【レポート】

ウェアラブルとバリアフリーへの取組み - サイバーコミュニケーション2004

2 ウェアラブルによる障害者支援

美崎薫  [2004/05/18]

ファッションに続く今回の大きなテーマが障害者支援である。もちろん、単にウェアラブル機器の開発だけで解決できるはずなどない。今回のシンポジウムでも、あたりまえではあるが、この大きな問題を前にして行うべき行動は啓蒙にあることの確認に終始した。しかし、それはとりもなおさず「サイバーコミュニケーション2004」の本質的なテーマが単にコンピュータだけにとどまらないことを示唆し、あらためて参加者一人一人に、あるいはこれをお読みいただいている読者の方々にも、広く問題提起するものであったといえよう。

ユニバーサルデザインを広める困難

ユニバーサルデザインの機器や介護用品を使ってみると、健常者にとっても使いやすいと感じるものは少なくない。入浴用品などを見ても、片方の手だけでも使えるシャンプー入れや、カミソリなど、細かな工夫がされていることも多い。だが、そうした商品はまだ一部で、価格が高く取り扱う販売店も限られており、広く一般の目に留まる状況ではない。

ユニバーサルデザインの機器が広まれば、安くて使いやすくなる、ということがいわれ、それは正論だと考えるが、筆者自身実際に商品を買う場合は、商品のブランドや色、パッケージの形などに目を奪われることが多くて、ユニバーサルデザインであるかどうかまで考えていることは少ない。

逆に、ユニバーサルデザインの機器は、まず実用を優先して作られているので、ブランドはあまり知られておらず、デザインも実用性が重視されている。「ユニバーサルデザイン」という言葉があること自体、一般の商品のなかで、ユニバーサルデザインを取り入れたものは少なく、選択肢が限られてしまう現状を表している。

結局、道路/鉄道/交通などの社会インフラを変えていくことなども必要であって(場合によっては法律を作り強制力を持たせることも必要だろう)、単に機器ができたというだけで大きなインパクトになることは少ないだろう。

マルチなメディアでの講演

ユニバーサルデザインが健常者にとっても使いやすいように、今回ステージまわりでは多数のマルチメディア的な表現が試みられていた。例えば、発表者がプレゼンテーションシートを使いながら話をするのは、目と音声というふたつのメディアを使って表現しているわけで、口頭で話すだけよりはわかりやすいと考えられている。

プレゼンテーションシートは一般化しているが、今回はそれだけではない。手話の同時通訳がつき、さらに、発言をリアルタイムで文字化するという「要約筆記」チームがついていた。ウェアラブル機器で知られるXybernaut(ザイブナー)のCEOエド・ニューマン氏の講演のときには、英語/日本語の翻訳までついていた。ニューマン氏は、ステージで全身を使って講演を行い、立ち姿そのものが表現ともいえた。

聴衆は、その複数のメディアのなかから自分にあったものを選択して得ればよく、非常にリッチな情報環境であったといえる。

XybernautのCEOエド・ニューマン氏は、ウェアラブルコンピュータで自閉症の子どもを支援しているという

ウェアラブル機器がコミュニケーションを活性化し、自閉症の子どもがコミュニケーションをとるようになった。支援に成功したという

動画
手話の同時通訳も行われた(WMV形式 286KB 7秒)

マルチ画面によるプレゼンテーションと要約筆記

今回の要約筆記はマジックと長巻きのOHPシートで行われていて、非常に素朴な印象だったが、そのOHPシートへの書き起こしは、なかなかの職人芸であって興味深かった。チームは4人。ひとりがシートを押さえ、ひとりが筆記を行う。ひとりはあらかじめ用意したテクニカルタームのキーワードのシートをタイミングよく該当部分にはめ込み、もうひとりはとっさの事態に備えて待機している。

この4人のチームワークはなかなか見事で、ときには、ひとつの画面に同時にふたりが文章を書き込む、というような技を見せるのであった。このような臨機応変性、リアルタイムさをコンピュータの中に取り込むことはたいへんむずかしいものなのかもしれないと感じた。

とはいえ、コンピュータ系でも、たとえば、WISS2003では同様の作業を、大阪電気通信大学総合情報学部デジタルゲーム学科の魚井宏高教授らが2次元チャットシステム「Alice」を使って実現していた。

最近では、3月に都内で行われた「体験記録とその応用シンポジウム」(主催:NTTマイクロシステムインテグレーション研究所、産業技術総合研究所、東京大学先端科学技術センター)でも、プロジェクターをふたつ使い、メインのプレゼンテーションと同時進行で、キーワードの要約がサブの画面に出されていた。

このように、複数のプロジェクターを使ったプレゼンテーションが一般化していけば、単に聴衆が情報を受けとるだけというシンポジウムは、過去のものになっていくのかもしれない。

同時にふたりで要約筆記する専門家チーム。息がぴったり合っていた

右の方に手話の通訳者と、そのさらに右に要約筆記のチームがスタンバイしている

要約筆記のチーム。OHPを見ながら講演内容を要約し、その場で書き込むために濃いサングラスをかけている

「ウェアラブルファッションショー」などの言葉は、あらかじめシートが用意されていて、それを乗せることで速度の向上を計る

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