【レポート】
オープンソースWebブラウザとしておなじみMozillaの国内関係者が年に一度集う「mozilla.party.jp 5.0」が今年も4月18日に都内で開催された。今回はMozilla本体の話だけではなくオープンソースデスクトップ全般の話題を扱うということで、京都大学の末松千尋助教授による講演や、OpenOffice.org 日本ユーザー会によるセッションなど、Mozilla以外の話題が全体の約半分を占めるという形になった。
まずセッションの冒頭では、昨年米国でAOLからMozilla関連の資産を引き継ぐ形で設立された「Mozilla Foundation」の日本版として「Mozilla Japan(仮称)」が間もなく設立される予定であることがアナウンスされた。
既に日本国内におけるMozilla関連のユーザーコミュニティとしては、今回のmozilla.partyを主催した「もじら組」が存在しているが、もじら組はあくまで任意団体であり、そのためどうしても活動内容に制約を受けてしまうという問題があった。また旧Netscapeの日本法人が消滅して以降、企業内で利用されているNetscape/Mozillaブラウザのサポートが事実上行えない状態になっていたため、今回それらの問題を解消するために法人の設立に踏み切ることにしたという。
現在は5月中の設立を目指して準備中ということでまだ詳細は固まっていないようだが、テンアートニの喜多伸夫社長や元Netscape社員の桃井勝彦氏ら5人による設立準備委員会が作られており、今のところJPCERT/CCのような中間法人格を取得する方向で準備を進めているという。運営資金は基本的に会費制を考えているとのことだが、個人からはできるだけ会費を取らずに、有償サポートを受けたい企業に会員になってもらい、その会費で資金を賄う形態を考えている模様だ。この点について、準備委員会メンバーの一人である江後田基広氏は「米国のMozilla FoundationではAOLやIBM、Sun Microsystemsなどのような出資者がいたが、日本ではそのようなスポンサーがいないので……」と述べ、台所事情の苦しさを訴えていた。
Mozilla Japan設立後は、Mozilla Foundationや先月設立されたばかりの「Mozilla Europe」などと協力していく方向。またMozilla Japanができた後ももじら組は日本のコミュニティ組織として独立した形で存続し、Mozilla Japanはそれを後方支援するという関係になるという。まだ正式な法人の設立前ということで不明確な部分も多いが、それは順次明らかにしていく方針だということなので、今後に期待したいところだ。
続いて行われたセッションでは、OpenOffice.org 日本ユーザー会の可知豊氏、産業技術総合研究所でKNOPPIX日本語版の開発を手がける須崎有康氏などが登場し、それぞれ自らが行っている開発の現状などについて語った。
その中で目立ったのは、オープンソースを利用することによって生まれる欠点や問題点の話。まず可知氏はオープンソースを利用してマルチプラットフォーム・マルチランゲージといった水平展開が可能になった代償として「開発リソースが重複し、場合によってはどのモジュールを利用するか議論になる」「トップダウン的に開発リソースを振り分けることができないため、必要なモジュールがうまく揃わないことがある」「モジュールをどう分割するかなど、議論に必要なオーバーヘッドが大きい」といった問題があることを、自らの体験を元に語った。
また同氏は「コミュニティ間の水平性」についても言及し、「場合によっては各国のローカルコミュニティと世界規模の開発コミュニティとの間で利害が対立する場合もある」として、実際にOpenOffice.org 1.1.1(英語版は既にリリース済)において日本語版だけに大きなバグが見つかったため、現在日本ユーザー会側で独自にバグ修正・ビルドを行ったバージョンをOpenOffice.org本体の公式リリース版として配布してもらえるよう交渉中であるといった例を挙げた。同氏はさらに「同じような問題は、日本全体をカバーするコミュニティと地域コミュニティの間にも言える」と語り、今後地域コミュニティは場合によって地元ユーザーのサポートに特化するなどといったことが求められるのではないか、との見解を示した。
一方須崎氏はKNOPPIXの抱える問題点として「ライセンス問題で東風フォントが使えなくなったことに加え、プリンタドライバの品質が安定していないことやアプリ側の印刷インタフェースが統一されていないことなどで、印刷環境としては問題が多い」こと、また「JavaやAcrobat Readerに代表されるように、フリーソフトでも再配布不可の条件がついていたり、ディレクトリ構成の変更が不可なもの、学術目的以外での利用が許可されていないものなどがあり、KNOPPIXのCDに収録不可能なものが多い」ことなどを挙げた。
もちろんこれら以外にもオープンソースデスクトップ環境の普及のためにはいろいろと問題があると思われるが、技術的な部分での問題点は以前に比べるとかなり少なくなってきたと思われるだけに、今後はこれら技術面以外の問題点を一つ一つ地道につぶしていくことが普及のために求められるのだろう。
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