【レビュー】

デジタル写真を紙焼きのように扱える画像管理ソフト「Picasa」

3 時間を描写する表示形式も

    美崎薫  [2004/11/11]

    人の操作の履歴こそが情報

    「人がモノを動かした」という履歴は、はたして、無視してしまってよい無価値なものなのだろうか。似たような写真を近くに集めてくるという作業は、きわめて知的で、コンピュータにとってはもっとも苦手なものである。それを行えないのは、人間に整理ができないのではなくて、コンピュータが未熟なだけではないのか。

    似たものを並べる機能は、かつて日立製作所が研究発表として出していたことがあったが、まだ実用になっているわけではないようだ。

    ファイル名の順番に並ぶのであれば、並べたい順番にファイルの名称をつけ替えればよいわけではあるが、ただ似たものを集めるだけのためにファイル名を変えるのは大げさすぎる。

    そうした不満の上に立ってみると、Picasaの「サムネイルを置きたい場所に置くことができる」という特徴が際だって見えてくる。ダイレクトオペレーションであるから、作業はリアルで一貫性をもっている。次世代の環境を預言しうる先見性に満ちているといえる。ファイルは置いた場所に、永遠に置かれている。これほどの永続性と一貫性はないのであって、その一貫性こそが安心感につながるのである。

    時間を描写するTimeLine表示

    3つめの特徴は、TimeLine表示である。

    写真が時間を記録し、それを見ることによって記憶につながることを可能にするのだとしたら、写真を時間の流れという仮想的な時刻順に並べる機能は、きわめて重要な意味をもってくる。Picasaは、そのタイムラインを、空想的な円環上に表示する。写真のサムネイルをポインタ操作すると、慣性のついたエアホッケーでもしているかのように、なだらかに動かすことができる。このしなやかさはそれだけで充分に新しい。

    TimeLine表示

    TimeLine表示では、フォルダごとの写真が、微妙に重ねられて表示されている。そのため、いちばん上の1枚を見るだけでなくて、そのうしろから覗いている写真の色や形が記憶を刺激してくる。タイルに区切ったサムネイルでは見えないものが見える。記憶を刺激してくれる。フォーカスされている写真は、バックグラウンドに拡大表示されていて、これまたこのざっくりした感覚が不思議と記憶につながってくる。

    未来への展望

    Picasaには現時点では、まだ問題もある。代表的なものは、

    1. 日本語表記が文字化けする
    2. やはりスケーラビリティが弱く、10万件くらいの写真を登録すると動作が極端に遅くなる(たとえば起動や再表示に数分かかることもある。これはPicasaのフォルダにサムネイルを作るためで、10万件の写真では4GBほどになっていて、遅い理由はわからなくはないが、根本的な欠点ではある)
    3. Exif情報にしたがって分けるので、フォルダの構造は無視される

    などである。しかし、フォルダのシームレス表示、ダイレクトオペレーション、TimeLine表示、この3つのずば抜けて提案性に満ちた使い方ができるだけでも、Picasaは充分に刺激的である。数千件程度であれば、楽々と取り扱うことができるだろう。差し引きすれば、使ってみて損はない。

    Picasaに刺激された写真ソフトの登場を待ちたい。もちろん、Picasa自体がもっと進化してくれることをも望む。

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