【レポート】

SIGGRAPH 2004 - EMERGING TECHNOLOGIES展示セクション(2)

3 触れる立体ディスプレイや触感バーチャルリアリティ

    西川善司  [2004/08/14]

    表示内容に実際にさわれる立体ディスプレイ/東京大学

    "3D"グラフィックスとはいっても、実際には液晶ディスプレイなどの平面の中に映し出された2D映像でしかない。立体視ディスプレイも立体として知覚できるだけであり、さわることはできない。

    東京大学では、実際に裸眼で見られて、さわれて、伝送までできる立体ディスプレイの研究を行っている。

    今回展示された「PopUp!」システムは、立体情報をマトリックス配置したピンロッド群の上下で再現するもの。各ピンロッドにはスプリング(バネ)に接続された形状記憶合金が仕込まれており、このピンロッドに掛かけた電圧の程度によってピンロッドの高さが上下するような仕組みとなっている。

    概念的には、立体物の形状をピンロッドの上下パラメータに変換してやることで、実際に表示している…ということになる。ピンロッドで表現された立体物は実際にさわることができるわけで、形状を"実態のある物"として確認できるわけだ。

    このシステムの特徴は、リアルタイムにこのピンロッドを上下できると言うところにある。つまり、立体物が形状を変化させれば、それをリアルタイムに追従して表示できるわけで、実体のある立体アニメーションも表現可能なのだ。

    開発チームは、このピンロッドを逆にユーザーが引き上げたり押し下げたりできるようにして、そのデータをコンピュータに入力蓄積できるようにして3Dモデルの作成を現実世界で粘土をこねるようにして行えるインタフェースへの拡張の研究も行っている。

    また、2つのPopUp!システムで情報を相互にやりとりできるようにすれば、立体形状を遠隔地に伝送して共有したり、あるいは遠隔地のユーザーと共同で3Dモデル作成を行うこともできるようになる。

    今後はこのピンロッドの移動速度の高速化と解像度の向上が改良テーマになるそうだが、これは奇しくも液晶などのフラットパネルディスプレイの進化の歴史と一致する。将来的にどんなものになるか今から楽しみだ。

    ピンロッドがどうして上下できるかを解説した概念説明図。

    夢広がるこのシステムの現在の課題は、形状記憶合金の冷却にあるとのこと。この冷却効率が下がるとピンロッドの追従速度が落ちてしまうのだそうだ。写真はそのピンロッドを強制冷却システムに沈めて動作させているデモで、こうすると最高の応答速度が得られるという。

    ピンロッドの凹凸をユーザーがデザインして…

    コンピュータに入力できれば形状デザインインタフェースとして利用できる。

    ワイヤレスに触感が得られるバーチャルリアリティ/NTTサイバーソリューション総合研究所

    バーチャルリアリティの世界をよりリアルにしていくためには映像(視覚)と音(聴覚)だけでなく、嗅覚、味覚、皮膚の再現も必要だということで、こうした分野の研究が盛んに行われている。最近特に盛んなのがこの触覚学(Haptics)の分野だ。

    NTTサイバーソリューション総合研究所の開発した「Air Jets Interface」は、噴流で触感を再現しようとするシステムだ。ブースでは、テーブル上に投影された立体映像を立体視眼鏡で見て、その映像に対してスプーンのような器具で振れるとその手応えが感じられるというデモンストレーションが行われていた。

    被験者自身や持っているスプーンの向きや位置情報をトラッキングし、映像とのインタラクティビティをテーブル側に設置された噴流口からの空気量によって再現するという仕組み。噴流口は4cm感覚でテーブル状にマトリックス配置されており、スプーンに的確にジェットが当たるように設計されている。ジェット流自体が及ぼす力は0.7N(1Nは質量1kgの物体に対して1m/secの加速度を生じさせる力の大きさ)程度だが、スプーンでジェット流を受けることでテコの原理が作用し、強い力を実感できる。

    バーチャルリアリティへの応用の他、触感自体をデータ化して遠隔地へ伝送する通信なども応用視野に入れているという。

    動く床で無限の広さを表現する/筑波大学

    HMDを付けて体験できるバーチャルリアリティの世界で、実際に足を動かして歩き回れるとしたら? ただし、その場合にはその歩き回れる広さの部屋を用意しなくてはならないのだろうか。

    筑波大学では動く床で無限の広さを表現できるシステムの研究開発に取り組んでいる。今回展示された「CirculaFloor」システムでは、部屋内に設置されたレーザーレンジファインダーで被験者の動きや位置を検出。これにインタラクティブに対応し、動く床を被験者の次の足の位置に移動させる…という仕組み。動く床のトラッキングは、同じく部屋内に設置した超音波センサーを活用して行っている。そしてどの床をどう動かすかの経路計算はコンピュータを用いて行っている。

    実験では、4枚の動く床を動かして対応させることで、平均的な運動能力の人間の全方位への移動に対応できるとのこと。また、動く床に昇降機能や傾斜表現機能を持たせれば階段の表現や斜面の表現を行うこともできるとのこと。バーチャルリアリティでハイキングや登山が楽しめるようになる日も来るのだろうか。

    この他の応用としてはリハビリや運動能力向上のためのトレーニングなどを考えているという。

    床の一基が故障してしまったため三基でのデモとなった。床の数はスケーラブルに増減できるのもこのシステムの特徴だ。

    (トライゼット 西川善司)

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