【レポート】

Pervasive 2004から見えてくるユビキタスの未来像

1 ユビキタスコンピューティングの時代に向けて

    美崎薫  [2004/07/01]

    2004年4月18~23日の5日間にわたって、オーストリアのリンツと、音楽の都ウィーンで、ユビキタスコンピューティングの時代の研究成果を発表する「Pervasive 2004」シンポジウムが行われた。

    聞き慣れない言葉かと思うが、この「パーベイシブ」はユビキタスコンピューティングと同じように使われる言葉である。ユビキタスコンピューティングには、似たように使われる言葉が複数ある。「浸透した」という意味のパーベイシブ・コンピューティング(Pervasive Computing)、ユビキタス・ネットワーク、バーチャライズド・リアリティ(Virtualized Reality=Augmented Virtuality)、拡張現実感(Augmented Reality)、複合現実感(Mixed Reality=Augmented Reality+Augmented Virtuality)、マルチモーダル・インタフェース、実世界インタフェース、ウェアラブル・コンピューティング、日用品コンピューティングなどである。

    オーストリアの王宮。王宮の図書館でPervasive 2004は開催された

    これらはいずれも、工場やオフィス、コンピュータルームを離れて、実世界で実際に動作することをめざしたコンピュータ環境のことをいう。

    似たような言葉が乱立しているのは、ユビキタスコンピューティングの世界がきちんと確立していないことを示しているともいえるし、逆に、ユビキタスコンピューティングの可能性を同時多発的に多くの人が追求し始めているともいえる。やがてユビキタスコンピューティングがひとつのジャンルとして確実に認知されれば、言葉はひとつに収斂される可能性もある。

    ただし、現在「ユビキタスコンピューティング」といっているのが、ほんとうにひとつの言葉で表せるかどうかは、また別の問題である。というのは、マルチメディア、ITなどの流行語が示してきたように、現在ユビキタスコンピューティングといっている言葉は、単にコンピュータ業界全体の次世代開発&販売のキーワードとして使われているだけとも考えられるからである。

    販売のキーワードであれば、その言葉自体で意味はなく、なんでも必要な意味を盛り込めた方がよい、と考えることもできる。こうなると、厳密に意味を特定していくことの無意味さを感じたりもする。

    王宮図書館。天井画や壁画など、豪華な雰囲気

    会場の雰囲気

    同じ内容の言葉が複数乱立している背景には、その言葉を使って主導権をとりたい、という団体や個人の意図も見える。たとえば、今回の「パーベイシブ」は、広がった、普及した、浸透した、という意味であるが、パーベイシブ・コンピューティングというのは、IBMが来るべきコンピューティング時代に向けて、PCを超えたコンピュータデバイスをネット端末と位置づける仕組みにつけた名称である。

    IBMは、今後のコンピュータは、マイクロソフトのWindowsのように、キーボードとマウスを必要とするデバイスではなく、もっとそれぞれの状況に対応した使い方をする機械に変わっていくだろう、という予測を立てて研究開発を進めている。

    パーベイシブ・コンピューティングの実例としては、ノルウェーOperaのWebブラウザ「Opera」の音声対応版、シャープのビジネスザウルス上でNotesの業務アプリケーションを呼び出せる「Pervasive Solution Gateway for Notes」、Linux時計の「スマート・ウォッチ」などが挙げられるだろう。

    Pervasive 2004のプログラム委員長、オーストリアリンツ大学のAlois Ferscha教授。Pervasive 2004のロゴマークは、開催地オーストリアの画家Kolo Moserのイメージを使ったもの

    実際、パーベイシブ・シンポジウムは、最初はIBMのプライベートショーとしてスタートした。2002年からはオープンな会議になって、IBM色はほとんどなくなっている。オープンな会議になってから今回で2回目の開催となり、今後は毎年開催になるようだ。

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