【レポート】
情報処理学会・3日目に行われたのが「次世代情報家電」をテーマにした特別トラック。中でも午前中には、松下電器産業の櫛木好明氏、経済産業省の福田秀敬氏の二人が、いわゆるネット家電の普及に向けてどのような問題があるかについて、それぞれの立場から講演を行った。
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櫛木好明氏 |
最初に登場した櫛木氏は「ネット家電は今までにないほどのパラダイムシフトであり、1,000年に一度クラスの大変革ではないか」と語り、その理由として「家電が一つのモノ・機能だけではなく、背後にある知識データベースとつながって動くようになる」ことを挙げた。
その上で過去から現在にかけて家電にコンピュータが浸透してきた歴史を振り返り、VTR→記録型DVD、アナログTV→デジタルTVなどと主力商品の売上が急激にシフトしている様子を「現代は『クロスの時代』だ」と表現。そして今後ネット家電に求められる3つの要素として同氏は『エンターテインメント』『コンビニエンス』『セーフティ』を挙げ、それを実現するために「次の新サービスはもっとアプリケーションとリンクしたものになる」「次の時代は(機器同士がネットワークで接続され)何でもマルチに利用できる『サービスバリューチェーン』を目指す」と語った。
また同氏は「世代によって必要とされるサービスは全く異なるが、その度に製品を買い換えなければいけないのではネット家電は普及しない」とも述べ、ユーザの年齢が高くなるにつれ、ハードはそのままに自分の必要なサービスを更新できるように「家電におけるバージョンアップが必要になる」との見解も示した。
その上で家庭内ネットワークの技術的な問題点である「設定なしにつながらない」「配線が面倒」などの問題を解決するため、同社では「ホームゲートウェイ」「IPネット家電」「ネット家電」による3層構造の基本モデルを考え、その中で最下層に位置する「ネット家電」を4つのドメインに編成し、ドメイン毎に標準プロトコルを策定するというモデルを提案。また具体的な技術検証についてはエコーネットコンソーシアムなどを通じ、外部からの攻撃試験も含めた接続試験などを実施していく方針を示した。
将来的な課題としてはプライバシー保護やさらなる高速化への対応などに加え、同氏はAVコンテンツをいつでもどこでも見られるようにするために必要な「映像・音声のフォーマット変換」や、リモートによる自動メンテナンス、家庭内に溢れるリモコンを一本化するために必要なエージェント技術などを開発していく必要があると語っていた。
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福田秀敬氏 |
続いて登場した福田氏は、最初に「e-Life構想」を取りまとめた行政の立場から「国民生活に直結する問題をどうやって解決するか」「日本のメーカーの競争力をどうやって回復させるか」という2つの視点から問題点を指摘したいというスタンスを示したが、講演の大半はユーザが持つ情報家電への不安感に関する問題に費やされた。
まず同氏はユーザの視点から「情報家電は若い人には面白いアイテムだと思うが、間もなく定年を迎える団塊の世代のような購買力のある層にとっては『複雑怪奇なもの』である場合が多く、果たしてそのようなものを(それらの人たちが)求めているのか」「小売店の人たちと話をしていると、シルバーの方々に適当な製品が届いてないのではないかという印象を受ける」と語り、情報家電の普及には老年層をいかにして取り込むかが重要との認識を示した。同氏は「一流の技術と二流のビジネスモデルの組み合わせよりは、二流の技術と優れたビジネスモデルの組み合わせの方が往々にして成功するケースが多い」とも述べ、得てして技術先行で物事が語られがちな情報家電の将来像に対して警鐘を鳴らした。
その上で同氏は「私は3~5年という短期間では家電が全てネットワークにつながるとは思わない」「(データのやり取りに)物理媒体を介したほうが、消費者からすると安心して扱えるのではないか」と語ったほか、「ネット家電になって月額のサービスレンタル制が普及するという意見があるが、多くの消費者は従来どおりモノにこだわる購入行動をとるのではないか」と述べた。同氏はさらに野村総合研究所が2002年に実施したアンケートの結果を引用しつつ「消費者の反応は割と情報化自体にネガティブなものが多い」として、これらユーザが情報家電に対して抱く不安を取り除かない限りゴールは達成できない、との見解を示した。
同氏はBSデジタル・地上デジタル放送でこの4月から導入されるコピーワンス信号の例を挙げ「そもそも家庭の消費者はコピーワンスを理解していない」「少なくとも家族が録画したものを家族内では自由にコピーしたいというのが自然な欲求であり、そのために本来は『誰が録画したものを、誰が所有する機器で再生するのか』をきちんと確認するのが筋ではないか」と述べ、このような消費者の不満をどのように吸い上げるかという仕組みづくりが重要だとの認識を示した。
ただ同氏は「米国では自動車におけるJD Powerのようなコンシューマレポートを作る機関が数多くあるが、幸か不幸か日本ではラルフ・ネーダー(米国の消費者問題活動家)は育たなかった」「いろいろ考えて見たが、メディアは広告の関係があり突っ込んだ批評ができないし、研究所は『論文に関係がない』といって取り合ってくれない」とも語り、消費者の意見を集約する難しさが顔をのぞかせる場面もあった。
最後に同氏は「情報家電には生活を豊かにするポテンシャルがあり、日本のメーカーの競争力を上げる要素もある」とまとめつつも「消費者がそれらをどう使おうとしているのかをつかみ、マーケット主導で考えていかないといけない」「技術だけでは絶対に解決できない問題があり、セキュリティ・プライバシーの議論も合わせて解決を図っていく必要がある」と語り、情報家電を消費者中心の立場で開発していく必要性を改めて訴えていた。
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