【レポート】
一般講演では「InverseDirector」「時空間ポエマー」「記憶する住宅」の3発表からなる「映像と記憶」セッションが、早朝にもかかわらず質問も多く出て盛り上がった。
コンピュータの進化は著しく、とくに大容量のストレージデバイス、すなわちHDDの大容量化によって、人生をまるごと記録するというようなことが夢ではなくなりつつある。
写真はコンピュータでの記録と相性がよく、最近は音声や映像の記録も比較的容易になってきている。たとえばHDDレコーダーなどを使うと、いつのまにかとても見ることができないくらいの映像を蓄積してしまう、ということが日常的に起こってくる。事実、筆者の使うHDDレコーダーには、わずか1か月ほどで30番組が蓄積され、もはやにっちもさっちもいかない状態だ。こうした時代において、その映像や写真をどうやって活用すれば記憶をうまくサポートできるのか、ということに、注目が集まってきているのは当然といえよう。
言うまでもなく、仮に人生70年を映像のままで記録することができるようになったとしても、それだけではまったく意味がない。その映像を見るのに、もう一生ぶんの時間が必要になってしまうためだ。そこで、その体験をどう整理し、要約し、効果的に提示するのか、というところが問題になるわけだ。
東芝の青木恒氏が作り出した「InverseDirector」は、テレビのバラエティ番組やニュースなどを効率的に要約するシステムだ。「InverseDirector」を使うと、ニュースなどでは項目ごとに、クイズ番組などではクイズの出題ごとにサムネイルを表示して、そのカットだけを抜き出して見る、というようなことが可能になる。
電気通信大学大学院の上田紀之氏らのグループは、GPSカメラつきの携帯電話を用いて、空間上に写真をマッピングしコミュニケーションを促進する「時空間ポエマー」を発表した。写真と地図とはたいへん相性がよい。とくに、GPSを併用して地図上に写真を自動的に割り振ることができると、あたかもその場に立っているような気持ちをよみがえらせることがたやすくなる。
「時空間ポエマー」では、実際に床面に地図と写真を提示してシステム展示とすることが多いそうで、壁面に表示するのとは異なり、その場の感覚を臨場感をもって体験できるのだそうだ。
現在のところイベント的な使われ方が中心だというが、逆に地図サービスにこのような写真がつけられるようになっていくと、地図-写真-掲示板という立体的なコミュニケーションが可能になっていくかもしれない。地図サービスを提供している企業に期待したいところだ。
もっとも、位置情報と写真などの付加情報の組み合わせという仕組みは、とくにめずらしいものではない。「スペースタグ」などすでに複数のサービスが出てきてはいるのだ。それらがまだ本格普及に至らない理由は、もしかすると全空間というのは広すぎて、多少の情報では情報がたくさんあるようには見えてこないということなのかもしれない。
情報というのは、それなりに数がないと思うようなものが見つからないものである。たとえばデートで行く店を探そうとして検索して1軒しか店が見つからない、というような感じでは選択の幅が狭すぎるのであって、やはり数軒くらいはあったほうが比較しやすいものだろう。
地図と写真の組み合わせも、地図の上に写真があるからおもしろいのであって、地図だけ見ても新しさはない。日本全国で数件ずつのデータが出てくるようにするのだとしたら、相当な枚数の写真を用意する必要があるのであって、そのようなことは一朝一夕にできることではない。そうだとすれば、当面このような地図サービスは、特定の空間、たとえば駅とか町興しとかいうところで使われるものなのかもしれない。
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