【レポート】

WIRELESS JAPAN 2004 - MIMOから4Gまで、無線技術の今

3 TD-CDMAは「あえてシングルキャリアアプローチを取る」

    佐藤晃洋  [2004/07/29]

    最後にご紹介するのは、慶応大学理工学部助教授であり、マルチメディア総合研究所の技術顧問も務めるRiaz Esmailzadeh氏の講演。同氏はTD-CDMAが他の方式に比べて有利な点、そしてTD-CDMAと4Gとの関係について語った。

    Riaz Esmailzadeh氏

    まず同氏は、2000年頃には4Gのターゲットとしてだいたい20Mbps程度の速度が想定されていたのに対し、今では最低でも100Mbps以上の速度が必要との認識が一般的になっていることなど、4Gに求められるニーズが時を追うごとにどんどん変わってきていることを挙げた上で、「FDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)では上りと下りの帯域幅が固定されてしまうのに対し、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)では上りと下りの比率は後から自由に変えることが可能であり、将来のニーズに柔軟に対応できる」と、TDDの利点を訴えた。

    続いて同氏は、4Gでは要求される速度の上昇から1台の端末が使用する帯域幅が広くなるのに伴い、これまではフェージングの影響を受けた場合にその帯域全体がフェージングの影響を受けていた(Flat Fading)のに対し、4Gでは同一チャネルの中でフェージングの影響を受ける周波数と受けない周波数が出てくる(Frequency Selective Fading)ため、同時に送ったはずの信号が周波数によりタイミングがずれて受信されたりする現象が起きてしまうことが問題になると語った。

    Flat FadingとFrequency Selective Fadingの違い

    このような問題はいわゆるマルチパス現象と同じような結果を招くことから、マルチパスにおける問題の解決法が応用できると同氏は語った上で、アプローチとしてマルチキャリア化を図ることでFlat Fading状態を作り出すアプローチと、シングルキャリアのまま受信機を高度化することで問題解決を図るアプローチの2つを紹介。

    マルチキャリア化アプローチの代表例として同氏はOFDM方式や3GにおけるMC-CDMA方式(同氏は、イーアクセスが推進するTD-SCDMA(MC)方式もこれに含むとした)などを挙げたが、OFDMでは「ピーク時のパワーが平均出力より大幅に大きくなることが原因で、かえってパワーが無駄になるといった問題が起きるため、実際には10%ぐらいしか効率を得られない」、MC-CDMAでは「キャリア間のガードバンドが必要になるため周波数帯域に無駄が出る」等の問題があると指摘した。

    一方シングルキャリア方式について同氏は、「以前はこのような広帯域ではパス間干渉が増えてパフォーマンスがどんどん低下するため、シングルキャリアシステムは実現不可能ではないかと言われていたが、最近はダイバーシティ受信の技術が進み、『Joint Detector』と呼ばれる干渉キャンセラを使うことでマルチパスによる干渉を取り除くことが可能になり、逆にシングルキャリアシステムの方が有利になった」と語り、TD-CDMAではまさにこの「Joint Detector」を利用していると述べた。

    マルチキャリア化アプローチの問題点

    シングルキャリアアプローチで使用される受信機の概要

    同氏はTD-CDMA方式が5MHzで6Mbps以上の下り伝送速度を既に実現していると述べた上で、IMT-2000 Release6/7といった将来の3G標準ではチップレートが4倍になり、Hybrid ARQの採用でこの速度がさらに倍と合わせて8倍の高速化が可能になると主張。そして4GではこれにMIMOやアダプティブアレーアンテナといった技術を組み合わせることでさらに高速化を図れるとの見解を示した。ただ同氏は「MIMOが個々のユーザのスループット向上に効くのに対し、アダプティブアレーアンテナはセクタスループットの向上に効果があり、どちらを選ぶかはキャリア次第」と述べ、キャリアによってサービス速度に差が出てくる可能性も示唆した。

    TD-CDMAの転送レートについて

    4Gではこのようにさらに高速化が図れるとする

    最後に同氏は「FDDではアドホックネットワークの構築は事実上困難だが、TDDを使うTD-CDMAならタイムスロットの空きさえあれば容易にアドホックネットワークを構築できる」と語った上で、米IPwirelessによるTD-CDMA製品の開発状況や、マルチメディア総研らが都内で行っているTD-CDMA実証実験の模様を簡単に紹介していた。

    マルチメディア総研が都内で実験中のTD-CDMA局のカバーエリア

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