【レポート】

SIGGRAPH 2004 - コンピュータアニメーションフェスティバル開演

西川善司  [2004/08/11]

コンピュータアニメーションフェスティバルとは?

毎年のSIGGRAPHの看板イベントとなっているのがコンピュータアニメーションフェスティバルと題されるコンピュータグラフィックスによるアニメーション作品の上映会だ。プロ、アマ問わず、過去1年間に応募された作品の中からユニークな物だけが選定されて、高い評価を得た物は表彰される。SIGGRAPHに出品して受賞作品となることは、3Dグラフィックス業界に関係した人間にとっては大変名誉であるため、注目度も高い。

毎年、上映される作品は、アマチュア作家による短編映画的なもの、プロフェッショナルCGスタジオが手がけたCM作品、商業作品のメイキング映像などなど、バリエーション豊かなラインナップとなっており、その時点での3Dグラフィック技術の最先端や作風のトレンドを知ることにも繋がる。

コンピュータアニメーションフェスティバルの入選作品は、「Electronic Theater」と「Animation Theater」と命名された2つの特設劇場で上映される。入選作のうち、特に注目度の高い作品を集めた上映会が「Electronic Theater」で、ここ数年のSIGGRAPHでは、カンファレンス会場とは別の、SIGGRAPHが借り切った映画館で上映することが習わしとなっていた。しかし、今年のSIGGRAPHでは開催会場となっているロサンゼルス・コンベンションセンターのKホールをElectronic Theaterの上映劇場としている。

ここ数年のElectronic Theaterはカンファレンス会場から映画館への移動が面倒だった。今年は同じ会場内にシアターが設置されたので来場者に優しい。

最新GPUの仕様にも多大な影響を与えているリアルタイム3Dグラフィックス界のご意見番、メリーランド大学のMarc Olano(左)、ブリティッシュ・コロンビア大学のWolfgang Heidrich(右)のお二人もElectronic Theaterの入場のための列に並んでいた。

待ち時間は来場者全員参加ゲームで

毎年、上映会場には1時間前ほどから入場できるようになるのだが、入場したらしたで開演までやることがなくて暇であった。しかし今年は、着席している入場者全員がこの待ち時間の間に同時参加で楽しめるゲームが実施された。

会場席に直径1メートルほどの巨大なボールが何個も投げ込まれ、来場者はこれに手を伸ばし頭上で弾ませていく。本来ならば映像作品を投影させるための正面のスクリーンには、会場内で来場者の頭上に弾んでいる玉が俯瞰視点でコンピュータグラフィックスで緑色で描かれる。画面には、来場者が弾ませている玉の他、実態のない黄色い玉も描かれており、実は、これがこのゲームにおける破壊目的になっている。そう、現実世界で実際に来場者の頭上を弾んでいる緑玉を、画面を見ながら現実世界には存在しない黄色い玉の位置に持ってきてぶつけると得点となるルールになっているのだ。

全てのターゲットを破壊してクリアすると、難易度の上がったセカンドステージが登場したり…と、ゲームとしてなかなか本格的な作りになっていた。ちなみに、ゲームを実現するための原理自体はそれほど難しい物ではなく、会場を弾んでいる玉の位置情報検出は、天井に仕掛けられた光学センサーで行われていたようだ。このゲームのおかげで、来場者は実質的な待ち時間をほとんど感じせずに開演までを過ごすことができたのだ。

これが正面大スクリーンに表示される。最初何をどうしていいのかわからず、すぐにゲームオーバーになってしまう。

天井に吊され、うっすらと見えるのが光学センサー。この光学センサーが、会場内のどこに玉があるのかをリアルタイム把握してくれていた。

突如、会場内へ投げ込まれた直径約1mの巨大ボールに来場者は騒然となる。

今年のコンピュータアニメーションフェスティバル入選作品をチェック!

以下に今年の注目度の高かった作品の一部を示す。なお、完全な上映リスト、および映像のプレビューは、こちらより参照可能となっている。なお、著作権的配慮の関係で下には示されていないが、今年も例年にも増して商業映像作品の出展も多かったことを報告しておく。

最新劇場映画作品のメイキング映像として出展されたのは「Shrek2」「Spider-Man2」「Van Helsing」「The Day After Tomorrow」「Lord of the Rings:The Return of the King」「MATRIX:REVOLUTION」「Bad BoysII」「The Polar Express」など。Spider-Man2はスパイダーマン自身だけでなく、敵役のアルフレッド・モリーナのアクションシーンのほとんどがデジタルスタント(3DCGキャラクタとして再現された俳優の演技)であったことに驚かされる。日本では未公開のフルCG映画、The Polar Expressはトム・ハンクスの演技をデジタルスキャンしたフェイシャル(顔)データやモーションデータで3Dキャラクタを動かしていることで話題を呼んでいるが、彼の演技データが子供キャラクタにまで適用されていることが公開された。

