【レポート】
SIGGRAPHには世界各国のベンチャー企業や大学の研究機関による最新の研究成果を実際に見て触れて体験できる展示セクション「EMERGING TECHNOLOGIES」がある。この展示セクションは特に日本企業や日本の大学の参加が盛んなことも特徴で、全体としてミニ万博的な雰囲気が漂っている。このEMERGING TECHNOLOGIESに出展されていたユニークな研究の一部をここで紹介したい。
現実世界は膨大なダイナミックレンジの光に満ちあふれており、昼間の太陽光に照らされたオブジェクトは1万カンデラ/平方メートル以上の明るさで輝く。これは市販されている一般的なディスプレイシステムの30倍以上の明るさに相当する。
このとてつもない明るさの世界を、カメラは絞りやシャッター速度などを変えることによって捉え、現在の市販されているディスプレイシステムに採用されるRGB各8ビットの24ビットカラー、いわゆる1677万色に収まる範囲に映像を落とし込んでやりとりをしている。Sunnybrook Technologiesのハイダイナミックレンジ(HDR)ディスプレイは、この1677万色に落とし込まれた映像を、現実世界の明るさのダイナミックレンジに近い形で表示しようというシステムだ。
通常の液晶ディスプレイでは、バックライト光源として冷陰極放電管(CCFL)と呼ばれる蛍光管を液晶パネルの後ろに配置しており、映像の状態とは無関係に常に輝き続けている。黒の表現においても液晶ディスプレイが輝いてしまう「黒浮き現象」に見舞われるのはそのためだ。
彼らのHDRディスプレイでは、白色LEDを液晶パネルの背後に横32個、縦24個でマトリックス配置して、これをバックライトとするのが第一の特徴だ。そして、この768個の白色LEDを常に光らせるのではなく、映像の輝度分布にリアルタイムに適応する形で、白色LEDの発光度合いをアクティヴ調整するのである。
映像の明るいところは白色LEDがフル発光し、真っ暗なところではこの白色LEDを消してしまう。こうすることにより、絶大なる輝度差が生まれ、ハイダイナミックレンジな映像表現ができることになる。LEDによる輝度解像度は映像解像度と比べれば大部粗いわけだが、常に同じ光量で光り続ける通常のバックライトと比較すれば雲泥の差だ。
白色LEDは8ビットレンジで駆動され、液晶パネルもRGB各8ビットで駆動されることから、理論上のダイナミックレンジは65536:1となる。実際の試作機も理論値に近い40000:1の実効コントラストが得られているという。
なお白色LEDは青色LEDにYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を組み合わせて作られるが、若干青に振れる光スペクトラムになる。彼らのHDRディスプレイでは最も白色バランスのよい発光レンジだけを使い、あとは液晶パネル側の光学補償フィルタで補正を行っている。
現在は白色LEDの発光を光源としているため色温度調整ができない。しかし、現在、RGBの三原色LEDをバックライトとして配置させたバージョンの制作も行っているとのことで、そちらでは細かな色温度調整ができることになるようだ。
なお、コストが唯一の難点だそうで、当初はハリウッドなどの映像制作、博物館、医療といったプロフェッショナル業務から売り込みを行っていきたいとのこと。
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