【インタビュー】

「革命シリーズ」の歴史 - ユーザーの声が育んだユーティリティソフト

1 始まりはCD-ROMのオートプレイソフト

    日高彰  [2004/06/04]

    専門店に限らず、いまや家電量販店でもごく普通に販売されるようになったパソコンソフト。多くのソフトメーカーがひしめき、毎週何本もの新商品が登場する激戦市場である。CD仮想化ソフト「CD革命/Virtual」などで知られるアーク情報システムも、ユーティリティソフトでその市場に挑むメーカーのひとつだが、商品の企画・開発から販売、そしてアフターサポートまでのほとんどを自社で一貫して行っている点が特徴だ。元々は法人向けのシステムやドライバの受託開発が本業だった同社が、どのようにしてパソコンソフトの市場に参入していったのか、そして、押し寄せる低価格化の波に対してどう立ち向かうか、同社企画販売部 営業担当部長の徳山真旭氏に話を聞いた。

    始まりはCD-ROMのオートプレイソフト

    --個人向けのパッケージソフトを作るようになったきっかけは何だったのでしょうか。

    Windows 95が発売されたときこれが大変なブームになりまして、たくさんのメーカーさんがパソコンソフトに参入して、市場がごった返す中で私たちもやり始めたというところです。当時私もお店に行って商品を売っていたのですが、パソコンをまだ買ってないのにソフトを先に買うお客さんが本当にいた時代でした。

    --では、ユーティリティソフトに注目されたのはどういった理由なのでしょうか。革命シリーズの最初の商品は、CD-ROMをキャッシュして読み込みを高速化する「CD革命/Speed」ということですが。

    革命シリーズではないのですが、実はその前にWindows 3.1でCD-ROMのオートプレイを実現するという幻の商品がありました。なんとそれが発売されたのが、オートプレイがOSの標準機能になったWindows 95が出た後という(笑)。それくらい開発側のニーズの読みが消費者と離れていたということでもあるんですけど、当然全く売れませんでした。私はそのとき会社に入ったばかりで、さすがにこういう状況じゃいけないだろうと思い、業界の方のご意見を聞きながら、発売したのが、1996年に発売した「CD革命/Speed」になります。

    当時他社が出されていた商品で、CD-ROMの内容をキャッシュして高速化するソフトが非常に売れていまして、正直に申し上げればその2匹目のドジョウをねらっていました。ただ、そこは元々ドライバ等の開発のバックグラウンドがある弊社ですので、より効果的な機能を打ち出せば生き残っていけるのではないかと思い、そこでシステムユーティリティソフトに注力することになったというところですね。極端な言い方をすれば、当時の市場で売れていたのがタイピングソフトならタイピングソフトを作っていたかもしれません(笑)。

    --では、やはり参入当初から自社で開発されることにこだわりを持たれていたということでしょうか。

    いえ、最初のオートプレイソフトのときもそうですが、海外のメーカーのソフトをローカライズして売っていただけでした。我々も最初は、コンシューマー市場は割と楽なんじゃないか、出せば勝手にそこそこ売れてくれるものなんじゃないか、という考えに近い部分があったのですが、もちろんそれでは全く売れず大失敗でした。でも、ほとんど私と上司の2人だけでやっていた時期でしたので、規模の小さいうちに思い切り失敗しておいたのは今になってみればよかったのかもしれません。ただ、Windows 95でみなさんが「濡れ手に粟」だった時代に私たちは非常に苦しい思いをしていたということは言えると思います。

    --CD革命/Speedに対してのユーザーの方々の反応はいかがでしたか。

    おかげさまで良かったですね。当時売れていたCD高速化ソフトはHDDにキャッシュするものだったのですが、CD革命/Speedではメモリにキャッシュすることもできました。当然ですがメモリにキャッシュしたほうが速くなりますので、好評でした。もちろん当時は広告を打つこともできませんでしたので、大きく売れるということはありませんでしたが、全国行脚して売り歩いていくうちに少しずつ売り上げは伸びていきました。そのときは特定のお店でだけでも売れてくれればいい、その範囲で採算がとれればいいという感じでした。

    昼間はサポートセンター、土日はデモンストレーターの営業マン

    当時我々は箸にも棒にもかからないメーカーで、パッケージをどうデザインすればいいかとか、販路をどう確保すればいいかとかまるでわからない状態でした。電話サポートも昼間私がやっていて、夕方5時にそれが終わってから営業に出かけるなんてこともありました。でも、現在もサポート部隊は自社で抱えています。社外にアウトソーシングしたほうがコストパフォーマンスは高いのかもしれませんが、少ない人数でも社内に確保するほうが重要だと思っています。こんなことはできないの? と聞かれて「すいません。できません」とか、怒られたらお金返せばいいのかとか、そういう問題ではないですからね。よく言われることですが、クレームは新製品開発のチャンスであって、そのクレームを解決すれば売れる商品ができるということですから、直接ご意見をいただけるということは本当に重要です。

