【レポート】

AIBOに笑い、シミュレーションに唸るロボカップ2004国内大会

4 ループシュートがついにこのリーグにも! - 小型ロボットリーグ

    大塚実  [2004/05/24]

    小さい分、中型ロボットリーグより迫力は少ないが、小型ならではのスピード感溢れる試合が楽しめるのが小型ロボットリーグだ。1チーム最大5台のロボットが、2.9×2.4mのフィールドを駆け回る。

    小型ロボットリーグのフィールド。外周には壁が用意されているが、今年の世界大会ではついにこの壁も取り払われる

    小型ロボットリーグでは、このように天井にビデオカメラを取り付け、データを利用することができる

    最初に簡単に説明しておくと、同リーグでも中型リーグと同様に、試合が始まったら人間は指示は出せず、コンピュータの自律動作に全てを任せることになる。ただ、小型リーグでは天井から撮影している画像をメインコンピュータが解析し、敵味方やボールの位置を把握、各プレイヤーに動作の指示を出すことができるようになっている。

    今大会の参加者は計10チーム。全て大学・高専などの学生チームとなっており、さながら学校対抗戦の様相を呈している。5チームずつで予選を行い、Aブロックの1位とBブロックの2位、逆にAブロックの2位とBブロックの1位で準決勝。そして最終日には3位決定戦と決勝戦が実施された。

    各チームがロボットやPCのマシントラブルに悩む中、安定して高い能力を発揮し、勝ち上がって来たのが桐蔭横浜大学の「Toin Albatross」だ。他のチームでは、ロボットが不調でハーフタイム中にテスターでチェックしたり半田ごてで修理したりする姿がよく見られたが、筆者が見ていた限りでは、同チームは全くそういう場面は見られなかった。また、戦術的にも工夫が見られ、1トップのチームが多い中、同チームは2トップシステムを採用。攻撃中は、ボールを持って前線に上がるFWの逆サイドにもう一方のFWが待機、ルーズボールを捕まえてシュートを放つなど、連携したプレーが効果的に決まっていた。

    準決勝のToin Albatross。ハーフタイム中もカバーを開けて冷やすだけ

    準決勝でToin Albatrossと対戦したのが豊田工業高等専門学校の「KIKS」で、このチームは昨年の優勝チーム(前回の大会はリーグを2つに分け、それぞれで優勝・準優勝が決められた)。しかし、守るときには全プレイヤーで、攻める時は2台のFWが前線に参加するToin Albatrossの前に、1トップでゴールを狙うKIKSは有効な攻撃が組み立てられず、0-5で完敗。ちなみに1トップを採用しているのは、「2トップになるとアルゴリズム的な難易度が急に上がるため」(同チーム関係者)とのことだが、Toin Albatrossのような強いチームを相手にするには、やはり1トップでは厳しそう。

    動画
    準決勝のToin Albatross(青いマーカー)対KIKS(黄色のマーカー)。入ったように見えるがこれは笛の後

    3位決定戦は、このKIKSと電気通信大学の「K-02A」の対戦。しかし、K-02Aはボールの検出ができないというトラブルが発生、ボールの位置が分からないのでロボットを動かしようがなく、前半だけでも8失点。後半になって検出はできるようになったが、結局10点目を決められコールド負けとなった。

    決勝戦は、ここまで共に無失点で勝ち上がってきたToin Albatrossと中部大学の「Owaribito-CU」という、大学チームの対決となった。予選1位同士の組み合わせとなり、予選ではToin Albatrossが40得点0失点、Owaribito-CUが18得点0失点とどちらも圧倒的な強さを発揮してきただけに接戦が期待されたが、終わってみれば準決勝と同じような展開でToin Albatrossが5-0で完勝。見ていた感じとしては、Toin Albatrossは動き自体も少し速いのだが、それよりも動きがキビキビしているというか、レスポンスが早い印象を受けた。

    決勝戦。手前がToin Albatross(青)、奥がOwaribito-CU(黄)

    この試合後、優勝チームの代表者である桐蔭横浜大学 工学部助教授の小柳栄次氏にお話を伺うことができた。まず見ていて感じたのがトラブルの少なさだが、同チームは安全性を重視したチーム作りを心がけているという。「(大阪への)移動により機械的な問題が起きたり、画像認識にしても(教室と)違う環境だと100%能力を発揮できない。我々はそういうリスクも考慮したシステムを作ってきている。また、平均点ではなくて、最低点がそのシステムを支配する。我々は多分全て70点だが、弱いところをいかに補完するかをコンセプトでやっている」。

    また、ハードウェア的にも安全策を採った。「(ロボットの)速度は相手によって変えている。1.2m/secの時もあれば、速そうな相手には1.5m/secにすることもある。こういう組み立ては本来はAIがやればいいが、ここは人が決めている。この設定がうまく決まったのも勝因の1つだ。本当はワンランク上のレベルにしたいが、それは壊れるというリスクもあるので、今日はしなかった」。

    同チームはもちろん世界大会に出場するが、今回の国内大会とはルールが大きく異なる。しかもあと2カ月間しか時間がない。「世界大会では新型のロボットを使う。フィールドが大きくなるので、速度は3.5m/secまで出すことができる。多少不正確でもボールに速く寄り、少しでも動かせば相手はついてこられない。どんどん動かして有利なところに運び、相手を追いつめたい」。ただ、アルゴリズム等、課題はまだ多いとのこと。目標については、「昨年はベスト8だったので、今年はやはりベスト4に入りたい。他のリーグに比べて小型が一番世界と格差があるが、今年は4強、来年は日本で開催ということもあり、そこでお立ち台を目指したい」。このインタビュー中にも、同チームのスタッフはフィールドで様々なテストを行い、データを採っていた。

    動画
    試合終了後に練習するToin Albatross。FWのポジショニングに注目

    ちなみにこのロボット、今回は使う機会がなかったが、ペナルティキックの時にループシュートも打てるのだという。中型ロボットリーグではMuratec FCが得意ワザとしており、その有効さも実証済みだが、空中のボールには手の出しようがないだけに、このリーグでも有効だろう。来年の大会では、派手にボールが飛び交う試合が見られるようになるのかもしれない。

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