このキャンセルに関しては、要するにPentium 4 580/580Jがキャンセルになったという話であって、今後登場するプロセッサの動作周波数が4GHzを超える可能性まで否定するわけではない。ただ現実問題、XeonがPentium 4のコアを流用する形で製品展開する限り、Xeonに関しても4GHz超えをする可能性はあまり高くないだろう。更にItanium2に関しては未だに2GHzにすら達していないわけで、現実問題としては3.8GHzという動作周波数がハイエンドということになる。

さてそのPentium 4だが、既存のPentium 4 520~560に加えて、まもなくPentium 4 520J~560Jという製品が登場する。このJ付きPentium 4は、従来の製品と比べていくつかの違いがある。その違いとは

  • Execution Disable Bit(XD Bit)
  • Enhanced Halt State(C1E)
  • Thermal Monitoring 2(TM2)

の3つの機能が盛り込まれた事だ。実はこれらの機能は、Pentium 4がE0ステッピングに上がることで実現されている。現在のPentium 4はD0ステッピングのもので、これらではこうした新機能への対応は不可能である。ちなみに各々の内容はというと、

XD Bit : AMDのNXビットとかと同じく、要するにコード部とデータ部を分けた上で、データ部にコードが埋め込まれた場合にこれを実行しないようにするもの。Windows XPのSP2に搭載される「データ実行防止(DEP)」に対応したものである。

C1E : ACPIにおいて、CPUは通常C0ステートとC1ステートを行ったり来たりしている。C0というのは実行ステートで、実際にプログラムを処理している状態、C1というのは待ちに入っている状態である。待ちというのは、キーボード入力を待っているとか、マウスの操作を待っているという状況であり、こうした場合OSはHLT(Halt)命令を実行することで、余分にCPUの消費電力が上がらない様になっている。C1EというのはこのC1ステートの中で、同時に電圧も落とすことで、待機時の消費電力をより積極的に落とそうという仕組みである。この方式では、ソフトウェア側に変更が不要という点で画期的な仕組みで、これによる(待機時の)消費電力が3分の1程度に減らせるという。

ただしデメリットも当然ある。一般にC0とC1の間の遷移時間はμsecのオーダーである。ちょっと古い話だが、Mobile Pentium IIIの場合、C0/C1の遷移時間は1μsec以下、C0/C2の遷移時間ですら10μsec(C0→C2)/1μsec(C2→C0)、C0/C3の遷移時間は100μsecのオーダーとされている。これに対し、今回のC0/C1Eの遷移時間はmsecのオーダーだそうである。理由は簡単で、電圧を急激に変化させると問題が起きやすいので、少しづつ変化させてゆくしかないからなのだが、この結果として煩雑にC1Eを利用すると当然体感速度も遅くなるし、全体的にレスポンスが鈍く感じられる可能性も高い。

TM2 : 元々Pentium 4では内部のサーマルダイオードで温度を監視しており、ある程度以上の温度になるとプロセッサの破壊を防ぐためにシステムをシャットダウンしたり、動作クロックを落としたりするという機能を持っている。TM2はこれを更に発展させたもので、クロックを落とすと共に電圧も落とすという仕組みだ。まず動作クロックを25%程落とし、更に電圧を落とすことで、トータルで40%程度まで発熱を下げる仕組みである。

これはあくまで非常用というか、通常利用するシーンでTM(Thermal Monitoring)が動作するのはあきらかにおかしいので、逆に言えば通常の利用ではこのTM2の恩恵を受けるケースは殆ど無い筈で、実際そうあるべきであるが。

といった事になっている。なお、XD Bitはともかく、C1EおよびTM2に関しては単にCPU側の対処だけではなく、電源レギュレータの側にも対応(動作中にコア電圧をダイナミックに変更できるようにする)が必要な事から、Socket478プラットフォームでは対応が出来ない(従来のSocket478マザーボードのデザインガイドには、電源に関してこうした機能が盛り込まれていない)。このため、C1E及びTM2に関して、対応するのはLGA775プラットフォームのみとされている。

また、既に発売されているPentium 4に関しても、細かなプロセスの改善が行われ、消費電力の低下が実現されている。基本的にはE0ステッピングになることで、低い周波数の製品については消費電力が多少抑えられているが、これが一部のD0ステッピングの製品についても実現している。

もっと正確に言えば、そもそもLGA775の場合、Platform Compatibility Guideには04Aと04Bという2種類が用意され、04AはTDPが84W以内、04Bは115W以内と規定されている。現実問題として3.2GHz駆動あたりまでの製品は「殆ど」が04Aに準拠であるが、一部04Bに対応したものもある。具体的に見てみると、3.2GHz駆動のPentium 4 540の場合、表1の様になっており、また3.4GHz駆動のPentium 4 550ならば表2の様になっている。つまり、84Wで動作するものと、これを超えるものが混在しているのが現状である。流石に3.6GHz駆動のPentium 4 560や3.8GHz駆動のPentium 4 570では全てTDPが115Wになっているが、3.4GHzまでの範囲で製品を選ぶつもりならば、04AスペックのCPUを選べば多少発熱の処理が楽になる。

