【レポート】

SELinuxにみるセキュアOSの現在

6 SELinuxの可能性

    鶴田展之  [2004/08/25]

    OSのセキュリティを向上しようという試みを行っているのは、なにもSELinuxだけではない。例えば、昔から使われてきた技術に"chroot()"システムコールがある。chrootはプロセスにとってのルートディレクトリを変更し、利用可能なディレクトリツリーを制限する。また、SELinuxと同じくLSMを使ったセキュリティ拡張モジュールに「LIDS(Linux Intrusion Detection System)」がある。これらの技術と比較した場合のSELinuxの利点は、より強力なセキュリティ確保が可能なことだ。chrootは単にルートディレクトリを変更するだけであり、root権限を奪われた場合には全く無力だ。LIDSはSELinuxと同様にMACの機能をもち、TEに相当する「ACL(Access Control List)」もあるが、RBACのようにユーザ別に権限を制御する機能がない。ただ、機能面で劣っている分、chrootやLIDSはSELinuxに比べて設定が容易であるというメリットもある。
     
    実際、これまでのSELinuxはLinuxの弱点を大幅に改善できる一方で、設定が難解で導入しにくいというのが欠点だった。ただ、現在はFC2のように積極的にSELinuxへの対応を進めるディストリビューションも出始めており、その欠点も改善されつつある。そしてなにより、SELinuxによって得られるメリットは、設定の手間をかける価値が充分にあるものだと言えるだろう。もちろんセキュリティ対策に万能の薬などなく、SELinuxもそれ単体で完全なセキュリティを実現できる夢のソフトウェアなどではない。あくまでも既存のセキュリティ対策-ファイアウォールや正しいアップデート等-と共に使われ、相互に補完し合いながら全体として安全性を向上するためのものだ。ただ、実際の現場では「セキュリティホールの発生頻度の高いソフトウェアは使わない」「できるだけ早くアップデートする」といった理想的な運用がなかなか実現できないことも多い。SELinuxを導入することで、たとえ侵入されても最悪の事態を防げるという安心感があれば、サーバ管理者の精神的負担も大いに軽減されるはずだ。

    SELinuxがより多くのユーザによって検証され、信頼性の向上やポリシ設定のノウハウの共有が進んでくれば、これまでセキュリティ上の理由で分割されていたサーバの統合も可能になるだろうし、サーバ監視のための人的コストも削減できる可能性がある。セキュリティの向上とコスト削減の両面で期待できる技術として、今後SELinuxのようなSecure OSの役割が大きくなっていくことは想像に難くないだろう。各ディストリビューションの対応、周辺ツールの整備も含め、SELinuxの将来には大いに期待したい。

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