【レポート】

ウイルス対策最前線 - トレンドマイクロを支える技術集団「TrendLabs」

 

PCの普及とともに問題視され始めたウイルスは、インターネットの広まりに従ってさらに大きな問題となって、PCユーザーを苦しめている。ウイルス対策ソフトはPCユーザー必携のソフトとなり、ユーザーはメールの添付ファイルを気に掛け、定義ファイルを更新し、時にはPC全体をウイルスチェックするなどの負担を強いられている。日々新種のウイルスが登場している中で、ウイルス対策ソフトベンダーも常々対応に迫られており、各社とも世界レベルでウイルスを監視、ウイルス拡散時はいち早く定義ファイルを提供できるよう態勢を整えている。そんなウイルス対策ソフトベンダーの1つ、トレンドマイクロのウイルス解析センター「TrendLabs」を取材する機会を得たので、その内容をお届けする。

ウイルス対策の最前線「TrendLabs」

フィリピンの首都圏であるマニラ・シティ北部にあるケソン市。ニノイ・アキノ国際空港から北に十数キロほどの距離にある、マニラ・シティ最大の都市にTrendLabsはある。IBM Plazaの3フロアを貸し切るTrendLabsは、一見すると普通のオフィスと変わらない。だが、ここがトレンドマイクロのウイルス対策の最前線とも呼べるオフィスだ。

TrendLabsが担当するのは、世に出回るウイルスの解析と製品のサポートだ。TrendLabsは日本や欧米などに6つの拠点を構えるが、その総本山となり、ウイルス解析を一手に引き受けるのがここ、フィリピンのTrendLabsだ。ここには450人以上の人員をそろえられており、24時間365日態勢でウイルス解析やサポートに対応している。平均年齢は25歳。他のウイルス対策ソフトベンダーでは、各国の時差を利用して、それぞれの国に配置したウイルス解析センターが24時間態勢でウイルスを監視している例もあるが、TrendLabsでは2交代制をしいて、フィリピン1国で24時間態勢のウイルスの解析や製品サポートを実現している。

同社がフィリピンにTrendLabsを展開したのは、英語が堪能な国民であり、海外企業が多く進出していないため優秀な人材を雇いやすい、人件費が安い、などの理由があったという。ただ、「フィリピンにはいくつか問題点もある」とTrendLabsのAntivirus Group Senior Antivirus ConsultantのJamz Yaneza氏。IBM Plazaのある地域は特別経済区としてインフラは整っているほか、TrendLabsではVPN、通常のインターネット回線、ISDNと3つのアクセス方法を確保、MCI、PLDTという2つの大手通信会社と協力関係を築くなどしているものの、停電が多い、交通事情が悪い、治安に難がある、といった難点が上げられるそうだ。

TrendLabsの概要

Jamz Yaneza氏

ただ、それに対する対策も整備している。同社が現在までストックしている7万7,000種、50万体に及ぶウイルスの検体を集めた「Virus Bank」は、毎週米国・台湾の拠点と同期を行っている。台湾の拠点には2人の解析者が常駐、近いうちに開設する中国拠点にも常駐させる予定のほか、ウイルスを検出するスキャンエンジンの開発者と定義ファイルなどの品質検査を行うエンジニア、計23人がフィリピンでの障害発生時にすぐさま台湾に移転できるようにしているという。フィリピンから台湾まで、飛行機で1時間45分。空路が断絶しても、海路を使えば5時間で移動できる「近さ」(Yaneza氏)がメリットなのだそうだ。

また、欧米向け製品のサポートもフィリピンのTrendLabsが担当しているが、電話サポートはフィリピンでの障害発生時にすぐさま米国に切り替える態勢を整えている。

タイムリミット45分間を支える過酷な訓練

トレンドマイクロは、新種ウイルスが登場した場合、プレミアム契約を結んだ顧客に対して、2時間以内に対策を提供することを約束している。2003年の平均では、1時間以内に96%のウイルスに対応、1時間半以内にすべてのウイルスに対応したという。また、同社ではアラートが発令された場合、45分でそのウイルスに対応したソリューションの提供を社内目標に掲げており、早急な対応を目指している。

