【レポート】
ついに米Scaled Compositesが、宇宙船「SpaceShipOne」によって民間開発による初の有人弾道宇宙飛行に成功した。
高度100キロの挑戦は、21日に米カリフォルニア州のモハベ砂漠で行われた。平日にもかかわらず、午前3時の開場と同時に続々と観客が集まり始め、最終的には11,000人以上が見守る中で、歴史的な試みが開始された。
テスト飛行の様子をレポートする前に、Scaled Compositesの宇宙船について簡単に説明しておこう。
同社は1996年にSpaceShipOneの開発に乗り出した。一般の人の宇宙体験旅行を実現する宇宙船開発が大きな目的である。今は、宇宙旅行を最初に実現した民間企業に1,000万ドルの賞金を提供する「ANSARI X PRIZE」の賞金獲得に取り組んでいる。
宇宙船というと、地上から打ち上げられるというのが一般的なイメージである。ところが、SpaceShipOneは「White Knight」という運搬用飛行機に積まれた状態で離陸し、高度約15,000メートルの空中から宇宙に向かって発射される。これは地上からの発射では、宇宙船が受ける衝撃が大きく、故障などのリスクが高まるためだ。また、空中発射ならば、余分な保護部品を省けるため、地上発射の宇宙船に比べて半分ぐらいの重量が可能になる。さまざまな制約を受ける民間の宇宙船開発ではパワーよりも効率性が重視されるため、この重量の差は機体を高度100キロまで持って行くためには重要なポイントとなる。
運搬用飛行機White Knightは、ロケット推進が装備されていない点を除いて、宇宙船としても通用するような設計となっている。「プレッシャーベセル」と呼ばれるコクピットは、急な気圧の変化から機体とパイロットを守るために潜水艦のように密閉されており、換気ではなく、専用のシステムによって、酸素の追加/二酸化炭素の除去/湿度の調整が行われている。
推進力にはGeneral ElectricのJ85-GE-5ターボジェットエンジンを2基搭載する。グライダーのような華奢なデザインだが、最大約3,600キロの宇宙船の運搬・打ち上げに対応できるそうだ。
SpaceShipOneは、高度100キロ超の弾道飛行を実現するために設計された。シンプルなデザインだが、ロケットに不可欠な強力な推進性と、グライダーのように滑空/着陸する飛行性能を併せ持っている。その秘訣は翼にある。打ち上げの時は「High-Dragシェープ」と呼ばれる吹き矢のような形で宇宙を目指す。大気圏再突入の際には翼の後ろ半分が立ち上がり、破損しやすい翼への空気摩擦と熱の影響を最小限にとどめた状態で落下する。着陸地点に向かう時は、逆に翼に空気抵抗を与えてグライダーのように滑空する。
SpaceShipOneのコクピットの構造はWhite Knightと同様である。二重構造で厳重に密封されており、パイロットがコクピットの外に出る可能性がないため、パイロットは宇宙服を着用せず、フライトジャケットで操縦する。
SpaceShipOne用に開発されたロケットモーターは、固体ロケットモーターと液体ロケットモーターの特徴を兼ね備えた"ハイブリッド・モーター"と説明されている。酸化窒素とポリブタジエンを使用するのが特徴だ。
ロケットモーターには、空気がない状態での燃焼を可能にするために酸化剤と推進剤が必要になる。固体ロケットモーターでは酸化剤を燃料に混入した状態で使うが、引火性が非常に高いため、事故の可能性が高まる。液体ロケットモーターでは、酸化剤に液体酸素、燃料に水素またはケロシンという様に、異なった液体が用いられ、燃焼室で混合される。そのため安全に取り扱えるが、システムが複雑になる上に、推進力では固体ロケットモーターに劣る。
SpaceShipOneのハイブリッド・モーターは、酸化剤に酸化窒素(N2O)、推進剤に水素終端化したポリブタジエン(HTPB/ラバー)を採用している。この二つを別々に収納するが、N2Oは常温で自己加圧によって供給できるため、燃焼室に酸化剤を送るためにターボポンプなどを必要としない。液体ロケットモーターの安全性を備えながら、比較的推進力を生み出しやすいこの固体ロケットモーター寄りの構造となっている。
ハイブリッド・モーターは新しいアイディアではないが、Scaled Compositesは独自のシンプルな設計によって、リークパスを減らし、ロケットモーターを簡単に積み下ろしできるようにした。取り扱いやすく安全で、N2Oのように環境に優しい酸化剤が採用されているロケットエンジンは、商業利用を前提とした民間企業による宇宙船開発の特徴がよく現れている部分と言える。
効率性の良さも民間企業ならではの知恵と言える。シンプルさを追求した設計はメンテナンスがしやすく、操作をすぐに覚えられる。加えて、White KnightとSpaceShipOneはコクピットはほぼ同じ構造となっているため、一つのシミュレータを使ったトレーニングで両機の訓練が可能。非常に短い時間でパイロットを育成できる。
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