○表1

sSPECCore SteppingCore VoltageTDP
SL7PXE01.287-1.400V84.0W
SL7PWE01.287-1.400V84.0W
SL7LAD01.287-1.400V103.0W
SL7J7D01.400V84.0W
SL7KLD01.400V84.0W

○表2

sSPECCore SteppingCore VoltageTDP
SL7PYE01.287-1.400V84.0W
SL7PZE01.287-1.400V84.0W
SL7KMD01.400V115.0W
SL7J8D01.400V115.0W
SL7L8D01.287-1.400V115.0W

ではどうやってこれを選択するか? という話になる。基本的にはsSPECを見ればわかる訳だが、これは非常に大変である。ただ、リテールパッケージの場合、スペックの下に"04A"ないし"04B"という、どちらのPlatform Compatibility Guideに準拠しているかの記載がある(Photo01)ので、これを見て判断するのが便利だろう。

ところで話をJ付きに戻す。要するにE0 Stepping以降のPentium 4はProcessor Numberの後ろにJがつくことになる訳で、当然ながら3.8GHz駆動のPentium 4も570JというProcessor Numberになる。ただの570という製品は存在しないが、この製品の場合D0 Steppingのコアが存在しないためである。

市場投入時期という点では、まず上位9プロセッサナンバー製品が登場し、次第に下位製品が順次という形になるようで、下のほうの製品まで出回るのは年末位になってしまいそうだ。

ちなみに「なぜ561とか571ではなく、560Jになったのか? 」という質問をIntelサイドに投げかけてみた。というのは、このページには「今後、インテル製プロセッサに新しいテクノロジが搭載され、機能が進化した場合にもプロセッサ・ナンバの数字は大きくなります。」という表記がある訳で、では今回の改良は機能の進化ではないのか? という素朴な疑問が湧いたからだ。これに関してインテルからは、 「プロセッサナンバを導入する際、同一ファミリー製品間での機能や特徴の違いを数値で表現するという、その考え方には変わりありません。しかし、今 回導入するExecute Disable Bitに関しては、導入前の製品と、導入後の製品を消費者が見分ける上で最もシンプルな方法は何かと考えた場合、プロセッサナンバの数字を変えるのではなく、サフィックスの文字を付ける方がより良いと考え"J"を付ける判断をしました。今後も、新たな機能を付加する際に、プロセッサナンバの数字で表現するべきか、サフィックスの文字で表現すべきか、それぞれの機能の持つ意味を考えた上で消費者にとってより良いと思われる方法を選択していく考えです」 という返答が返ってきた。こうしてみると、先のページで示す「機能」とは、直接性能向上に結びつくものだけを指しているのかもしれない。

なお、冒頭でちょっと触れた「派生型」であるが、単にE0 Stepping以外の後継製品も用意されていると考えて間違いない。今年9月のIDFで、デスクトップ向けにもデュアルコア製品を投入する用意があることは既に報じられているが、それが実際に投入されるのは来年後半のことで、それまでの1年をこのPentium 4 570Jで凌げるとは流石に思えないからだ。これに関してはPentium 4 XE 3.46GHzの記事で触れた通りL2キャッシュを2MBにした製品が順次投入される予定だが、記事の中で指摘したSL7RRという謎の製品(3.4GHz/2MB L2キャッシュ/800MHz FSB)に関しては「おそらくPentium 4 XE 3.4GHzのデータを間違えて掲載したものだ」という指摘がIntelサイドからあった。Intelによれば、このSL7RRのCPUID Stringとして示される"0F25h"はPentium 4 XEのものであるからという話で、実際コレと比べてみると、TDPやCore Steppingなどが全く同じであるため、90nmプロセスの新コアの情報という訳ではないようだ。ただIntelサイドはSL7RRの情報自体はミスだとするものの、今後2MB L2キャッシュのPentium 4が出る事自体は特に否定はしなかった。

赤丸で囲んだ部分。ただ店頭では万引防止などもあって、自由にパッケージを見て確認できる場合は少ないと思うので、このあたりはちょっと問題である。

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インデックス

目次
(1) E0 Steppingへの変更
(2) BTXがようやく立ち上がる?
(3) ベンチマーク環境
(4) ベンチマークその1
(5) ベンチマークその2
(6) ベンチマークその3
(7) ベンチマークその4
(8) ベンチマークその5
(9) 考察

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