【レポート】

レッシグ教授来日、クリエイティブ・コモンズの利点とは?

    佐藤晃洋  [2004/03/23]

    3月19日に都内にて、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン主催の「レッシグ教授とのオープンミーティング」が開かれた。昨年12月に続いて2回目となるこのオープンミーティングでは、Creative Commonsライセンスの提唱者として知られるLawrence Lessig教授による講演のほか、日本国内で実際に同ライセンスを使用してコンテンツを公開している実例の紹介などが行われた。

    著作権法も技術の進歩に合わせて改正が必要

    Lessig教授は、不自由な市場ではこのように自由な市場に比べ発展が大きく阻害されると主張

    冒頭で講演に立ったLessig教授は、まず米国における写真の例を挙げ「安価な写真技術が発明されただけでなく、裁判所が(一般の人に関する)肖像権を認めなかった(=自由に写真を撮れる)ことで、初めて写真市場は離陸した」「もしこのときに裁判所が肖像権を認めて、自由に写真を撮れないような規制が設けられたならば、おそらく写真市場は立ち上がらなかっただろう」と述べ、自由が与えられることにより規制が設けられた状態に比べはるかに大きな市場が形成されるとの考えを強調した。

    また著作権者の許可なしにコンテンツを二次利用する、いわゆる「海賊行為」についても「現在の技術を持ってすれば、民主的なやり方で容易に政治的表現が可能になり、なおかつ文化をRemixできるだけのポテンシャルがある」として、これらの可能性を否定するべきではないとの考え方を示した。

    とここまでは従来の同氏の主張の繰り返しだが、この後同氏は「著作権法は非常に重要で不可欠な法律だが、これは既存技術に照らして作られた法律である」「技術の進化に合わせて法律も変化しなければならない」と述べた上で「どんな法がクリエイターにインセンティブを与えるか、あるいは進化を促進し競争を刺激するのかといった問題に取り組むべきなのに、政府担当者の答えはいずれもNoである」と語り、特に昨今、著作隣接権の強化に動く傾向が強い各国政府における知的財産権関連の担当者の動きを批判した。

    そして同氏は「真の自由な文化の実現のためには(Creative Commons)プロジェクトの努力だけではなく法律の改正が必要だ」「Creativityのための負荷が増大するのを防ぐためにも法改正は不可欠」と述べつつも「私たちは直接政府レベルでこの動きを進めることが(今のところ)できない」として、「我々はSocial Projectとして、自由についての考え方を行動で示す必要があり、Creative Commonsにはそういった動きの助けとしての一つの役割がある」と語り、Creative Commonsに参加することが法改正に向けた支援活動につながるとして出席者に同プロジェクトへの参加を改めて呼びかけていた。

    具体的に著作権法をどう変える?

    講演後の質疑応答では、まず具体的に同氏が考える法改正の内容についての質問に対して「一番シンプルな方法は、コンテンツのどの部分がPublic Domainであり、どの部分がそうではないのかを自由に認識できるようにすることだ」と語り、一つの私案として「著作物の発表後50年が経過した時点で、さらに著作権法の保護を受けようとするコンテンツについては1コンテンツに付き1ドルを支払うよう法を改正する」という案を示した。同氏は「これにより(世の中に出回っている)コンテンツの8~9割は、発表後50年経過時点でPublic Domainとなるのではないか」と予測しつつも、「これだけのわずかな要求でさえもコンテンツ業界は認めようとしない」と、コンテンツ業界の対応に不満を漏らした。

    会場からはこの私案に対し「甘すぎる」との意見も出たが、同氏は「これはあくまで第1段階であり、この一歩を相手に納得させられれば、あとは更新料を高くしたり最初の保護期間を短くしたりすることは容易だろう」と述べ、もしこの改正が実現すれば、将来的にはさらに著作物の保護を弱める方向に持っていきたいという意向を示した。

    また別の参加者からは「著作物のレベルによって保護内容を変えるような考え方はどうか」との意見も出たが、同氏は「著作物のクラス分けは非常に難しいし、法律を複雑にすると弁護士を雇うのが大変(笑)」として「もし私が法律を書くのであれば、法律そのものはもっと簡素化して、その代わり(著作物の保護を求めるための)手続きを増やす方向で考える」「(著作物の)保護期間は最大25年くらいがいいのではないだろうか」との考えを披露した。

    いわゆるP2Pによるファイル交換ソフトへの対応についての質問には「P2P問題を解決することそのものは目的とはしていない」と語りつつも「合法的に共有してもよいコンテンツを識別しやすくすることには興味がある」「現在はMP3ファイルに埋め込む形でCreative Commonsライセンスのマーキングを行う方法を検討しており、既にMorpheusと共同でそれに対応したクライアントの開発に着手している」と述べ、「(P2Pに対しては)アクセスブロックの形で対応するよりも、コンテンツにマーキングして識別しやすくするほうがよいと思う」との考え方を示した。

    Creative Commonsで今のところ便利なのは「フォーマットの変換」?

    講演の後に行われた、Creative Commonsライセンスを実際に利用しているユーザの活動報告には、4名のユーザが登場し、実際にCreative Commonsライセンスを使ってみた経験などについて語った。

    この中で目に付いたのは「Creative Commonsライセンスを利用すると、ユーザ側で利用目的に応じて自由にファイルフォーマットなどの変更が行えるのが便利」との意見。例えば法律系のVNI(Virtual Net Idol)サイトとして有名な「真紀奈」の例を取り上げた発表者は、「真紀奈」のサイトに某雑誌で行ったLessig教授のインタビュー記事をPDFフォーマットで掲載した際に、某掲示板で「PDFは重いから何とかしろ」との意見が出ると、また別のユーザが勝手に同記事をHTMLに変換してくれたことについて「真紀奈」氏が「公開した側もびっくりした」と述べていた、とのことで、「真紀奈」でもそのHTMLファイルを利用することができたことを利点の一つに挙げた。

    また自作短歌をWebで公開している平山雅浩氏は、その短歌を詩の朗読会で使用したという女性から自分の短歌をMS-Wordフォーマットできれいに編纂したファイルを受け取った話や、やはりWebで公開している短歌がとある所で七夕の短冊として使用されたという利用例などを披露し、Creative Commonsライセンスを採用したことによりユーザ側で自由にコンテンツを二次利用できるメリットを示していた。

    平山氏の短歌をWordフォーマットで編集したもの。女性から送られた原本からは著作権表示などが若干変更されているとのこと

    GLOCOMの宮尾尊弘氏らが作成した『My Life Changed Completely』の画像

    このように日本国内でも徐々にCreative Commonsライセンスを利用した著作物の利用が始まっている様子が垣間見られたが、この動きがこれからどこまで大きくなっていくかが今後の課題だといえるだろう。

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