【レポート】

「出せば絶対売れる」1セグモバイル、放送と携帯、双方にメリットあり

    佐藤晃洋  [2004/09/02]

    8月25日~27日の3日間、東京・新宿の工学院大学において開催された「2004年映像情報メディア学会年次大会」では、映像圧縮などの画像処理技術やディスプレイ・ストレージ・アンテナなどのハードウェアの開発、システムの運用など、テレビ業界に関する話題が数多く紹介された。本稿ではその中から、最終日に行われた「地上ディジタル携帯端末向け放送の将来展望」と題されたシンポジウムの模様をご紹介したい。

    携帯電話やPDAなどの移動端末を対象とした地上デジタル放送(通称「1セグモバイル」)に関しては、映像の圧縮方式に関する特許のライセンス料を巡る問題などが原因で放送開始が当初の予定より遅れているほか、放送内容などの問題から普及に疑問を持つ業界関係者も少なくないが、果たして放送局や、コンテンツ面で競合する従来の携帯向けコンテンツ事業者などはどのように1セグモバイルをとらえているのだろうか。

    1セグモバイルは「出せば絶対売れる商品」

    佐野徹氏

    最初に登場した日本テレビの佐野徹氏は、1セグモバイルについて「出せば絶対売れる商品」だと強い自信を見せた。

    まず同氏は、一般的な放送ビジネス成功に必要な条件として「受信のしやすさ(伝送力)」「コンテンツ力」「端末商品力」の3つが挙げられると述べた上で、伝送力については「衛星(モバイル放送)に比べると伝送力は若干落ちるが、昨年8月の実験(深夜帯に東京タワーからフルパワーの地デジの電波を送出)の時に都内各所で受信テストを行ったところ、十分商売になるレベルで受信ができた」、コンテンツ力については「当面は固定受信と同じ番組を流すことになるが、家と同じ番組が携帯電話で見られることに十分ニーズがあるというアンケート結果も出ている」、端末商品力については「携帯電話は今や誰もが持っており、テレビがデジタル化してそれに乗ることでテレビを持つ人が圧倒的に増える」と、1セグモバイルでは3つの条件が全て整っているとの見解を示した。

    また同氏は「家電量販店ルートだけでなく携帯電話の代理店ルートでも端末が売られることになるため、今までと違ったスキームでテレビが売られていく」として、販売面でも1セグモバイルは有利であると語った。ビデオリサーチと同社が共同で行ったアンケートでも、1セグモバイル対応の携帯電話端末に「魅力を感じる」と答えた人が60%を上回るという非常に高い数値が出ていることから、「これは出せば絶対売れる」とその強い手ごたえを訴えた。

    さらに同氏は「3Gの伝送能力を生かせるような大容量コンテンツはアプリのダウンロードか映像配信しかない」と語った上で「従来の携帯電話でも動画等のコンテンツは存在するが、(視聴のためには)メニューから奥深くにたどっていかねばならないため、一般に存在を知ってもらうには宣伝の手間が大変」と現状の問題点を指摘。それに対し「携帯電話にテレビがついていれば、ユーザには自然とテレビ局の持つコンテンツが目に入る」と同氏は述べ、「テレビが付くとパケット収入が減ると言う人がいるが、逆にテレビが(携帯電話網の)利用を促進するのではないか」として、テレビ局と携帯電話事業者がいわゆる「Win-Win」の関係を築けるという認識を示した。

    最後に同氏は広告媒体としての1セグモバイルについて触れ、「従来のテレビの広告は深層心理に訴えかける用途に向いており、ブランディング戦略が主な用途だった」「それに対し1セグモバイルはむしろ駅前のティッシュ配りのような、購買直前に最後の一押しをするような用途に向いている」として「1セグモバイルはキャンペーン広告や単価の安い商品の広告に効果が高いのではないか」との仮説を披露。そのため当初の放送においても「番組そのものは固定受信と同じでも、主にスポット広告を中心に(固定受信とは)違った広告を流すことは考えられる」との見解を示していた。

    日テレ・ビデオリサーチが共同で行ったアンケート調査の結果。端末商品力は非常に高いとのこと

    広告媒体としての1セグモバイルについて

    1セグモバイル普及には「テレビ見ながら携帯」の習慣作りが必要

    小川善美氏

    既存の携帯電話向けコンテンツ事業者も、決して1セグモバイルを敵視しているわけではない。今回のシンポジウムの最後に登場したインデックスの小川善美社長は、同社が携帯電話向けのテレビリモコンアプリなどを積極的に開発しているということもあってか、1セグモバイルがコンテンツ事業者にとって新たなビジネスチャンスになるとの見解を示した。

    同氏は冒頭で「10代・20代ではテレビを見ながら携帯電話でメールしたりWebを見たりする例がかなり多い」というビデオリサーチの調査結果を示した上で「我々の感覚では(午後)8時54分など、番組と番組の間にアクセスが集中する傾向が強い」との裏話を披露。

    同社では携帯向けアプリとして、赤外線通信機能を利用し携帯電話をテレビのリモコンとして利用できるようにする「navichan」を提供しており、既にドコモの「N900i」など一部の携帯電話では同アプリが標準搭載されるなどの実績を作っているが、同氏は「現行の全機種に赤外線通信機能が載っているのはドコモだけだが、いずれauやボーダフォンも全機種に赤外線機能を載せてくるようになる」と語り、携帯電話をテレビリモコンとして活用できる環境が着実に整備されつつあることを強調した。

    さらに携帯電話とテレビを組み合わせることで、番組実況用の掲示板などといったクローズドコミュニティや、リモコンアプリ使用時のみ表示される隠しデータの使用、またサーバ型放送において番組再生に使われるメタデータについて、通常とは異なる特別なメタデータを携帯電話で受け取り再生するといったモデルが考えられる、と同氏は語った。

    これらはあくまで携帯電話と既存の固定受信のテレビをリンクさせて利用するモデルであり、直接1セグモバイルにつながるものではないが、同氏は「まずはとにかく『携帯電話とテレビが一体になっている』というイメージをユーザに持ってもらうことが重要」と述べ、テレビを見ながら携帯電話を使うという視聴習慣を作ることが携帯電話におけるテレビとデータ放送・通信コンテンツが連携したサービスの利用を促進し、1セグモバイルの普及につながるという見解を示した。

    また1セグモバイル用のコンテンツの制作についても「送出機能は放送局でないと持てないが、番組制作に関しては携帯電話との連携を重視した、1セグモバイル専門のプロダクションなどが出てくるのではないか」と語り、既存の携帯向けコンテンツを扱う事業者がテレビ番組の制作プロダクションと組んで「動画+データ」をセットで売り込むといったケースも出てくるとして、1セグモバイルが携帯コンテンツの事業者にとっても新たなビジネスチャンスになるという考えを示していた。

    テレビと携帯電話の利用の相関について(ビデオリサーチ調べ)

    同社が考えるこれからのテレビと携帯電話の関係

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