【レポート】

音楽はオーディオにダウンロード - エニーミュージック、20日から

    小山安博  [2004/05/20]

    PCではなくオーディオ機器から音楽の試聴、購入、ダウンロード、音楽CDの購入などを可能にする音楽配信サービスプラットフォーム「Any Music」が20日からいよいよ始動する。ダウンロード配信される楽曲は、30以上のレーベル、3万8,000曲以上を取り扱うレーベルゲートの「Mora」サービス、CD購入はHMV、FMラジオ局としてTOKYO FMを初めとする38局で構成されるJFNが参加。立ち遅れが指摘されている国内の音楽配信の普及を狙う。

    エニーミュージックの使い方 - 家電感覚の簡単操作で購入できる

    エニーミュージックで実現されるサービスは、対応するオーディオ機器のリモコンを使い、接続したTVやディスプレイに表示される画面からサービスを選択して音楽をダウンロードしたり、CDを購入したり、というもの。エニーミュージックはオンキヨー、ケンウッド、シャープ、ソニー、ディーアンドエムホールディングス、パイオニア、日本ビクター、ヤマハの8社が設立、そのうちケンウッド、シャープ、ソニー、パイオニアの4社が20日のサービスインにあわせ対応端末を発売する。


    Any Musicの概要

    エニーミュージックを利用する場合、初めに利用登録を行う。登録手数料と月額利用料は315円、さらにブロードバンド環境が必要だ。利用登録後は、IDとパスワードをオーディオ機器に登録して利用を開始する。

    まずは本体、またはリモコンの「Any Musicボタン」を押し、ローカルのポータル画面を呼び出す。そこからAny Musicのポータルサイトへ接続、「音楽ダウンロード」「CDショップ」「FMオンエア情報」といったサービスを選択する。

    本体のAny Musicボタン

    オーディオ機器のポータル画面(ローカル)。この時点ではネットワークにはつながっていない

    こちらはAny Musicのポータル画面。Moraの売れ筋情報がインターネット経由で表示されている

    音楽ダウンロードを選択した場合、Moraのサイトに接続され、「今日のおすすめ」や「ニューリリース」「Mora 邦楽ランキング」などといったリンクを選択したり、アーティスト名などによる検索を行い、欲しい曲が見つかったら30~45秒程度の試聴ができるので、気に入ったら購入ボタンを押して購入する。支払いはクレジットカードで行い、楽曲の価格は、1曲の場合は158~368円、アルバムは1,050~2,400円。

    「音楽ダウンロード」を選ぶと表示されるMoraのトップ画面

    洋楽ランキングなどが閲覧できる

    楽曲の詳細情報画面

    購入画面

    試聴は検索画面などで楽曲のリンクをアクティブにするだけで流れる仕組みで、検索から試聴、購入まで家電感覚で特に悩むことなく利用できそうだ。

    ダウンロードした楽曲はローカルのHDDに保存される。保存した楽曲は一般的なオーディオ機器のように再生できるほか、同時に3台までの携帯型音楽プレイヤーに転送できる。オーディオフォーマットがATRAC3のため、転送できる音楽プレイヤーはネットワークウォークマン「NW-MS77DR」などが対応する。USB経由のほか、マジックゲート対応メモリースティック(いわゆる白メモ)への転送も可能だ。

    購入した楽曲はローカルHDD内のDLフォルダに保存される

    CD購入の場合はHMVのページに接続、ダウンロード購入と同様の簡単な操作でCDを購入できる。検索できる80万タイトルのうち18万タイトルを在庫センターで常備しているため、24時間以内に発送できるという強みがある。HMVジャパンはもともと売り上げの17%をインターネット経由のCD購入で得ているそうだ。従来のHMVのサイトと同様、予約購入も可能。

    HMVジャパンのサイト。これはTOP50のCDチャート

    こちらは予約チャート

    アーティスト検索をしたところ

    アーティスト情報の詳細

    検索画面

    文字を入力すると予測候補が出てくる

    FMラジオ局との連携では、ラジオチューナー内蔵携帯電話にも搭載されている「NOW ON AIR」により、現在放映中のラジオ番組名と、その中で使用されている楽曲名を表示する。さらに過去の放映番組からも同様に使用した楽曲を検索でき、そこからMora、HMVのサイトでダウンロード、またはCD購入が可能になっている。気になった曲があった場合は「クリップ」を行うとその楽曲情報がHDDに保存され、あとから簡単に表示できるので、次々とクリップしていき、Moraなどで試聴、購入する、というラジオと音楽配信の連携が実現する。現在情報を提供しているのはJFN系列38局だけだが、全国53局のうち残る15局のFM局に対しても参加を呼びかけていく。

    ラジオ番組の情報が表示されるNOW ON AIR

    直前に放映された楽曲一覧

    最新のオンエア情報。番組中で使われた楽曲が表示されている

    クリップの機能を使うと、楽曲の情報をHDDに保存する

    クリップした楽曲リスト

    クリップした楽曲の詳細。ここからMora、HMVで購入できる

    NOW ON AIRでは過去のオンエア番組も表示できる

    番組を選び、そこから過去に流れた曲を選んでクリップしたり、といったことも可能

    オーディオ機器は4社4モデルが登場

    今回、サービス開始とともに提供される対応オーディオ機器は4社4モデル。1ビットオーディオアンプ搭載のシャープ「SD-AN1-S」、高級オーディオ風の外観を生かしたケンウッド「NZ-07」、5型TFT液晶モニタを標準装備するパイオニア「X-AM1」、PCのVAIOとも連携できるソニー「NAS-A1」の4モデルだ。

