【レポート】

IDF-J Spring 2004 - 開発進むUWB、Wireless USB規格の現状と標準化

    佐藤晃洋  [2004/04/09]

    次世代の無線通信規格として以前からIntelが力を入れているものの一つがUWB(Ultra Wide Band)だ。Intelは過去にもIDF-Jにおいて何度かUWBシステムのデモを行っているが、今回はUWBを無線通信の規格に利用した「Wireless USB」の実現を目指し、今年2月に米国で行われたIDFで同社やNEC・Microsoft・HPなど7社により「Wireless USB Promoter Group」を設立したことを受け、現在までに固まっているUWBやWireless USB関連の規格について紹介が行われた。果たしてWireless USBの開発は現在どこまで進んでいるのだろうか。

    MBOA標準に従った1チップのUWBトランシーバICが登場

    まずWireless USBの物理層・MAC層として使われることが既に決まっている、MBOA(MultiBand OFDM Alliance)によるUWB標準の進捗状況だが、現在までに周波数帯域や変調方式などはほぼ固まってきているということで、その状況がIntelのRafael Kolic・Evan Greenの両氏より示された。

    具体的には、現在米FCC(連邦通信委員会)によりUWBでの使用が認められている3.1~10.6GHzの帯域を、528MHzの帯域幅を持つ14のサブバンドに分割した上で、そのサブバンドを3つずつまとめたグループ(Band Group #5のみサブバンドは2つ)に編成し、MBOA標準に対応したUWB機器ではこのバンドグループ単位で周波数を選択して通信を行う。また混信を避けるために、各バンドグループ内にある3つのサブバンド間で周波数ホッピングを行うほか、さらに時分割多重により1つのサブバンドにつき4台まで同時に通信を可能にしているという。

    そして通信速度は110Mbps・480Mbpsの2モードが定義されており、共に1サブバンドのみでこの速度が実現可能。現在のところ伝送距離は110Mbps時で最大11.4m、480Mbps時は同2.9mとなっている。この標準に従ったデバイスの回路面積や消費電力を試算した結果、90nmプロセスを使用した場合に回路面積は5平方mm以下、消費電力も200Mbps伝送時で約170mW程度と非常に小さいものになるとの結論が出たそうだ。

    MBOAの伝送パラメータ

    MBOAのバンドプラン。Band Group #2は802.11aなどとの混信の可能性がある場合はoffにされる

    伝送可能距離について示した図

    製造プロセスと回路サイズ・消費電力の関係の試算値


    今後の予定スケジュール

    実際その試算を裏付けるかのように、今回のIDF-Jでデモが行われた、イスラエルのWisairが開発したMBOA 0.8準拠のUWBトランシーバIC「UB501」は、チップの大きさは1cmにも満たず、また消費電力も「今回展示したものはプロトタイプのため数値は非公開だが、量産品では100mW程度になる見込み」(国内代理店を務めるイーコネクションズの南耕二氏)とのこと。

    ちなみにUB501は周波数帯として3.1~7.4GHz(8サブバンド)を利用するため、先程のバンドプランと見比べるとBand Group #3の途中で周波数帯が切れてしまいやや中途半端な印象を受けるが、これは「現在の仕様はMBOAでの仕様策定途中の形に合わせた結果であり、MBOA 1.0のバンドプランが決まり次第合わせた形に変更する」(南氏)とのことだ。


    WisairのUB501のデモにおける信号スペクトラム。今回は最大で7バンドを使用していた

    真ん中やや下に見えるのが「UB501」チップ

    WiMedia・WUSB・MBOAが協調、IEEEへのフィードバックを目指す

    Kevin Kahn氏

    また、基調講演に先だって行われたQ&Aセッションでは、同社のシニア・フェローとしてこれまで一貫してUWBの研究開発に取り組んできたKevin Kahn氏らが、現在のUWBに関する標準化動向について語った。

    まずIEEE 802.15.3aにおけるUWBの標準化作業とは別にMBOAを立ち上げざるを得なかった事情については「IEEEでの標準化がこれ以上遅れると、Time-to-Marketに製品をリリースすることができなくなる」と語った上で、MBOA 1.0の策定作業が終わり次第、再びIEEEに対して同仕様を標準化案として提案、再度IEEEでの仕様の統一を目指す考えを示した。またMBOAで分離して標準仕様を策定するというやり方については「Bluetoothの時もこれと同じやり方で標準を策定しており、別に特別なことではない」と語った。

    もちろんIEEEでの審議結果によっては、IEEE標準とMBOA仕様が完全に分離してしまう可能性も否定できないが、それについて同氏は「IEEEのメカニズムの中では、本来の標準とは別にサブセットとしての仕様を定めても良いことになっているし、MBOAには主要企業が参加しておりその他の業界からも支持を受けている」として、その点についてはさほど心配していないとの認識を語り、「別に標準に従うかどうかは各企業の自由だが……」と、MBOAが業界標準として利用されることに自信を示していた。

    またWiMediaなど他のUWB関連の業界団体との関係については、WiMediaが実施するUWB機器の相互互換性テストと認証プログラムにMBOAやWireless USB Promoter Groupが協力していく姿勢を示したほか、WiMediaやWireless USB・ワイヤレス版のIEEE1394などの規格間でPHY/MAC層の伝送方式を統一したいとの考えを披露。これが実現すると、IEEEにおける標準化でMBOAと対立しているDS-CDMA陣営(モトローラ、XtremeSpectrum、CRLら)をおさえて、MBOA標準がこれらの規格の物理層・MAC層の標準として採用されることになる。

    最後に同氏はMBOAについて「今後各国でUWBに関する規制内容が決まってくれば、それによってバンド幅などが(国によって)変わってくる可能性もあるし、将来的に10GHz以上の帯域がUWBで利用可能になれば、さらにバンド幅を追加する可能性も考えられる」と語り、各国の行政当局との連携を図っていく姿勢を改めて示していた。

    Wireless USBとWiMedia、MBOAらの関係を示した図。このようにレイヤごとに分担して作業を行う

    IEEEとMBOAの関係を示した図

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