【レポート】

Linuxがミッションクリティカルに本格進出するために必要なこととは?

1 OSDLの定める要求定義"CGL" - クラスタリングによる低コストな高可用性実現

    鶴田展之  [2004/06/14]

    11日、OSDLジャパン主催の「Linuxカーネルシンポジウム in Yokohama Vol.8」が開催された。このシンポジウムは、Linuxカーネルの現状と課題に関する議論を行う場としてOSDLジャパンが行っているもので、今回は主にCGL (Carrier Grade Linux)・DCL (Data Center Linux)ワーキンググループに関する話題がテーマとなる。会場となった横浜市保土ヶ谷のOSDLジャパンラボミーティングルームには、多数の関係者が集まった。

    OSDL CGL 3.0 spec overview

    CGLワーキンググループは、通信分野におけるLinuxの適用、商用ベースのLinuxプラットフォームの作成を支援する目的で創設され、既に「Carrier Grade Linux Requirements Definition」と題した要求定義のバージョン2.0を2003年9月に公開している。このドキュメントは、通信分野、特に交換機のようなミッションクリティカルな業務にLinuxを適用するために必要な機能・性能を優先順位付けして記述したものだ。現在、SuSE Linux・Turbolinux・Miracle Linuxなど、多数のディストリビューションがこのCGL 2.0への対応を確約しており、SuSE Linux Enterprise Server 9をはじめ、実際に準拠した製品も間もなくリリースされてくる予定だ。

    一方、CGLワーキンググループでは、次のバージョンである「CGL 3.0」の策定が進められている。OSDLジャパン技術スタッフの佐久間純一氏が、現在CGL 3.0の仕様として挙げられているアイテムについて解説を行った。CGL 2.0ではひとつにまとめられていた要求仕様のドキュメントは、CGL 3.0では、"APIs/Specifications/Standards"、 "Availability"、 "Clustering"、 "Hardware"、 "Performance"、 "Security"、 "Serviceability"という分野毎にまとめられることになる。OSDLの開発者向けWebサイトからは、各分野のPublic DraftまたはDraftステータスのドキュメントがダウンロード可能だ。各分野では、それぞれの要求が重要度に応じて「Priority 1 (P1)」から順に分類されている。P1は"requirements"であり、CGL 3.0に準拠する場合、必ず満たさなければならない仕様、P2以下は必須ではないが望まれる機能だ。佐久間氏から説明のあったいくつかの分野について、概要を紹介しよう。

    "Availability"(可用性)の分野に向けては、P1として「ディスク障害の予防的な検出」「ストレージへのマルチパスアクセス」「強制アンマウント」「Mutexの改良」「起動時間の短縮」「ブートイメージフォールバック」「ライブパッチング」など、P2以下の機能として、負荷の低いモニタツールや、障害の隔離、無限ループの検出、使用中のブロックデバイスの取り外しなどが挙げられている。

    "Serviceablity"については、「管理・モニタリング」「パッケージ管理」「障害解析」の3分野に細分化される。「管理・モニタリング」では、一般的なSNMP、Webベースのエンタープライズ管理標準である"CIM/WBEM (Common Information Model/Web Based Enterprise Management)"によるリモート管理機能、IPMI (Intelligent Platform Management Interface)やSA HPI(Service Availability Forum: Hardware Platform Interface)への対応や、挿抜しても持続的に名前を割り当てる「パーシステント・デバイス・ネーミング」、総合的なシステム診断のフレームワークなど。「パッケージ管理」では、アップデート時の再起動の不要化、より高度なパッケージ間の依存チェック、アップデートログといった機能。「障害解析」ではカーネルパニックハンドラ拡張、カーネルリモートデバッガ、カーネルダンプ診断ツールなどの機能が要求されている。

    "Hardware"に関しては、通信分野向け次世代プラットフォーム「AdvancedTCA」や産業用PCI規格「CompactPCI」、次世代拡張インターフェース「PCI Express」などへの対応が上げられている。既にこれら新しい規格に基づいた製品も出荷されているが、CGLワーキンググループでも、積極的にこれらの新技術を取り入れようとしているようだ。

    CGLとクラスタリング技術

    CGL 3.0の概要も徐々に見えてきているが、重要なのは実際の開発プロセスの中でそれがどのように実装されていくか、ということだろう。NTTの池邉隆氏による講演では、CGLの目指すキャリアグレードシステムに要求される技術分野として、特にクラスタリング技術に関する具体的な解説が行われた。

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