【レポート】

LinuxWorld Expo 2004 - 各社の勢力図に変化が見えたLinuxWorld Expo

2 アジアのスタンダードを築くMiracleとコンシューマへ進出するTurbolinux

    鶴田展之  [2004/06/04]

    Miracle Linux「日本、中国、韓国そしてアジアへ!Asian New Linux Standard~MIRACLE LINUX V3.0 Asianux Inside 今始まる~」

    米国のレッドハット、欧州のSUSEに対し、Miracle Linuxは日中韓でひとつの勢力を築こうという「Asianux」プロジェクトを立ち上げた。同社代表取締役佐藤武氏の講演では、アジア市場の動向とAsianuxの意義について説明を聴くことができた。

    Asianuxには、Miracle Linux、中国の「紅旗」、そして間もなく発表される韓国のディストリビュータが参加する。Asianux 1.0の実体は「インストールCD」「カーネルソースCD」の2枚のCDで、Asianuxプロジェクトに参加するディストリビューションでは全て共通となる。事実上崩壊したUnited Linuxに代わり、今後Miracle LinuxはAsianuxという新たなアジア標準の基盤の上で構成されることになる。

    間もなくリリースされる最新バージョン「Miracle Linux 3.0」は、大規模システム向けにチューニングされたサーバ向けのディストリビューションだ。特に性能面のチューニングは徹底して行われたようで、Oracleの実行性能に関してはTPCベンチマークで商用UNIXを凌駕するという。

    日本の国内企業にとって、性能面以外にMiracle Linuxの魅力となるのがサポートの安心感だ。Miracle Linuxでは、性能強化のためのカーネルの改良等も国内の開発者によって行われている。問題が起きた場合でも、自社内に技術の蓄積がある分、単なる海外ディストリビューションのリセラーよりも迅速に対応できるというわけだ。また、リリース後6年と長期のサポートが約束されているのも心強い。クラッシュ時の障害復旧のために組み込まれた"LKCD(Linuxカーネルクラッシュダンプ)"、"LKST(Linuxカーネル状態トレース)"といった機能も、Miracle Linux独自のものだ。

    また、国産ディストリビューションらしく、日本語への対応も強化されている。情報処理推進機構(IPA)からの委託で行われた「Samba 3.0」の日本語化の成果が反映されている他、他のディストリビューションにはないShift JISロケールの追加、UTF-8外字のサポートなど、多くの改善が行われている。

    なお、Miracle Linux 3.0はあえてカーネル2.6を採用せず、2.4をベースとしたうえで、可用性やパフォーマンスに関する2.6の改善をバックポートして実装している。マーケティング的なメリットを犠牲にして実質を優先する姿勢の潔さには非常に好感が持てる。

    Turbolinux

    カンファレンスは行われなかったが、Turbolinuxの新製品についても展示ブースで説明を聴くことができた。まずブースで目についたのは、デスクトップ向けの「Turbolinux 10F...」。「Turbolinux 10 Desktop」をベースに、Windows MediaコンテンツやDVDの再生、iPodとの連携機能等を盛り込んだ、コンシューマー向けの製品だ。単にソフトウェアを追加するだけでなく、ブラウザとプラグインの動作の改善なども行われ、より使いやすくなった。

    また、秋にはカーネル2.6を搭載した新サーバ"Celica"がリリースされる。こちらに関しては、現在のところカーネル2.6による機能強化、SELinuxによるセキュリティの向上といったものの他は、Turbolinuxならではの具体的な機能は聞けなかった。群雄割拠のサーバ市場でTurbolinuxがどのような差別化を図って行くのか、とりあえずは期待して待ちたい。

    まとめ

    今回のExpoに参加していたLinuxディストリビュータの中では、NovellとMiracle Linuxの2社の活気が印象的だった。特にNovellのプレゼンテーションは、SUSE Linuxを単体で販売するようなものではなく、既存のアプリケーション群と統合し、整合性を持ったソリューションとして提供していこうという、非常に説得力のある内容だった。Linuxのビジネス市場への進出が言われるようになって久しいが、いよいよエンタープライズ市場への本格的な導入が現実的になってきたように感じられる。その中で、草創期からここまでLinuxを盛り上げてきたディストリビュータが、どこまで競合できるか、今後も目が離せない。

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