【レポート】

CATVのFTTH化は2011年以降? CATVは地域密着メディアとなりえるか

    佐藤晃洋  [2004/06/25]

    CATV業界の年に一度の一大イベント「ケーブルテレビ2004」が、今年も6月23日~25日の3日間東京ビッグサイトにおいて開催された。初日の総合シンポジウムでは中央大学教授の羽鳥光俊氏が、昨年行われた日本ケーブルテレビ連盟の「ケーブルテレビに関する調査研究会」の結果に関する報告を行った他、CATV業界のキーパーソンが一同に会してのパネルディスカッションも行われた。

    CATVは必ずしも地域情報化のインフラたり得ていない

    羽鳥氏の講演では、CATV局の施設の高度化に関する問題やデジタル化への対応の問題などが取り上げられ、それぞれ現在の状況と今後求められる動きについて説明が行われた。

    羽鳥光俊氏

    中でも注目が、地域情報化に向けたCATV局と自治体との連携についての問題。CATVに関しては以前から「地域密着型という企業特性を生かした地域情報化への貢献」ということがよく言われているわけだが、同氏はこの点について「電子政府・電子自治体はInternetベースで構築が進んでおり、放送サービスを中心とするCATVに必ずしも特別な優位性があるとはいえない」ことに加え、昨今の市町村合併により「CATV局の業務区域と自治体の行政区域にギャップが生じ、既設インフラとしての優位性が弱まっている」ため、決してCATVが地域情報化の担い手として十分な機能を発揮していないと指摘。

    実際同研究会が行ったアンケート調査の結果でも、いわゆるコミュニティチャンネルにおける自治体の広報番組や議会中継は多くのCATV局が行っているものの、それ以上の公共サービスを提供している例は少なく明確な傾向は認められないという結果が出ているとのことで、同氏は「もっと自治体との連携について推進が必要だ」と参加者に奮起を促した。

    CATVのFTTH化、都市部は2011年以降、むしろ過疎部の方が早い?

    続いて行われたパネルディスカッションでは、CATV局が抱える数多くの経営的・技術的課題について活発な議論が行われた。

    最初に話題に上がったのは、CATV施設の高度化に関する問題。最近は多くの都市型CATVがHFCを利用した770MHz対応システムへの移行を進める一方で、通信事業者の提供するADSL・FTTHなどとの競合からフルFTTH化への移行を検討しなくてはいけなくなっている。この点について愛知・キャッチネットワークの川瀬隆介氏は「当社のこれまでの全設備投資額が約150億円なのに対し、PON(Passive Optical Network)によるFTTH化を行った場合約100億円の投資が必要との試算が出ており、とても今の状態ではFTTHへの投資は無理」と述べ、通信事業者と比較して相対的に経営体力に乏しいCATV局にとって、FTTH化は相当厳しい道であることを示した。

    パネルディスカッションの議長を務めた東京理科大学教授の伊藤晋氏/p>

    川瀬隆介氏

    これに対し鳥取・中海テレビ放送の秦野一憲氏は「今のところFTTHでないとできないコンテンツはなく、HFCで当面は十分だが、設備に磨きをかける必要はある」と語った上で「伝送路設備は普通10年償却というのが一般的であることを考えると、今の設備の償却が完了して次の投資の時には(FTTH化が)視野に入ってくる」と述べ、CATVのFTTH化のターゲットとしては地上アナログ放送が停波する予定の2011年前後が一つの目標となるとの認識を示した。

    また総務省・地域放送課長の小暮純也氏は「FTTHは都市部と過疎部と大きく2つに形態が分かれる」と述べた上で「過疎部のFTTH化は我々も補助金の対象にしている上、同軸で必要なアンプの数などを考えると、既に過疎部ではFTTHの方が有利(設備投資額・維持費が少なくて済む)という場合が出てきている」と述べ、通信事業者との競合が問題になる都市部に比べ、むしろ過疎部の方がCATVのFTTH化が早く進む可能性があるという認識を示した。

    秦野一憲氏。日本ケーブルラボの運営委員も務める

    小暮純也氏

    CATVが地域密着メディアとなりうるための条件

    パネルディスカッションでもう一つ大きな話題となったのが地域密着型サービスの話題だ。中でもまず注目されたのが「地上デジタル放送 vs. CATVのコミュニティチャンネル」という構図。川瀬氏はこの点につき「地上デジタルのデータ放送では地域密着型の情報提供ということが大きなテーマになっており、これが本格的に始まるとCATVにとって大きなライバルになってくる」と危機感を顕わにした。

    これに対し地デジを代表する立場として、フジテレビの関祥行氏は「地デジ各局がデータ放送でカバーできるのはせいぜい県域レベルのものが限界だし、特にフジテレビの場合は関東一円をカバーしなければならないため、自分のエリアの情報にたどり着くまで1~2分かかってしまうという欠点がある」と語り、「(市町村レベルなどの)もっと狭いエリアを対象とした本当のローカル情報はCATVの方がマッチングする」として、地デジとCATV局は敵対意識を持つものではないとの見解を示した。

    関祥行氏

    また羽鳥氏の講演でも話題になった自治体との連携に関しては、小暮・地域放送課長が現職の前は電子自治体担当の参事官だったという立場から「電子自治体の構築に当たっては、地元企業に積極的に業務をアウトソースすることも一つの目標となっている」と述べた上で「自治体がCATV局への業務のアウトソースに踏み切るかは、行政区域に対するカバー率と地域情報発信能力があるかどうかがメルクマール(目印)となる」と語った。一方で同氏は「ただ自治体の場合は担当者が(人事異動で)よく変わるという問題があるのも事実で、そのため事業者の方から積極的なアプローチをしていただきたい」と、CATV局の積極的な動きに期待する姿勢を示した。

    そして自治体との連携に関しては、CATV局同士の連携による広域ネットの構築も効果的なようだ。この点については富山・八尾町長の吉村栄二氏が、富山県内のCATV局が相互接続して構築した「いきいきネット富山」の例を紹介して、実際に自治体への光ケーブルの貸し出し・国土交通省の光ネットワークとの相互乗り入れなどを行っている様子を紹介したほか、小暮氏もデジタル化に伴う投資負担の軽減などの観点からも「最低限県域レベルでの連携は必要ではないか」と述べた。また川瀬氏は最後に、日本CATV連盟のビジョンとして「2006年12月までに全国のCATV局のネットワークをつなげる」ことを目標に掲げていることも明らかにした。

    吉村栄二氏。八尾町では町営CATVを運営、加入率97%を誇る

    NTTの玉木規夫氏。今回はFTTHの技術面の解説を行った

    同セッションでは他にもサーバ型放送への対応の話や、コミュニティチャンネルの番組制作能力向上に関する話、IP電話サービスの話題など多岐に渡る話題が語られたが、それらはまたの機会にご紹介することにしたい。

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