【レポート】
5月26、27日の両日、東京・高輪プリンスホテルにおいて、次世代の携帯電話の技術開発をテーマとした「Beyond 3Gに関する国際会議」が開催されている。初日の26日は、冒頭でKDDI・NTTドコモ・英Vodafoneの3社の技術者が揃い踏みし、それぞれ現在の自社における3G携帯電話の現状と4Gに向けての展望を語った。
最初に登場したのはKDDIの取締役執行役員専務・伊藤泰彦氏。同氏はまず冒頭で「私には大学生の娘がいるが、娘は朝、携帯電話のアラームで目を覚まし、携帯電話でスケジュールを確認し、鉄道の経路選択から友人との待ち合わせの連絡、暇つぶしのゲームに至るまで全て携帯電話でこなしてしまう」と語って会場を笑わせた上で、「このように今や携帯電話は単なる音声通話のハンドセットではなく高度に進化を遂げた統合端末となっており、そのことを示すためにあえて『ケータイ』との言葉を使いたい」と述べた。
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伊藤泰彦氏 |
その上で同氏は「携帯電話の『ケータイ』化は、住宅事情が悪く通勤通学などの時間が長い日本では比較的早く進んだが、米国や欧州ではそれらの前提条件が異なるため、これらの地域での『ケータイ』化は3.5G/4G世代になり、携帯電話においてブロードバンドが利用できるようになった段階で加速する」と予想した。さらに同氏は「今後携帯電話はTV・ラジオなどのメディアプレーヤや身近な家電製品のリモコンとなる方向に進む」との見解も示した。
ただ一方で同氏は「今や私の妻も、家で目の前に固定電話があるのにも関わらず携帯電話で長電話したりするようになったように(笑)、携帯電話が固定電話に取って代わり社会インフラとしての重要度が増してきている」と指摘。これに対しバックボーンのIP化の話題が最近盛んであることについて「確かにIP化によってアプリケーションの自由度が増す、ネットワーク構築コストを下げられるなどのメリットはあるが、一方でウイルスやスパム・DDoSの問題、QoSの管理の問題など、IP化することで生じる問題も多く、社会での重要度を考えるとIPをそのまま使うというのは問題だ」と述べ、いわば"Beyond IP"とでも呼ぶべき技術を考える必要があるとの認識を示した。
同氏はこの一例として、個人情報保護とユーザ認証を両立させるために認証基盤を複数のレイヤ・ドメインで管理するといったアイデアを紹介し、携帯電話に求められる社会的な要求を踏まえた上でBeyond 3G世代の携帯電話を開発していくべきだとの考えを示し講演を締めくくった。
続いて登場したNTTドコモの常務取締役で研究開発本部長の木下耕太氏は、まず前半でFOMAに関する加入者や人口カバー率、ARPUなどの各種データを紹介。その中でFOMAユーザとPDCユーザの1日に使用するパケット量の比較を示し「FOMAではPDCに比べユーザあたりのパケット量が約9倍にまで拡大している」ことを示し、この理由を「これまでPDCでは不可能だったアプリケーションが、FOMA上でユーザに受け入れられていることが背景にあるのではないか」と分析した。
続いて同氏は3Gから4Gへの移行問題を取り上げた。同氏は「移行には大きく分けて3つのシナリオがある」と述べた上で、まず「3Gとは全く別個に4Gのネットワークを立ち上げる」方式は「とにかく金がかかり過ぎる」、「単純にネットワークを3G/4Gで共用する」方式は「3Gと4Gとの間のサービス格差が大きくなるし、3G用のネットワーク機器が残ることで4G側の性能にボトルネックが生じる恐れがある」として、これらは移行方式として適していないと語り、「まず4Gの前に『Enhanced 3G』というべき方式を導入して、その上に4G網を構築する」方式が「サービス格差が小さくてユーザがスムーズに移行でき、ネットワークの投資効率もよい」として移行に適していると訴えた。
携帯電話網のIP化については、同氏は端末まで完全にEnd-to-EndでIP化する方式と、基地局と端末は従来のプロトコルを使い、交換局レベルでプロトコル変換を行う方式とを比較し、「後者の方が電波の最適化などの調整が行いやすいし、Internet接続した場合にサーバ側で移動透過性を意識する必要がない分、開発が楽になる」などと述べ、「ドコモとしては後者のアプローチの方が有効だと考える」との認識を示した。
最後に同氏は、現在横須賀で同社が実験中の4G実験局の状況を報告し「既に下り100Mbps、上り20Mbpsの数字は実際に達成している」と、4Gの技術開発が順調に進んでいることをアピールしていた。
最後に登場した英VodafoneのStrategic Projects Director・Stephen Temple氏は、前記の2社とは異なり、3Gがまだほとんど立ち上がっていない欧州の携帯電話市場の現状を踏まえて「4Gをどうこう言うよりは、まずは3Gをきちっと立ち上げ、ビジネス向けなら無線LAN、コンシューマ向けならデジタル放送などと、競合する分野で着実に3Gの利用範囲を広げることが必要だ」と語り、4Gに今から期待するのは早すぎるという姿勢を示した。
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Stephen Temple氏 |
また同氏は「GSM事業者の立場からすれば、今検討されている4Gのスペックでは基地局がカバーできる範囲は狭くなる傾向にあることから、既存の2G/3Gのネットワークを完全に4Gに置き換えるということは基本的にあり得ない(そんなことをするとサービスエリアが狭くなってしまう)」と指摘した上で、「そうすると4Gは『どこでも使える』という普遍性を失ったニッチなサービスになってしまい、ますます普及が遅れる」という悪循環にはまってしまう可能性があると述べ、「むしろ逆に『サービスエリアを維持したまま速度をできるだけ上げる』といった考え方を採ってみてもいいのではないか」と語った。
そこで同氏は、地上アナログTV放送や現在のGSM用など、さまざまな周波数を再利用する案を検討し、その結果として「3Gにユーザが移行した段階で空くことになる現行のGSM帯を再利用するのが、現在GSMでサービスを行っている各事業者にとって最も望ましい」との考えを示した。ただ今のペースで進むと、ユーザが3Gに完全移行してGSM帯が空くのが2012~14年ごろになると見られることから「4Gの普及は早くてもそれ以降とすべきだろう」と語り、早期に高速化したサービスを開始したい日本勢とは大きな温度差を感じさせた。
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