【レポート】
社団法人電波産業会、情報通信月間推進協議会の主催で「電波の日記念講演会」が6月9日開催され、総務省、通信、放送、IT産業界から4人の論者が電波利用の状況と見通しについて語った。
まず、総務省の竹田義行・総合通信基盤局電波部長が「電波開放戦略」について述べた。電波は原則的に、ITU(国際電気通信連合)の国際分配に基づいて国内分配を決めているが、電波の利用形態が多様化、1950年には移動局、固定局、放送局など局数は5,327局だったが、2004年3月には約8,737万局になっている。
電波利用関連分野の市場規模は、2000年には約19兆円だったが、これが2008年になると約43兆円、2013年には約92兆円に拡大すると想定されている。「これは、流通、教育、医療、介護・福祉、建設など、潜在的電波利用産業が大きく伸びるとみられる」(竹田部長)からだ。2003年に出た情報通信審議会の答申では「電波開放戦略」を示し、周波数割り当ての見直し、周波数の再配分、電波利用両制度の見直しを挙げている。
こうした動きを受けて電波法が改正され、5月12日の参議院本会議で可決、成立した。国境を飛び越えるようになったインターネット犯罪に対処する「サイバー犯罪条約」の締結にともなう国内法整備の一環として、無線LANの不正傍受や内容漏えいに罰則を科すことなどを規定、年内にも施行する。
改正のもうひとつのポイントは、無線への新規参入を促すため、事前チェックが中心の免許制を事後チェック型の登録制にする。「現在は、基地局など1局ごとに審査、詳細情報に基づき免許が交付され、申請から免許までおよそ2-3週間かかるが、改正後は、同一の使用形態の基地局などをまとめて登録、これに準拠して基地局など自由に設置でき、申請から登録まで最短で1日となる」。
竹田部長は「これまでに国内では移動体通信が固定系を追い抜いた。ブロードバンドでは今、有線での接続が1,500万を超えたが、こちらでも無線系が逆転するかどうかについて関心が高い。携帯電話は7,000万に達しているものの、こちらは依然ナローバンドともいえる。移動体のほうもブロードバンドになり、有線、無線双方のブロードバンドが融合すれば、真のユビキタス社会が到来する」と強調した。
日本テレコムの倉重英樹社長は、「21世紀のネットワーク社会に向けて~日本テレコムの新しいビジョン~」と題し、デジタル化時代の社会、企業のあり方を論じた。
70年代には、コンピュータの性能は価格の二乗に比例するという、グロッシュの法則、80年代は、CPUの処理性能は18カ月で2倍になるとするムーアの法則などが叫ばれ、デジタル情報は「紙媒体による情報」に比べて高効率で、コストも低くなった。倉重社長は「かつては、処理は速いがコスト高だった。これはパラダイムが変換したことを意味する」と語る。
90年代には、ネットワークが大きくなればなるほど高価値になるというメトカルフェの法則が論じられた。ネットワークの発達により、一般の消費者は直接メーカーとやり取りができるようになり、従来の流通を介したマーケットは不要になる、との発想が出てきたが、「これはいわれたほどは進んでいないのが現状で、徐々に動いている。一方では、楽天、ヤフーなどマーケット自体が電子化している」。
一方、企業内の組織について倉重社長は次のように語る。「これまで、紙主体の情報と対面型の相互関係が中心だったことから、ピラミッド状の階層型だった。しかし、デジタル化とインターネットにより、さまざまな機能を担う部署間がそれぞれ直接ネットワークでコラボレーションできるようになり、付加価値を生み出すコミュニティーが形成された。早くからこの形態を採用したのは、シスコシステムズやデル、国内では、ユニクロのファーストリテイリングだ。こうなると、ピラミット上の階層構造で、すべての要素を自社内で保有していなければならない理由はなくなり、自社に持っていない要因があっても、他から取り入れてビジネスができる」。
勤労者の意識も変化している。倉重氏は「これまで日本では、働くことの意味は生活のため、ということが一般的だった。仕事は賃金を得るのが目的で、自己実現は他の手段を用いていた。ところがいまでは、自己の能力を何らかのパフォーマンスに変えること、つまり仕事を通じた自己実現を志向する層が増えている。これからは、従来の労務・業務管理でなく、これらの人々の能力管理が必要になる」としている。
倉重氏はかつて在籍していた会社で実験をしている。企業内の文書をすべてデジタル化、PHSなどによりモバイル化し、東京駅至近の丸ビルにオフィスを移転、必ずしもオフィスに来なくてもいいようにした。その結果「社員は通勤時間から解放され、自然環境に恵まれた遠隔地に居を構える者も出てきた。その結果、生産性は10年で2倍になり、固定コストは34%ほど減らせた」。
このように倉重氏はデジタル化とネットワークの効用を説き、「情報はデジタル化しないと通信回線を通せない。通信技術を使えば、オンラインでビジネスプロセスができる」と強調、ネットワーク社会に適した事業構造、生活様式の構築を提唱する。
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