プレミアム契約の顧客への対応は時間制限がある。

2003年1年間で、1時間以内に対応できた割合(縦の棒グラフは問い合わせ数、横の折れ線グラフは対応率。

そうした同社の態勢を支えるのがTrendLabsのウイルス解析者たちだ。TrendLabsでは現在、ウイルス解析者を100人以上抱え、さらに100人がトレーニング中であり、随時増員を図っているそうだ。彼らは日々8~10種類のウイルスに直面しており、定期的なトレーニングも行うことで個々の能力の向上を図っている。

そもそも、TrendLabsへの入社自体が狭き門で、100人中10人程度しか入社できないという。フィリピンのいわば東京大学といえるフィリピン大学をはじめとする、コンピュータサイエンスを専門で学んだ学生たちが多く入社しているそうだ。

TrendLabs社内の様子。ちょうど昼勤と夜勤の交代時間の合間だったため、従業員がいなかった。

折しも取材当日は、社内で誕生日パーティが行われていた。月に1度、その月に生まれた社員全員を祝い、食事が出されるほか、誕生日の人にはケーキが贈られる。勤務が長時間になるため、従業員の結束が大事なのだという。

ウイルス解析者を目指す新入社員には、まずトレーニングが行われる。これはTrend University、通称Trend Uと呼ばれ、4カ月間のトレーニングが用意される。月曜から金曜の、主に9時から18時まで、C言語などの言語を含むウイルスに関する内容をみっちりたたき込まれる。期間中13~15回のテストが行われ、3回試験を通過できないと、クビになるか、配置転換を命じられるという。これらのトレーニングを統括するJasper Pimentel氏によれば、「8割残ればいい方」だそうだ。こうした厳しいトレーニングを経て、ようやく解析者となれるわけだ。

Jasper Pimentel氏

その後もトレーニングは定期的に行われる。解析者は、1年半ごとに2カ月間の追加トレーニングが必要とされており、さらに技能をマスターしていき、Trend Certified Antivirus Engineering(TCAE)の試験をパスすることが求められる。ここまでくると、第一線で活躍するトップレベルの解析者となれる。ちなみに追加トレーニング中の試験にパスできないと、TCAE資格保持者でも資格剥奪、減給となるそうだ。

日々のウイルス解析で「実戦」を経験、定期的に行われるトレーニングで技能向上を図るこの解析者たちが、日本国内における「ウイルスバスター」などの製品を支えている、といえるだろう。

大規模感染時などに発令されるレッドアラート、イエローアラートは実際に社内のランプが点灯する。

ウイルス解析者のチーム。後方から順に解析を進めていき、最終的に最前列の解析者が品質保証を行う。

製品サポートもカバーするTrendLabs

TrendLabsが行っているのはウイルス解析だけではない。製品サポートの総本山としての側面もある。日本や米国などでは、国内にサポートセンターを備えており、製品サポートは通常その国のサポートセンターが行う。しかし、各国内でカバーしきれない範囲のサポートは、フィリピンに転送され、そこでサポートが実施されるようになっている。

TrendLabsが対応したサポートの問い合わせ件数は、2001年から2003年にかけて、2,000%近くも増加したそうだ。そうした急増する問い合わせをさばくサポートは、Level 1~3の3段階に分けられているそうだ。

ウイルス解析者と同様、新入社員にはまずトレーニングが課せられる。こちらは2カ月間だが、自社製品に対する知識だけでなく、製品のメインがWindows OS向けであるためにMicrosoft製品への理解も必要で、MCP、MCSE、MCSAといったMicrosoftの認定資格取得も要求されるそうだ。

Levelが上がるにつれて、製品に対する理解が深まっていると言え、下のLevelで対応できないような問い合わせについては上のLevelの人間が引き継ぐ形でサポートを進めていくという。Level 3になると、製品のアーキテクチャーレベルまで把握しているそうで、このLevelで答えられないものは、実際の製品を開発する台湾のR&D部隊に転送される手順だ。

製品サポートは、Levelによってグループに分けられている。パーティションにはLevelが掲示されている。

TrendLabsでは、それ以外にもワールドワイドの拠点間トラフィックなどを監視するNetwork Operation Centerなども存在する。

活発に活動する総本山

ウイルスが常に出回っている現在にあって、TrendLabs内は活気に満ちている。常時増員を図っているTrendLabsでは、すでにIBM Plazaの3フロアでは足りず、さらに同ビル内でスペースの拡大を実施しているところだ。

継続的、かつ徹底したトレーニングに裏付けられた技術力や効率的な業務運用でさらなる拡大を図るTrendLabs。同社ではその規模を業界最大と述べ、万全の態勢に自信を示している。



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