【レポート】

生まれ変わる「Simputer」の軌跡

1 インドが発祥の地

 
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PCは一家に1台から一人に1台へ……。今や日本はそんな時代である。デスクトップPCに加え、ノートPCやPDA、さらに近頃はインターネットや電子メールに対応した、PC並みの機能さえ標準装備する携帯電話まで広く普及し始め、一人で何台ものPC/情報家電を所有する状況さえ珍しくはないかもしれない。

ところが、少し世界に目を向けてみると、PCどころか電話さえ十分に普及していない地域が数多く存在している。電話は村に数台しかないため、電話をかける時は、どこかの商店などへ借りに出向くといった状況である。依然として情報通信技術(ICT)を持てる者と持たざる者との格差が、デジタルデバイド(情報格差)として根強く残っているのだ。

1998年11月、インドはバンガロールにおいて、発展途上国のIT発展について考察する国際セミナー「Global Village」が開催されたという。デジタルデバイド解消への取り組み方が活発に討論されたといわれており、これに先立つ1998年9月には、Swami Manohar氏が新たなアプローチとして、低価格で使いやすい「Simputer」の開発を促している。

同氏はSimputerのコンセプトを「The Simputer: access device for the masses」と題するレポートに著しており、現在でもSimputerの開発理念として前面に掲げられているとされる。同氏によると、Simputerは、シンプルかつ低価格かつ多言語対応のコンピュータを意味する「Simple, In-expensive, Multi-lingual People's compUTER」と定義されるという。

まず、Simputerのユーザーインタフェースは、電話のダイヤルボタンやテレビのリモコンが、だれにでも使いやすいシンプルなデザインになっているのと同様に、わずかな操作キーのみで利用できることが目指されている。このシンプルな構造は、省スペース設計で低価格を実現する目標につながり、デジタルデバイドの解消にはUS100ドル以下で普及させられるかどうかが大きなポイントに挙げられるという。さらに、英語を母国語としない人々にも広く利用されるよう、多言語への対応が求められるほか、音声認識およびテキスト読み上げ技術などを採用して、たとえ文字の読めない人でも使えるコンピュータに仕上げることが理想とされているようだ。可能であれば、電話やファックス機としても用いられる多機能製品にしていきたい、あるいは、防塵防水耐熱性能を備えた堅牢仕様のコンピュータであれば、郊外の村落でも故障することなく長きにわたって使えるだろうといったリクエストも、同レポートには盛り込まれている。

CDAとして普及を目指す

Linux採用でコンパクト設計のSimputerを開発すべく、1999年には、Indian Institute of ScienceおよびEncore Software(前Ncore Technology)より技術者を集めて、正式に「Simputer Trust」が発足した。いわゆる一般的なデスクトップPCやノートPCではなく、PalmやPocket PCのようなPDAでもない、全く新しい分野の製品カテゴリーを築くことが目標とされており、開発されたSimputerのハードウェア仕様は「Simputer General Public License(SGPL)」と呼ばれるライセンスのもとに、幅広く提供されているようだ。

初期のSimputer

Simputer Trustの開発者陣

すでにSimputer Trustの設計に基づくSimputerが、インド各地で展開されるプロジェクトに利用されており、バンガロールに本社を定めるPicoPeta Simputersは「BEL-PicoPeta Simputer」の製造に踏み切っている。OSにはLinuxを、CPUにはIntel製のStrongARM 200MHzプロセッサを採用したBEL-PicoPeta Simputerは、タッチスクリーン方式の液晶ディスプレイを備えたパームサイズの製品に仕上がっている。

最大の特徴として、個人利用のPDA(Personal Digital Assistant)とは一線を画する、スマートカードによる地域コミュニティでの共有を目指した「Community Digital Assistant(CDA)」というコンセプトの実現が挙げられるだろう。デスクトップPCを購入するよりは、かなり低価格でBEL-PicoPeta Simputerを入手可能となるものの、まだまだ一人で1台を所有してデジタルデバイド解消を図ることは望めないかもしれない。そこで、ユーザーIDなどが格納されたスマートカードを個人で所有し、専用ポートに自分のスマートカードを挿入すると利用ユーザーが認識されるので、1台のBEL-PicoPeta Simputerを複数ユーザーで使い回せるようになっているという。

Simputer Trustが独自に開発した「Information Markup Language(IML)」で記述され、BEL-PicoPeta Simputerがインタフェースに採用する「Malacca」は、スマートカードによるユーザー識別や音声ナビゲーションへのシームレスな対応がポイントとされる。ヒンディー語やカンナダ語を標準サポートするテキスト読み上げソフトウェア「Dhvani」が稼動して、PCの利用経験がなかったり、文字を読めなかったりする人でもスムーズに使える工夫がなされているようだ。さらに、デーバナガリーを始めとするインド各地の言語を表示できるほか、ユニークな「Tapatap」と呼ばれる文字入力方式を採用し、インド全域でデジタルデバイドと闘うための強力なツールとなっていくことが期待されている。

現在、BEL-PicoPeta Simputerを、インドのチャッティスガル州で学校教育に採用する、カルナタカ州で農作物収量データの追跡管理に用いる、電気メーターの検針に利用する、モバイルバンキングのシステムに採用するといったプロジェクトが進められており、子どもたちを含む多くのユーザーから、好評価のフィードバックが寄せられているという。

低学年児童もSimputerを利用可

チャッティスガル州で学校教育に採用されたBEL-PicoPeta Simputer

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インデックス

目次
(1) インドが発祥の地
(2) 「Amida Simputer」で世界へ


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