【レポート】

Pervasive 2004から見えてくるユビキタスの未来像

9 遅れて写る鏡と小さく作る日本人

    美崎薫  [2004/07/01]

    鏡よ鏡…

    フランスのINRIA Futursと情報リサーチラボラトリのNicolas Roussel氏らは、鏡にコンピュータディスプレイを組み込み、鏡のなかでビデオを見ることができる「MirrorSpace」を発表した。プロトタイプはすでに2年前に完成し、UbiComp2002で発表されていたものだが、今回は、ビデオ再生をさらに高度化し、アート的な色づけを加えていた。

    フランスの情報リサーチラボラトリのNicolas Roussel氏

    MirrorSpaceの鏡には、カメラも組み込まれていて、正面に立った人の顔が映る、というところは実物の鏡と同じしかけだ。

    ただし、写るときに、その前に立った人の顔が二重写しになったり、実時間ではなく、すこし遅れて写ったり、というようなアート作品的なソフトウェアが組み込まれている。

    動画
    時間によって映像にエフェクトがかかる「MirrorSpace」

    「少し遅れて映る鏡」というと、いまはもう廃刊になってしまったサンリオSF文庫にボブ・ショウの『去りにし日々、いまひとたびの幻』(1972)という作品があって、そこにスローガラスというのが出てきたことを思い出す。コンピュータの技術はますますSF世界を現実に実現しているのだと思う。

    ハードウェア構成

    映像がオーバーレイする

    遅延したり、エフェクトをかけて表現された映像というのでは、東京工業大学の福地健太郎氏のEffecTVや、東京大学の岩井俊雄氏が丸の内でやっていた牛の作品で見かけることができた。鏡ということでは、立命館大学理工学部情報学科の西尾信彦助教授らが同様の研究をテーマとしていた時期があった。

    シンデレラのお后の鏡は、じつはコンピュータ内蔵だったのではなかったか、というのが最近感じていることなのだ。一刻も早い販売を希望する。

    小さく作る日本人

    各国の発表も興味深かったが、日本人もなかなか健闘していた。

    産業技術総合研究所の西村拓一氏は、太陽電池で動作するウェアラブル端末「CoBit」を、大阪大学サイバーメディアセンターの寺田努氏はNECと共同開発したウェアラブル端末「Ubiquitous Chip」を展示発表した。

    右がCoBitをもつ産業技術総合研究所の西村拓一氏。左がUbiquitous Chipを手にする大阪大学サイバーメディアセンターの寺田努氏

    日本人はものを作るのはたいへん得意で、このような商品に近い端末には大いに注目が集まった。他国に比べると、このような小さなものを試作する技術は日本が優れているのかもしれない。

    Ubiquitous Chip同士をつなげて複雑な動作をコントロールできる

    Ubiquitous Chipにはいろいろなものがつながる

    CoBit。太陽電池で動作する

    展示会などで活躍するCoBit。動作実績も多数ある

    たしかに展示を見ると、バラックのような試作機というのは少なくない。スイスのETHウェアラブルコンピューティングラボの「Towards Wearable Autonomous Microsystems」でも、小さな端末の発表があったが、設計だけで試作はこれからということだった。ドイツSAPの研究所もeSeal(eシール)というシール上のユビキタス端末のコンセプトを提示していたが、実物はまだなかった。

    ユビキタスコンピューティング環境で、小さな端末を試すためには、実際に端末がそれなりの小ささである必要がある。ゴールとなる環境とかけ離れたサイズでテストしても、ぜんぜん役に立たない可能性すらあるためだ。

    小さくものを作り上げることは、日本人の得意とする強みのところなのだ、とあらためて感じた。

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