【レポート】

三越の「お客様本位」から生まれたWebアクセシビリティ

    石田優子  [2004/11/18]

    17日、東京都の毎日ホールで、毎日新聞、インフォアクシア主催の「第3回ユニバーサロン・アクセシビリティセミナー『担当者が語る! 三越ショッピングサイトが取り組むWebアクセシビリティ』」が開催された。

    第1部では、三越本店e-ビジネス推進室 副室長の金沢春康氏より、三越のWebアクセシビリティへの取り組みが紹介された。

    左が三越本店e-ビジネス推進室 副室長の金沢春康氏

    三越の前身は1673年に創設された呉服屋「越後屋」である。越後屋は、それまでは武士や富豪相手の商売であった呉服屋の概念をくつがえし、庶民を相手にした店売りを始めた。庶民に対してのアクセシビリティを確立した、いわばベンチャー企業であった。お客様を中心とし、どうアクセシブルにするか、お客様の欲するものにはどんなことでも取り込むといった精神が、この時、確立された。その精神は、1904年に三越がデパートとして新たに創業した時にも引き継がれた。当時の店員心得10条には「お客様に心の眼を持って応対せよ」「お客様本位が三越の精神であるから片時も忘れるな」というような言葉が並ぶ。「お客様が大事」これが、三越がWebアクセシビリティに取り組む原点となっている。

    三越サイトのWebアクセシビリティへの取り組みは、2003年8月、とある雑誌に掲載されたIBMの音声ソフトの開発担当者の声を、三越社員が読んだことから始まる。視覚障害者のショッピングが話題となっており、ショッピングサイトのアクセシビリティが問題とされていたのだ。視覚障害者でも気軽にショッピングできるサイトになろう、お客様本位になろうと発心したこの社員の声は、トップにもスムーズに伝わったという。そして、三越のWebアクセシビリティへの取り組みが開始された。

    「お客様が大事」が、三越がWebアクセシビリティに取り組む原点

    IBM、三越のWebサイト制作を担っている三浦印刷、そして三越の3社によるプロジェクトチームが結成され、2004年の3月にWeb改善のプロジェクトが始動した。三越の全ページをアクセシブルなものにするには工数、コストが掛かりすぎる。このため、百貨店としては大切な6月の中元商戦を目標とし、中元商品のショッピングページからアクセシビリティの向上を図ることにした。全ページをアクセシブルにしなくとも、まず、一面突破に意味があるととらえたためだ。そして、ショッピングカートのアクセシビリティに着手。現在位置を色分けで説明していた購入ステップの画像に、それぞれの位置を知らせるalt属性をつける。マウス操作が苦手な障害者や高齢者のために、ラジオボタンで選択できる範囲を広げるなど、様々な改良が行われた。また、商品選択から購入までのステップ数をいかに少なくするかといった点も研究された。

    そして、アクセシブルに変わった中元ショッピングページは、6月から7月にかけて前年比34%強の売上高を得た。インターネットショッピング全体の売上高は毎年増加しているため、その増加率のうち、どの程度がサイトのアクセシビリティ強化によって生み出されたかは不明というが、視覚障害を持った顧客から「がんばってください」というメッセージが届いたり、マスコミで取り上げられたりと、顧客サービス、プロモーション面では大きな成果があったという。また、視覚障害者向けのalt属性での商品説明を見直す中で、それまでのテキストによる情報提供がいかに不十分であったかを知る一助にもなったという。これは視覚障害者だけでなく全閲覧者へのサービス向上となった。三越では、この経験からアクセシビリティ向上のポイントをガイドライン化し、新規ページについては、すべてアクセシブルなものにしている。「全ページをいきなりアクセシブルなものにするのは大変だ。100%アクセシブルなサイトを1つ作るより、1%アクセシブルなサイトを100個作る方が大事なのではないか」と金沢氏は語った。

    第2部では、インフォアクシアの植木氏より「米国の最新動向に学ぶ IDEAS 2004」として、リハビリテーション法508条をテーマにしたカンファレンスの紹介があった後、トークセッションとなった。その場では、せっかく三越のショッピングカート自体をアクセシブルにしても、決済方法の、クレジットカード会社やコンビニ決済のサイトがアクセシブルでないために、ユーザーが操作に戸惑って、そのフォローに時間を割かれたという話などが出た。海外の銀行系のサイトなどではアクセシビリティ向上が浸透しているが、日本では非アクセシブルなサイトが多いことが指摘され、単に1サイトの改善ではなく、Web全体のアクセシビリティ向上の必要性が、改めて問われた。

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