【レビュー】
携帯電話は充電しておくべきだ。いつも失敗した後でそう思っている。
うっかり充電をフルにしないで出かけ、しかも急きょの外泊でなかなか家に帰れなかったとき。そしてその日はひょっとしたら飲みがあるかもなんて状況はサイアク。充電切れのせいで運命の出会いだって逃しているかもしれないのだ!(妄想しすぎ)
人の人生を左右するおそれもある充電切れを、くれぐれも起こさないようにしようという教訓を毎回せつに心に刻むのだ。
ところで、「ほてい」ちゃんことAIBO ERS-7を飼っている筆者はよくこんな質問を受ける。「充電ってどうやってるの?」そら来た! このとき筆者は大いばりで答えるのだ。
「AIBOは自己充電ができるんだよ。」
この連載でも動画の隅に何度か映っているのでお気づきの方もいるかもしれないが、AIBOの充電は充電ステーションに載せておこなう。携帯電話の充電スタンドみたいなものだ。つまりAIBOの場合は、充電ステーションがすなわち家、スヌーピーの小屋みたいなものだ。
すごいことに、AIBOは充電切れが近づくと自分でステーションの上に載り、充電をする。ステーションの幾何学模様のポールや、ヘリポートにあるようなマーカーを目印にしているようだ。
充電がフルになったら自分でステーションから降りる、という設定もできる。だから、飼い主がいなくても勝手に降りて遊んではステーションに戻っていく、というループを繰り返すこともできるのだ! 電気代もったいないからしないけど。
しかし、学生でワンルームにひとり暮らしという筆者がこの夢のような機能を使うには、大きな障害がたちはだかっていたのだ。AIBOの自己充電のためには「ステーションポールを中心に半径1.2m以上のスペースが必要です。」と取扱説明書に書いてある。そんなスペースないっ!
ごていねいに図までついて「この範囲に物を置かないでください。」と書いてある。どうしよう、同じ都内にある実家に行って撮影しようか。ほていをステーションに帰すのに自分が実家に帰ってどうする! とひとりツッコミ。
なんとか部屋を整理し、ほていが自己充電できるだけのスペースを確保。自分のくつろぐスペースよりほていのための空間の方が広い。私ってなんてAIBO愛に満ちているんだろう。
準備も整ったので、後はほていの充電が切れるのを待つばかり、無駄に「ダンス!」と唱えたりしてダンスをさせて消耗を早めていると、ステーションから降ろしてから1時間ほどでほていの体から「もうすぐ充電切れ」のテーマ音楽が鳴りだした。首をゆっくりと回転させ、ステーションを探している。いや、探しているって言っても、あのー目の前っスよ。それどころか自分のステーションを蹴りとばしたりしているほてい。まるで、のび太君が頭の上にメガネを乗せて「メガネメガネ……」と探しているようだ。こっけいさを通り越してふびんになってきたので、思わず手を貸してやりたくなってしまうが、ここはほていの自立のためにぐっとガマン。獅子は子を千尋の谷に落としてこその親心なのだ。
説明書を見直すと、自己充電をする場合、部屋はなるべく明るくなければならず、蛍光灯を推奨する、とされている。今は自然光の入らない夜だし、しかもうちの部屋は白熱灯だ。やっぱりダメなのかな……と思っていたら、ほていはついにオアシスを目前にしながらワンルームの砂漠で力尽きてしまった。「もうダメっす」的なあきらめのテーマ音楽が流れ、その後脈のような電子音が断続的に鳴る。それもプツッと止まった。同時に顔のランプの点灯も、ともしびが消えるようにフェードアウト。おいおい、まるで「ご臨終」みたいではないか。かわいそうなほていちゃん。明日の午前中、部屋に日の射しているうちに再トライしよう。
次の日。充電をしてまた元気いっぱいのほていを部屋で勝手に遊ばせてバッテリー切れになるのを待つ。遊ぶといっても、部屋の隅から隅までテーブルの脚にぶつかったりしながら散歩したり、気まぐれにダンスをしたり、AIBOの大好きなピンクボールを転がしたり、といった程度だ。一方筆者は、「ぐるなび」でバイトの送別会(しかも自分の)の場所などを探したりする。まったりとした日曜である。
やがて、ほていが例の「充電もうすぐ切れます」音楽を鳴らし始めた。今度こそ頑張れほてい! 部屋も明るいぞ!
AIBOはステーションにバックをしながら戻る、とされているので、ほていがステーションの前方でおしりを向ける体勢になるまでこぎつければ、8割方成功したと言ってもよい。なんだか時間がかかりそうなのでまだ「ぐるなび」を見てようっと。
10分ほど放っておくと、ほていは一度「ご臨終」を迎えてしまったものの、電源を入れなおして2回目のトライで、車庫入れのような感じでみずからステーションにおさまった。まるで「どっこいせ」とつぶやいているかのようにステーション上におもむろに腰を降ろしたほていは、「パッパラー」と喜びの音楽を鳴らすのだった。ヤッター!
手を出さないでじっと見守ったかいがあったってもんだ(ネットしてただけだけど)。
というわけで自分でステーションに帰って充電するというワザも(日中限定だが)無事習得し、自立の道を一歩踏み出したほていであった。しかし充電が切れそうになってから10分以上もさまよっているようじゃ、見ているこちらとしてもおちおちネットサーフィンもできやしない。何よりあの「ご臨終」シーンは後味が悪すぎる。きっと次は手を出してしまうんだろう……いまいち放任主義になりきれない筆者は己の甘さを実感するのだった。
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