【レポート】

性能を損なわないエミュレーション技術、「QuickTransit」のインパクト

 

米Transitive社長兼CEOのBob Wiederhold氏

米Transitiveが9月13日に、「QuickTransit」というユニバーサル・エミュレータと呼べるような製品を発表した。特定のプラットフォーム向けに開発されたアプリケーションを、ソースコードやバイナリに手を加えずに他のプラットフォームで実行できるようにするという。しかも、ネイティブのおよそ80%のパフォーマンスを発揮できるという。その言葉通りだとすれば、プラットフォームの垣根を取り払う画期的な製品となる。そこで、同社がQuickTransitで、どのようなビジネス戦略を考えているのか、社長兼CEOのBob Wiederhold氏に聞いた。

90/10ルールに従った最適化

最初にQuickTransitの行程を大まかに説明しておくと、実行されたコードはQuickTransitのフロントエンドデコーダで"Intermediate Representation(IR)"という形へと翻訳される。その後、"Optimization Kernel"がIRをブロック単位で最適化し、バックエンド・コードジェネレータで、ターゲットとなるプラットフォームで実行できる形にエンコードされる。

汎用性のカギとなっているのが、全てのプラットフォームで共通コードとなるIRだ。IRを中心としたモジュラー式のアーキテクチャを採用することで、IRの前後を組み替えるだけで容易に複数のプラットフォームに対応できる。

現在使われているアプリケーションの多くは実行時間の90%がコードの10%で行われる「90/10ルール」に収まっている。そこでQuickTransitでは、Optimization Kernelが頻繁に実行されるコードを特定し、これらを集中的に最適化、結果をキャッシュに保存することで、ネイティブの約80%という性能を可能する。

ソースのグラフィクスとOS環境は、Graphics MapperとOperating System Mapperによって、細部にわたってターゲットの環境に結びつけられており、翻訳されたアプリケーションはターゲット環境で違和感なく利用できるようになるという。「QuickTransitが機能していても、ほとんどのユーザーはそれに気づかないでしょう」とWiederhold氏は言う。

翻訳プロセスにかかるシステムリソースのオーバーヘッドはわずか500KB。大規模サーバシステムで、アプリケーションのメモリイメージの約25%、比較的小さなサイズのアプリならば10~30MBのメモリの追加でQuickTransitを導入できるそうだ。

波風を立てないエミュレーション技術

Transitiveが、QuickTransitのベースとなっている技術「Dynamite」を、初めて発表したのは2001年である。当時もパフォーマンスを損なわないエミュレーション技術として注目され、中でもPowerPCのクロックに不満を持っていたMacintoshユーザの間では、「x86プロセッサでMac OSを動作させられるかもしれない技術」として話題となった。また、QuickTransit発表の中で、同社は「特定のプロセッサとOS用にコンパイルされたアプリケーションを別のプロセッサとOSで実行できる」と説明している。ただ、このようなQuickTransitに対する期待や、同社の説明は誤解を生みやすいように思える。

例えば、Transmetaのように特定のハードウエアのターゲットを設定して設計されていれば、エミュレーションでも安定した成果が得られる。だが、APIが異なる異種OS間でアプリケーションを安定動作させるのは容易ではなく、過去の失敗例は枚挙にいとまがない。もしOSとプロセッサのあらゆる組み合わせが可能ならば、まさしく夢のような技術だが、残念ながら、そのようなQuickTransitに対する期待は、モジュラー式の柔軟なアーキテクチャが、一人歩きして伝わっている面がある。

Wiederhold氏に「MS OfficeをLinuxプラットフォームで動作させることは可能か?」と確認してみたところ、可能性を完全否定しなかったが、答えは「No」だった。

そもそもTransitiveが開発しているのはハードウエアの仮想技術であり、アプローチはTransmetaのCMSに近い。現在、QuickTransitがサポートしているプロセッサはItanium、Opteron、x86、POWER/PowerPCだが、OSは「UNIX/Linux-like」のみ。この同社がサポートしている範囲内では、同社がアピールするパフォーマンスを発揮できる。Windowsをサポートするのは難しくないが、その場合ソースとターゲットが共にWindowsとなる。

また、Wiederhold氏は、エミュレーション技術の諸刃の危険性を指摘する。同社のQuickTransitでの狙いはIT資産管理の改善であり、そこにビジネスチャンスを見いだしている。例えば、QuickTransitを利用すればプラットフォームをアップグレードしたとしても、過去のソフトウエア資産を活用できる。ソフトウエア開発者にとっては低コスト・短期間で、より幅広いプラットフォームを対象としたソフトウエアの開発が可能になる。仮にQuickTransitがLinux上でOfficeが動作するような技術だとしたら、すぐに訴訟問題に発展するだろう。その点には細心の注意を払っており、それはビジネスモデルにも反映されている。

搭載製品の発表は今年第4四半期

Transitiveは、QuickTransitを深く浸透させるために、3ステップのビジネスモデルを考えている。第1段階はコンピュータOEMとの提携。それぞれのシステムにQuickTransitを組み込んでもらい、プラットフォームの標準機能としてエンドユーザーに提供する。第2段階では、ISV(独立系ソフトウェア会社)や企業内部のソフト開発グループに顧客の範囲を広げる。現在は、この第2段階がスタートした直後だという。そして最後の第3段階では、政府機関などを対象とするITサービス企業やシステムインテグレータとの提携を強化する。エンドユーザーへの直接販売は行わない。これはサポートしている範囲内で高い性能を実現するためであり、技術がユーザーに正しく使われていることを同社が管理する意味もある。

同社の方針の範囲内で、QuickTransitを活用できる市場としてサーバ/メインフレームが挙げられる。それが現時点で、唯一の顧客ターゲットとなっている。Wiederhold氏は具体名を挙げるのは避けたが、現在コンピュータOEMとして事業を展開する6社がQuickTransitの導入を進めており、今年第4四半期にはQuickTransitが組み込まれた製品の発表が予定されているそうだ。

もちろん、将来的には市場の広がりを期待している。例えば、ゲーム市場では、Xboxが次世代機で搭載プロセッサをPentium lllからPowerPCに変更するように、世代間で大きな変化が起こり得るが、過去のプラットフォームとの互換性は欠かせない。同様に変化が著しいコミュニケーション産業でも、変化と互換性を両立させるためにQuickTransitのような技術が求められるようになると予測する。

それらに比べるとパソコン市場では、興味を持つ人は多くても、必要不可欠という状況は生まれていない。だが、最近では64bitへのシフトが加速する中で、QuickTransitが必要とされる場面が見え始めていると言う。



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