【レポート】
21日、日本科学未来館で、「展示の前で研究者に会おう 2004」と題されたイベントが開催された。これは日本科学未来館が2001年から毎月1回開催しているもので、毎回、いろいろな分野の研究者が登場している。今回のテーマは、ソニーの情報技術研究所・モーションダイナミクス研究部の黒木義博統括部長による「QRIO ~夢のエンターテインメントロボット開発~」であった。
ソニーと言えば、"エンターテインメントロボット"というロボットの新しい分野を確立した先駆的存在であるが、黒木氏は講演の中で、まず、ロボット開発の歴史と経緯として、エンターテインメントロボットの元祖である西洋の自動人形と日本のからくり人形について紹介した。
西洋では1700年頃から多くの自動人形が作られていたという。特に有名なのが、紡績機械技師であるヴォーカンソン(フランス)が考えた「アヒル」という自動人形で、文献には、えさをついばみ、排泄し、鳴き、水浴びしたといった記述が残っているという。現在は、彼が残した設計図や文献に基づき制作されたというアヒルの自動人形が存在しており、首を上下させて水を飲み、飲んだ水を排泄するなどアヒルらしいさまざまな動きを行うことができる。
また、1773年にスイスの時計職人によって作られた3体の自動人形がヌーシャテルの美術・歴史博物館に展示されており、今でもきちんと動くという。3体とは「画家」、「書記」、「音楽家」で、時計のカムを応用し、絵や文字を描いたり、鍵盤をたたいて曲を演奏したりするというものだ。
黒木氏は、「例えば、書記の自動人形の場合、文字ごとに巧みにカムを切り替えて文字を書かせているわけで、時計の精密技術が使われています。また、演奏家の指使いや動きも非常にうまくできており、非常に参考になります」とコメントした。
一方、日本でも1700年代、からくり人形の制作が盛んに行われたという。中でも1796年に細川半蔵頼直がからくり人形の作り方について書いた「機巧図彙」は日本最古の機械工学書と言われているそうで、茶運人形などの作り方が記述されている。また、エジソン級の大発明家であったという田中久重が1850年に制作した「弓射り童子」は6組のカムとレバーで10本の糸を操ることで、4本の弓を的に当てる童子のからくり人形だ。しかも、4本中1本はわざと的から外れるように作られている。
西洋の自動人形も日本のからくり人形も、制作目的はパーティや宴会などで披露し、ゲストをもてなすことにある。つまり、エンターテインメントロボットの元祖というわけで、このようなものがすでに18世紀に作られており、今でも支障なく動くというのは驚きだ。
次に、黒木氏はソニーのロボット開発の歴史を紹介。同社が高速組立ロボットSRXを開発したのが1982年のことで、工場の製造ラインで製品の組立などを行っていたが、現在は使われていないという。その後、1994年にAIBOプロジェクトが、1997年に二足歩行ロボットSDR(=Sony Dream Robot)プロジェクトがスタートしている。SDRはご存知の通り、2003年、QRIOと改名している。
そんな中、黒木氏は、1990年10月に米国で、1986年公開の「SHORT CIRCUIT」という映画に出てくる「Number Five」という名の実存するロボットと感動的な出会いを行ったといい、今回の講演では、そのときのエピソードについて熱く語ってくれた。黒木氏が、Number Fiveが身を置くオフィスを訪れた際、オフィスの前でタクシーを降りると、Number Fiveが出迎えに来てくれていたのだという。その時の感動が、エンターテインメントロボット開発への情熱の源になっているという。
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