【レポート】
IDGが主催する「LinuxWorld Expo/Tokyo 2004」が、6月2日から4日までの3日間、今年も東京ビッグサイトで開催された。Linux関連の企業、団体が一同に会するこのイベントも、1999年3月の第1回から数えてはや10回目。当時は一部の好事家に支持されるに過ぎなかったLinuxも、現在は企業情報システムの中核を担うOSとして注目を集めるまでになった。今回のExpoでは、そのテーマも「Linuxを使ってみる」ことから、「Linuxを使いこなす」ことにシフトし、出展社の各ブースでもビジネスの現場に即した、具体的な提案がなされているのが印象的だ。
また、会期中、会場内では各メーカーやユーザ企業・団体等による、様々なカンファレンスが行われた。本稿では特に、2日、3日に行われた、Novell、レッドハット、ミラクル・リナックスのLinuxディストリビュータ3社によるそれぞれのカンファレンスを中心にレポートする。現在、デファクトスタンダードのRed Hatがターゲットを企業ユーザに絞ったこと、SUSEがNovellという大きな後ろ盾を得たことなどにより、Linuxディストリビュータの勢力図にも変化が訪れつつある。各社の特色、優位性がどこにあるのか、今後のLinux界を占う上でも興味深くカンファレンスを聴いた。
Novellのセッションでは、コーポレート・プランニング&デベロップメント担当上級副社長Ralph Linsalata氏がSUSE Linuxの戦略を語った。Ximian、SUSEを買収し、本格的にLinuxビジネスに参入した同社は、Netware等で培ってきたエンタープライズ・テクノロジと、SUSE、Ximianのオープンソース・テクノロジを組み合わせ、包括的なひとつのソリューションとしてアピールしていく。
Novellの具体的なソリューション・スタックは、同社ならではの独創的なアプリケーション、ミドルウェア群によって構成される。システム管理者向けには、ディレクトリサービス「eDirectory」を中心に、ソフトウェア管理ツール「Red Carpet」などが組み合わせられる。システム開発者向けには、J2EEアプリケーションの統合開発環境「exteNd」や、.NETフレームワークのオープンソースな実装である「Mono」が提供される。NovellのLinux戦略の中心となるのは、これら、顧客セグメントに合わせたソリューション・スタックにより、従来のシステム中心からユーザ中心のコンピューティングへの移行を進めることだ。
このコンセプトが実際の製品として形になるのが、8月にリリース予定の"SUSE Linux Enterprise Server 9(以下SLES9)"と、今年第4四半期のリリースが予定されているデスクトップ向けSUSE Linuxの次期バージョン"SUNDANCE"(開発コードネーム)だ。
SLES9は、"CIM(Common Information Model)"やOSDLの"CGL(キャリアグレードLinux) 2.0"といった標準に準拠し、「スタンダード」を強くアピールする。中でも、LDAP v.3準拠のディレクトリサービス"eDirectory"は、Active Directory等とも連携可能な大規模なディレクトリサービスを展開する、ソリューションの中核となる製品だ。もともとディレクトリは、NDSで培ったノウハウを持つNovellのお家芸。特にアカウント情報の統合によるユーザの集中管理や"シングルサインオン"は、エンタープライズ市場にLinuxが進出していく上で、大きな力となりそうだ。
一方、デスクトップ向けの"SUNDANCE"では、メール/ワークグループ・クライアントの「Evolution 2.0」、「OpenOffice.org」を改良してWindowsプラットフォームとの相互運用性を高めた「Novell Edition OpenOffice.org」などのアプリケーションが目玉となる。「Evolution 2.0」では、Novellのコラボレーションツール「GroupWise」はもちろん、新たに追加された専用コネクタによって、「Microsoft Exchange Server」との連携もサポートされる。日本語版のデモンストレーションは間に合わなかったようだが、今月内にはベータ版がリリースされるとのことなので、入手でき次第テストしてみたい。
SUSEを獲得し、日本市場への本格的な参入で意気上がるNovellに対し、レッドハットのジェネラルマネージャ三橋秀行氏によるカンファレンスは落ち着いた印象だった。企業ユーザに特化した「Red Hat Enterprise Linux(以下RHEL)」はリリース間隔も12~18カ月と長いため、今回のExpoでは具体的な新製品の発表も特になく、カンファレンスもレッドハットのアップデート戦略とWindowsに対する優位性のアピールを再確認する内容が中心。来年以降のロードマップとして、RHEL v4/v5でデスクトップ向け機能が段階的に強化されること、仮想化機能やストレージ管理機能、セキュリティ面での強化、Linuxに留まらずアプリケーションにもコミットしていくことなどが挙げられたが、その具体的な恩恵がユーザに見えてくるのはまだ先になりそうだ。
現在RHELは商用Linux市場で86%のシェアを占める(SG Cowenの2003年12における調査による)ということで、標準ディストリビューションとしての地歩を固めているのは確かだが、SUSEをはじめとするライバルも着々と追いつこうとしている。これまでWindowsに対するオルタナティブとしてLinuxを牽引してきたレッドハットだが、Linux自体がある程度市場に認知された今、周囲の状況は変わりつつある。三橋氏も「今年は戦いを挑まれるだろう」と語ったように、Linux陣営の中での主導的な立場を守っていけるかどうかが、同社の今後のキーポイントになりそうだ。
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