【レポート】

いかに「中国活用」を実現するか - 上海e-テクノロジー

1 中国で「物流業」が成立した背景

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中国にとって最大の貿易パートナーは日本である。政治や社会面では歴史認識問題、在日中国人による犯罪増加問題など、とかく軋みが目立つ2国間関係だが、貿易経済交流の現場をみると、日中貿易の過半を日本企業の本支社間取引--いわゆる日日貿易--が占めていることが示すように、日本企業を始めとする外国企業のグローバル・サプライチェーンのなかに中国ががっちりと組み込まれている。

こうした状況を裏付けるかのように、拡大成長を続ける中国市場に分け入り、中国を活用し、中国の成長とともに夢の実現を果たそうとする日本人、日本企業は年々増えているが、中国国内における企業間競争の激化、異文化の壁などに阻まれ、夢半ばで撤退するケースも少なくない。中国ビジネスにはどのようなチャンスとリスクが存在しているのか。そして、より自覚的に、効果的に中国を「活用」するためにはどうすればよいのだろうか--。

ひところさかんに喧伝された感情的色彩の強い「中国脅威論」などを超え、むしろより現実的に、成長を続ける中国(企業や人)を、どのようにすれば最大限活用し、中国の成長に自社の成長を合わせていくことができるのか。そうした「中国活用」をテーマに、日本通運の全額出資で2001年4月、上海浦東新区内張江高科技園区(張江ハイテクパーク)に設立され、物流ソフトウェアおよび物流システム開発、データ処理(バックオフィス業務)などをコア業務とする上海億科軟件技術有限公司をとりあげる。

中国で「物流業」が成立した背景

「世界の工場」と脚光を浴びる中国だが、「工場」を支え「市場」を根底から支えるものは、言うまでもなく「物流」である。ところが、この「物流」が中国で近代的な「業」として成立した歴史は極めて浅い。とくに、長らく続いた計画経済時代には、国防戦略上の要請から重要工業地域を内陸部に置き、生産偏重流通軽視の自給自足型地域完結型経済圏を各地に形成したから、中国では「物流」がハードインフラとソフトシステムの両面で非常に立ち遅れたものとなってしまっていた。

生産者は生産計画に基づいてこれを「生産」するだけ、購買者は自分で輸送手段を仕立ててこれを取りに来る--単純化すれば、少なくとも90年代前半までは、沿海大都市であろうとも、産業物流、消費物流を問わず実態はこうした状況であった。要するに、売ってやるから取りにこい式の感覚が普通であったわけで、そこに生業としての「物流業」が成立する余地などほとんど無かったのだ。

こうした状況に大きな変化が訪れる契機は、何といっても中国自身の市場経済化だった。全国ブランドの家電製品や携帯電話、パソコンなどで激しい企業間競争が繰り広げられるなか「全国」市場への浸透を始め、外資企業の部品調達ルートが幾重にも複線化する。さらには開放政策が進むなかで外資系物流企業の立地が進むと、真の意味での「物流業」がもつ輸送技術が導入された。

すなわち、90年代後半から顕著となった市場経済化のなかで、これまでは個別各個バラバラに運営されていた鉄道、水運、道路などの輸送手段が、次第に「複合一貫輸送」の考え方により統合され、顧客本位の「物流サービス」が、ついに生業として登場してくることになったわけである。

もちろん、広大で、地域間の経済発展格差、経済構造差異がともに大きな中国であるから、全国で一様に新たな物流サービスが展開されているわけではない。しかし、少なくとも沿海都市部では、興味深いベンチャー系企業が続々と登場してきている。北京の街角ではもう見慣れたブランドとなって久しい「宅急送」は、日本留学組の中国人企業家が起こしたベンチャー企業だし、90年代初期に、中国で初めて鉄道とトラック輸送という2つの輸送モードを組み合わせ、ドアツードアの物流サービスを提供した「宝供物流」は、その後P&Gなど大手多国籍企業を顧客に取り込むことに成功し、99年には中国全土で初めての物流企業集団として登録された。

中国のWTO加盟は、さまざまな業界領域における規制緩和と中国市場の一層の開放を世界に向けて約束するところとなった。物流でいえば、中国国内輸送市場の漸進的開放、具体的には各モードの輸送企業における外資の出資比率を順次高めていく。また、フォワーディング業(貨運代理業)における外資の進出についても、営業許可期間や出資金額などに関する厳しい規定が問題視はされているものの、やはり漸進的な開放スケジュールが明確に準備されたのであった。

中国の市場経済化はこのように「物流サービス」というものを史上初めて登場せしめ、より効率的かつ経済的なサービスを望む企業と、より快適に商品やサービスを享受しようと願う消費者の増大に支えられながら、急速に「物流業」を育んできている。さらに、90年代までは、主として中国を「生産拠点」として捉えてきた外資が、次第に中国市場参入をより重視する傾向を鮮明にすると、今度は、必然的に中国の国内輸送をどう効率化しうるかが大きな課題となってきた。

もっとも象徴的なことは、最近わが国の大手商社や物流企業が中国内陸部の物流網整備を加速する動きを強めていることである。たとえば伊藤忠商事は今春に中国鉄道省傘下の物流企業と合弁会社を設立したが、これは自動車向けの一貫輸送網構築を目的としている。日本通運や佐川急便なども相次いで内陸拠点を拡充する計画を持っている。

これらはいずれも、中国が国家戦略として掲げる「中西部開発」、そして中国全土における自動車市場の急速な立ち上がりといった重要情勢に対応すべく、日本企業がメーカー、物流企業をあげて動いていることの証左である。伊藤忠商事の当該合弁プロジェクトなどは、日系自動車メーカーを中心とした内陸物流需要への対応を図りつつ、鉄道部との関係強化により、将来的に中国全土での広域物流ネットワーク整備を狙いたい伊藤忠グループと、先進的な物流関連技術、ノウハウを是非とも吸収したい中国側の思惑が合致した結果であろう。

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インデックス

目次
(1) 中国で「物流業」が成立した背景
(2) 素早い動きで設立された上海e-テクノロジー
(3) 中国での成功のカギ


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