    お客さんの中にも常連さんというか、質問の電話のついでに「そういえばあの徳山って人は元気かね」なんて聞いてくる方もいたりして、それくらい応援してくれるユーザーさんがいらっしゃるということ自体、最初から社内でサポートを行っていたから得られた財産だと思いますね。ソフトのメーカーとしては珍しいのではないでしょうか。そういったユーザーの方からは確かに厳しいご指摘をいただくこともあるのですが、結果的にはとても参考になることが多いですね。

    --「全国行脚」されたというのは、販売店向けのいわゆる営業だけではなく、一般ユーザーに対する販促活動もされたということでしょうか。

    ええ、お店にお客さんの集まる土日は実際に店頭デモに立って商品の説明をしていました。秋葉原では3店舗くらい同時にやったりしていたので、私が数店を連続で回ってデモをしていると、休憩室でコンパニオンの子たちが「同じ顔の人があっちの店にもいた。双子なのかなあ」なんて話していて、「謎の双子のデモおじさん」と呼ばれたこともありましたね。ひとりなんですけど(笑)。それくらいあちこちで説明をしていました。やはりメーカーの人間自らが、どんなコンセプトでこの商品は作られているのか、どういう使い方ができるのかを見せられるという点で、店頭デモは欠かせませんね。例えばバックアップソフトならバックアップソフトで、どのパッケージを見ても同じようなことが書いてありますので、普通の方はどれを選んで良いのか分からない。ならとりあえず安いのを買っておこう、となってしまうのがユーザー心理ですが、それを払拭しなければいけない。

    そして「CD革命/Virtual」へ

    --そして、いままで看板商品として続いている「CD革命/Virtual」が翌年の1997年に発売されます。

    CD革命/Virtualは、CDを全部キャッシュしてしまおうという発想でした。そうすれば高速になるだけでなく、仮想ドライブとしてマウントすることで、複数のCDを同時に使えます。これも最初は、うちの開発者と知り合いだった海外のメーカーが考えていた技術をベースにしています。ただ、それはまだ構想の段階だったので、実際の開発は弊社とタッグを組んで2社で行い、商品になりました。アーク情報システムという名前も少しずつ浸透して、またちょうどHDDが大容量時代を迎えようとしていた時期だったということもあり、これは出せば売れるという確信が発売前からあったソフトです。

    最初は「仮想ドライブ」という考え方がなかなか伝わらなかったので、いきなりドカンと売れることはありませんでしたが、次第に「CD-ROM仮想化ソフト=CD革命=アーク情報システム」というイメージがユーザーに認知され、最終的にはかなり売れる商品になり、バージョン2からは自社開発になりました。ただ、最近のバージョンでは開発の一部を中国の部隊に移しています。やはり中国には、人件費が安くかつ優秀な人材がいますので。最近日本ではアプリケーションなどオモテ側に近い層のソフトを作る人が中心になってしまって、仮想CDソフトのようなドライバ系で優秀な開発者を探すと、かなり年齢が上の方になってしまい、高額な人件費がかかってしまうことが多いのです。

    --中国での開発を始められたのはいつごろからでしょうか。

    4~5年前から少しずつ取り入れています。もともと弊社の開発部門に中国から来ていた者がいたのですが、彼が中国に戻って優秀な人材を集めて、うちの100%出資で会社を立ち上げました。その会社に開発の一部を委託しているという形です。ですので、単に日本の手伝いをするために中国で臨時に人を集めているというわけではありませんし、丸投げでもありません。うちでソフト開発のビジネスを学んだ者がやっていますので、日本のこともよくわかっていますしね。

    --お話を聞いていると、とても地道に成長されているという印象を受けます。

    いまでもそうなのですが、自分たちで売れるところできっちり実売を伸ばしていくという方針でして、無理にたくさん流通させようという考えはありません。「こういう機能があったら買うよ」「パッケージのこの説明じゃ機能がわからない」、そういったユーザーさんからの細かいご意見を直接私が吸収し、販売のやり方も製品の売れ行きにあわせて少しずつ規模を拡大してきたということです。自分たちでできる開発と販売の地盤があって、お客さんからのご意見を取り入れて改良していく、そういうことを愚直にいままでやってきたから、CD革命/Virtualもいままでやってこられたのだと思います。いや、私と開発陣だけでやっていたら、めちゃくちゃにやっていたのかもしれませんが、弊社の社長は、「他人に迷惑をかけずにしっかりとした仕事をする」というポリシーを持っておりましたので、軌道修正していただきながらなんとかやってこれたのだと思います。弊社は、本当にまじめな会社なんです(笑)

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      特別企画

      マイナビニュースマガジン