    シャープのSD-AN1-S。ディスプレイは市販の液晶TVを組み合わせている

    ケンウッドのNZ-07。付属のディスプレイはチューナー付きで、テレビも見られる

    パイオニアのX-AM1

    ソニーのNAS-A1

    リモコン

    メモリースティックスロットは全モデルに搭載

    ネットワークウォークマン

    いずれもHDDは40GBを内蔵。そのうち音楽ファイルや画像(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP)、Eメールデータなどのデータ保存領域は35.5GBになる。OSにはMontaVista Linuxを採用しており、CPUはx86系のものを搭載しているようだ。CDの情報を取得するGracenote CDDBも備えており、新譜などについてはネットワークからダウンロードすることもできる。ネットワーク経由でシステムソフトウェアをアップデートする仕組みも用意されている。

    そのほか、Webブラウザ、Eメールクライアントも実装されており、TVに接続すれば大きな画面でインターネットアクセスなども楽しむことができる。

    フォトアルバムで画像の閲覧が可能

    ネット経由でシステムソフトの更新にも対応

    きょう体前面、リモコンのインタフェースは各モデル共通となっている。リモコンは入力に携帯電話と同じ入力方法を採用。日本語入力には予測変換機能も搭載されており、この辺りは「携帯電話感覚」といえる。

    各種ネットワーク設定も可能

    ネットワークの状況を確認することもできる

    接続インタフェースは音声入出力1系統ずつ、アナログ(ステレオミニ)/光デジタル(光ミニ)兼用入力が1系統、光デジタル入力が1系統、S映像出力、映像出力がそれぞれ1系統などとなっており、さらにUSB端子×2と10Base-T/100Base-TX×1を備える。USB端子にMDプレイヤーを接続すれば、リモコンを使った操作が可能になる。

    価格はいずれもオープンプライスだが、ディスプレイの付属しないシャープとソニーの実売想定価格は9万円前後。NAS-A1の推奨ディスプレイは単体で2万円前後の価格であり、ディスプレイが付属するパイオニアとケンウッドのプレイヤーは実売で2万円程度高くなる見込みだ。

    オーディオ部には各社それぞれのこだわりや特徴があるが、その中でも特にソニーは、VAIO限定ながらもローカルネットワーク内でのPCとの連携を実現。VAIOに同梱されている「VAIO Media Ver.2.6」を利用し、PC内に保存した音楽データをネットワーク経由でNAS-A1に出力、独自の高音質アンプ「S-master」を搭載したオーディオ機器で音楽を聴くことができる。

    さらに、PCや家電メーカーなど17社が参加するDigital Home Working Group(DHWG)の仕様に準拠する方向で実装が進められているそうで、今後はVAIOだけでなく同仕様に準拠した製品であればNAS-A1と連携できるようにするという。MicrosoftもDHWGに参加しており、Windowsが対応すれば、Windows PCがすべてNAS-A1をクライアントとして利用できるようになる見込みだ。

    今回発売されるほかの3モデルについては、ネットワーク経由でのPCとの連携は考えられていないようだが、今後のバージョンアップや新モデルなどでそのあたりの機能が追加される可能性はある。

    エニーミュージックの今後

    「音楽配信と音楽ファンとの距離感を近づけたい」。エニーミュージックの野口不二夫社長はこう抱負を述べる。同社は今回、20日のサービス開始を前にイベントを開催、オリコン・エンタテインメントのオリジナル コンフィデンス副編集長・早川高志氏を司会とし、野口社長、レーベルゲート高堂学社長、TOKYO FMの林屋章デジタルコンテンツ局長、HMVジャパン青木洋平E-Commerce プロダクト&マーケティングマネージャの4人が、音楽配信とエニーミュージックの今後について語った。

    野口エニーミュージック社長

    早川副編集長

    高堂レーベルゲート社長

    林屋局長

    青木マネージャ

    その中で高堂社長は、Moraの提供楽曲が夏までに10万曲突破が見えてきた、と順調に拡大を続けている点を述べるとともに、米国のiTunes Music Store(Apple Computer)とは異なり、レーベル主導で配信が行われる点を強調。iTunes Music Storeの売り上げ7,000万曲も、米音楽業界全体の1~2%程度、として、音楽配信では大成功といわれているiTunes Music Storeも業界全体としてはまだ小さい、という認識を示す。

    米国ではCDのレンタル、特にシングルCDのレンタルという文化がなく、1曲ずつ購入していくスタイルが珍しかった、とiTunes Music Storeが好調な理由を推測する。逆にレンタルやシングルといった文化のある日本の方が音楽配信になじみやすい、と指摘。音楽配信が普及しない理由に日本の著作権を挙げる風潮には、「(著作権を)ゆるくしても日本では成功しない」とし、今回のAny Musicが日本に適したサービスであることを述べて成功への自信を見せる。

    HMVの青木マネージャは、Any Musicに対して、今後はCDだけでなくDVDも買えたり、Moraを見ていた人がHMVにアクセスしてCDが購入できたり、といった連携への期待も表明する。

    いずれの出席者も、Any Musicが音楽購入層の裾野を広げることへの期待を述べており、「音楽配信」に対する業界の期待の大きさが示されていた。

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