【レポート】

独創的なインタフェースのアイデアが光る「インタラクション2004」

2 熱で絵を描く

    美崎薫  [2004/03/15]

    対話発表は、会場でとられたアンケートによって集計され、即日ベスト賞が決定される。

    初日は、とくにインタフェース的に優れていて、会場でも話題となっていた大阪大学大学院の岩井大輔氏、佐藤宏介氏の「熱画像と熱メタファによるインタラクティブ描画システム Thermo-Painter」、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の樋川直人氏、牧野真緒氏らによる「作曲・演奏支援システム The Music Table」などがベストインタラクティブ発表賞を受賞した。

    音をタイルで

    「The Music Table」は、タイル状のオブジェクトを使って作曲や演奏を行うシステムだ。タイル1枚がひとつの音符であり、テーブル全体が楽器と楽譜を合わせた仕組みになっている。テーブルの上のほうにタイルをおくと高い音、手前のほうに置くと低い音となる。置いた音符は左から右に演奏されるというのが基本的なルールである。

    タイルを回すとボリュームを変えることができ、複数のタイルをつなげると和音にすることができる。音の状態はすぐにスピーカーから再現できるほか、ディスプレイにも状態が表示されるので、五感を刺激される。

    ユビキタスコンピューティングの時代には、キーボードやマウスでないインタフェースも使うと考えられるが、「The Music Table」で使うのは本物のタイルそのものである。タイルをテーブル上に広げると、音楽を作り出すことができるのだ。タイルが実体を持った本物であるというところが、ユーザーにとってなじみやすい。

    タイルを無造作に投げる

    画面ではタイルの上に虫が躍る

    テーブルの正面に設置されたディスプレイには、その本物のタイルの上に、音符を示す虫がリアルタイムに映像化されている。このような手法を、拡張現実感(Augmented Reality)と呼ぶ。ソニーCSLの暦本純一氏の一連の研究がよく知られている。このディスプレイ上の虫は、音の長さと大きさを示していて、音楽に合わせて踊っている。音の長さは虫の体長で示され、音の大きさは背中にあるトゲトゲで示される。

    樋川氏がタイルを放りだす手つきは、カジノのディーラーがカードを配る手つきにも似ていて、マジカルで魅了されることがある。テーマ、使い勝手、表現力を総合的に見ると、まさにベストといえる研究発表だ。

    ATRの樋川直人氏

    「The Music Table」の基本操作

    熱を感知する半透明のスクリーン

    熱画像と熱メタファによるインタラクティブ描画システム「Thermo-Painter」は、半透明のスクリーン上で落書きができるツールである。半透明であるため、裏から見ると透けていて、正面から見るとぼんやりと光って見える。その独特の存在感に、会場では人だかりができていた。ブース形式のシビアなところは、人気のある発表とそうでない発表が一目瞭然にわかってしまうことである。つまり人気があるところには人だかりができるのだ。

    「Thermo-Painter」は、スクリーン上で手を動かすと、その手の形に絵を描くことができる。これは、スクリーンの下に赤外線カメラが設置され、室温と違う熱物体を感知するためである。感知するためには温度差があればよく、手のほかにお湯に浸した筆などでもよい。透明のお湯に浸した筆で絵を描くとスクリーンに色がつく、というのは、直感に微妙に反していておもしろい。

    人だかりとなった「Thermo-Painter」

    手の温度に反応して絵を描ける

    寝ころんでぜんぶ記録

    アート性に勝る先の2発表のために賞こそ逃したが、会場で話題となっていたのが中京大学大学院の近藤秀樹氏、三宅芳雄氏による「作業履歴の記録システム NecoLogger」であった。

    「ネコロガー」というだけあって、「妻が描いてくれました」(近藤氏)という「こたつ猫」風の猫がキャラクターとして使われているが、このシステムがすごいのは、コンピュータを操作した履歴をぜんぶ記録している、ということにある。操作記録は、XMLファイルと画面クリップファイルからなる。単にコンピュータを操作すれば、もうそれだけでXMLファイルで日誌ができてしまうのであった。

    中京大学大学院の近藤秀樹氏

    「ネコロガー」。作業ログをとれる。画面クリップも併用すると、1カ月で120~130GB程度になるという

    最近、このような記録が「ぜんぶ系」と呼ばれることがある。実際に使われているものとしては、WeblogやWikiなどの日記ツールがあるし、研究ベースでは、ソニーCSL暦本純一氏のタイムマシンコンピューティング、東京大学の廣瀬通孝氏、上岡玲子氏、大阪大学の塚本昌彦氏、奈良先端科学大学の河野恭之氏らの各種ウェアラブルシステムや、NTTマイクロシステムインテグレーション研究所の野島久雄氏らの「思い出工学」などがある。

    文科系の展示としては、国立民族学博物館の佐藤浩司氏の「ソウルスタイル2002」があり、古くは1970年代から行われてきたシィー・ディー・アイの疋田正博氏らによる「生活財保有調査」がある。

    現代では、なにからなにまでまるごと記録してしまうということが、大容量ディスクなどの登場によって容易に可能になってきているのである。それによって、自由に過去に戻ることができるわけで、その時代になにをどうするか、というのがテーマとなっているのである。

    会場で大反響を呼んだ「ネコロガー」は、4月にはリリースされるということ。使ってみたいソフトNo.1である。

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