日本の劇場作品からは「Innocence:Ghost in the Shell」「Kitaro:the Movie」、ゲーム作品からはカプコンの「鬼武者3」が出展された。

(c) AFTRS:「Birthday Boy」制作:Sejong Park他 時は朝鮮戦争のまっただ中。主人公は、早く一人前の兵士になることを夢見る少年。深い戦争の爪痕が残る街でたくましく生き抜いている。誕生日のその日、ある郵便物が届く。幼い少年はこれを誕生日のプレゼントと理解するが、実は戦争に赴いていった父親の遺品なのであった。淡い空気感に満ちたライティングが印象的。SIGGRAPH04 BEST ANIMATED SHORT受賞作品。

2004:「Man's First Friend」制作:Allen Mezquida他 人間の最初の友人といえば「犬」。なぜ犬が人間と共に生きるようになったかをユーモラスに描いた作品。セルシェーダを使用。

「Astronauts」制作:Alceu Baptistao他 宇宙探検隊に襲いくる巨大カマキリモンスター。その足音に独特のリズムを感じた飛行士の面々はあわてず騒がず意外な行動に出るのであった。実写映像とコンピュータグラフィックスを合成したコメディ作品。

(c) 2003 Oddworld Inhabitants, Inc. All Rights Reserved:「Oddworld Stranger CG Intro」制作:Lorne Lanning他 Xbox用3Dアクションゲームの新作「Oddworld Stranger」のオープニング映像。Xbox発売同時タイトルであった「Oddworld」の続編にあたる。ブラックユーモア満載の「Oddworld」の世界観からはうってかわっての硬派なイメージのアクション映像になっている。モデリング精度が高く、ライティングも複雑で、商業作品の風格を見せつけている。

supinfocom 2003:「Riba」制作:Yves DALBIEZ他 水彩画をイメージさせる独特な色遣いのシェーダーが印象的なファンタジー作品。Yves DALBIEZの作品は上記の彼のWebサイトから視聴が可能。

「Rock The World」制作:Sukwon Shin 厳しい表情で地下の秘密基地に降り立つジョージブッシュ大統領とパウエル国務長官。両者は鍵を取り出して、スーツケースに挿入し、アイコンタクトのあとゆっくりと解錠する。やがて光が地下基地に満ちあふれ…。フラッシュやGIFアニメの世界ではもはやお馴染みのこの二人組だが、最新3Dグラフィックス技術で諷刺されたのは今作が最初か?

(c) ATI Technologies, 2004:「Ruby:The DoubleCross」制作:Harry Dorrington他 昨年のSIGGRAPHではライバルメーカーのNVIDIAが制作したGeForce FX用デモ「DAWN」がElectronic Theaterで公開されたが、今年はATIのRADEON X800用デモ「RUBY」がANIMATION THEATERに入選した。完全な技術デモとなっていた「DAWN」とは異なり、「RUBY」はドラマ性を持ったデモになっているのが特徴。上記サイトからフル映像のMPEGファイルをダウンロード可能だ。

Copyright 2004, U.C. Berkeley:「Gratuitous Goop」制作:James F. O'Brien他 強い粘性を持った半液体物の流動性の物理シミュレーション映像。ただし、単なる技術デモではなく、笑える内容に仕立てているのがお見事。こちらよりダウンロード可能。

(C) 2004 USC Insittute for Creative Technologies:「The Parthenon」制作:Paul Debevec他 ハイ・ダイナミック・レンジ・レンダリングのパイオニア的存在であるPaul Debevec氏の最新研究成果。ギリシャのパルテノン神殿の彫刻のほとんどがその歴史的因果関係によりイギリスの大英博物館に持ち去られている。大英博物館の協力の下、このパルテノン神殿の在りしの姿を最新の3Dグラフィックス技術でよみがえらせる。

Image copyright Doug L. James, 2004.:「Output-Sensitive Collision Processing for Reduced-Coordinate Deformable Models」制作:Doug L. James他 変形しやすくしかも元に戻りやすい樹脂のような材質でできた物体の衝突シミュレーション映像を、おもしろおかしく綴った作品。こちらは上記サイトより視聴が可能。

(c) 2004 1380098 Ontario Inc./49th Parallel Films Inc., the National Film Board of Canada:「RYAN」制作:Chris Landreth他 実在し、まだ存命のカナダの天才的アニメーターRYAN LARKIN氏の半生を描いた問題作。カナダの映像界に多大な影響を及ぼしたRYAN LARKIN氏は今は福祉施設に住み、物乞いをする毎日を送っているという。彼の人生は一体どのように転落していったのか…を、心理的な状態を視覚化した、本作のクリエイターChris Landreth氏の独自表現「サイコロジカル・リアリズム」手法にて描いていく。本作のビデオクリップは上記の公式サイトから視聴が可能。SIGGRAPH04審査員特別賞を受賞。

(トライゼット 西川善司)

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