【レポート】

WIRELESS JAPAN 2004 - MIMOから4Gまで、無線技術の今

2 FOMAは世界標準とIPネットワーク化へ、HSDPAからSuper 3Gへと進む

    佐藤晃洋  [2004/07/29]

    続いてご紹介するのはNTTドコモでIP無線ネットワーク開発部長を務める尾上誠蔵氏の講演。同氏はFOMAにおける基地局の開発状況や3.5Gとして期待されるHSDPAの開発状況、そして4Gに向けたシナリオといった内容について説明を行った。

    まず同氏は、W-CDMAによるサービスを行っている携帯電話事業者が「昨年9月時点では10社しかなかったのが、今年に入って大幅に増加し現在34社になった」と述べ、同社が中心になって標準化を進めたW-CDMA方式がようやくここに来て世界的な立ち上がりを見せつつあることを強調した上で「ドコモのネットワークは、確かに以前は欧米のW-CDMAネットワークとは互換性がなかったが、現在は最新版にUpdateされている(ので互換性が確保できている)」と語り、ドコモが世界標準と協調路線を取っていることを訴えた。

    さらに同氏は基地局の小型化や、光ファイバを利用した張り出し局の設置のほか、800MHz帯をFOMAで利用するための基地局の更新も進めて行くとの方針を示した。同氏によれば「2GHz帯は800MHz帯に比べ9dBほどアンテナ利得が不利になる」ため、回線設計上従来の800MHzの基地局を2GHzに対応させていくと、どうしても基地局と基地局の間で不感地帯ができてしまい、それを補完するための2GHz単独の基地局を設置する必要が出てきてしまうそうだが、800MHz帯をFOMAで利用できるようにすることによりそういった2GHz単独の基地局を設置する必要がなくなるという。

    また基地局のIPネットワーク化についても、同氏は「IP網に対応することによりBフレッツやADSLなどの安価な回線をバックボーンに使用できるようになる」「企業ではFOMA網と社内LANとの統合が可能になるため、FOMAによる内線通話網の構築などが容易になる」とそのメリットを訴えた上で、「そのようなメリットを生かしやすい、ビル構内用の基地局などから開発・導入を進めて行く」との方針を示した。

    FOMA用基地局の開発状況

    IP網に対応した基地局の紹介

    続いてHSDPAについて、同氏は「従来の基地局のカードの交換と、ソフトウェアの書き換えだけでHSDPA化が実現できる」と比較的対応が容易であると述べた上で、「基地局の価格は現在より若干上がることになるが、一方でシステム全体のスループットが4倍ぐらいになるので、ビット当たりのコストは約1/3ぐらいに下がる」と、HSDPAによりネットワークコストが大幅に下げられることを強調。ただ「これをどういう形でサービスするかはまだ検討中とさせて欲しい」とも述べ、加入者の料金がそのまま下がるわけではないとの認識も示した。

    HSDPAにおける基地局と端末の位置と速度の関係。アンテナの指向性の関係で基地局の近くでも速度が遅くなるケースがあることがわかる

    HSDPAの速度としては下り最大14Mbpsという数値が語られているが、同氏によればこれは「屋内の閉じた空間で実現できる値であり、屋外では受信ダイバーシティを組み合わせても最大10Mbps、平均で2~4Mbpsぐらいに落ち着く」という。またデータ速度は基本的に基地局のセルの中心で最も速く、基地局から遠くなるほど遅くなるが、実際にはアンテナの指向性の関係から、基地局のそばでも速度が遅くなる場合もあるとのこと。

    そして今回は実際に横浜市内でHSDPAの実験を行った際のデータも公開された。実際に屋外で車に受信機を積んで走行時のスループットの変化を調べたところ、だいたい速度は2~7Mbpsとなり、基地局との距離よりは伝搬環境に依存するという結果がでたとのことだ。

    従来の基地局装置にHSDPA用のカードを挿したところ

    屋外での移動時のスループット測定結果

    最後に同氏は4Gについて、先日の「Beyond 3Gに関する国際会議」でも披露された同社の4Gへの移行シナリオを改めて紹介。その中で同氏は、4Gの前段階となる「Super 3G」について「低遅延で30Mbpsは出るようなプロトコルを目指す」と述べたほか、「3GPPでも(Super 3Gに関する)議論は進んでおり、今後どこに焦点を絞って行くか、世界のオペレータと話をしていく」と意気込みを語った。一方4Gについては「ドコモは2010年を(4Gの)ターゲットとしている」と語ったほか、横須賀・YRPで実施中の実験において「既にピーク値で300Mbpsを超える速度が出ている」ことも明らかにした。ただ今のところ4Gの標準化はまだこれからというところで「学会レベルの議論の段階だ」とのこと。

    4Gへの移行シナリオ。このように3GとSuper 3G、4Gが混在するネットワーク構成を取る

    3GとSuper 3G、4Gを比較した表

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