【レポート】

情報処理学会第66回全国大会 NFCとEthernetの標準化動向

佐藤晃洋  [2004/03/11]

情報処理学会第66回全国大会・2日目には、最近の情報処理関連規格の標準化動向について解説する「標準化セッション」が開かれた。中でも午前中の「ISO/IEC/JTC1/SC6における標準化トピックス」では、最近話題の多い近傍無線通信プロトコルに関する話題や、Ethernet関連規格の標準化動向などに関する解説が行われた。

ソニーの「NFC」は早期のISO標準化を狙ってECMAに

最初にご紹介するのは、ソニーの高山佳久氏の講演。同氏はICカードやRFIDなどとの絡みで注目を集めている、同社が中心になって開発した無線通信プロトコル「NFC」に関する標準化の状況を語った。

まず同氏はNFCを開発したきっかけについて、「自分の手の届く範囲での無線通信を可能にする、双方向・上下対称なプロトコルを作りたかった」と語った上で、NFCが同社の「FeliCa」などのICカードと結び付けられて語られることが多い現状に対して「別に新しいICカードの規格を作ろうとしているわけではない」と述べた。

そして同氏は現在策定されているNFCのプロトコルとして「NFCIP-1」「NFCIP-2」の2つを紹介した。まず「NFCIP-1」は周波数帯として13.56MHzを使い、電磁誘導方式によって通信を行う「変調方式や符号化、転送速度などを規定した、主にNFCの物理層を規定するプロトコル」(同氏)。同氏によれば同規格ではデータ伝送に使用するトランスポートプロトコルについてはあまり厳しい縛りを加えないようにしているほか、「一般の人が直感的・感覚的に考える『近距離』という概念を大事にするため、あえて具体的な距離の範囲の定義は行わない」などの配慮が行われているという。

それ以外には「データレートや通信距離については、あえてデータレートを速くしない・通信距離を短くするという風にしたほうが価値がある」ということで、NFC自体は比較的低速・近距離なプロトコルとする代わり、NFCをきっかけとしてさらに高速な通信が必要な場合は容易に他のプロトコルへハンドオーバが行えるように配慮を行ったとして、講演でも具体的にNFCとBluetoothの連携の例を挙げ説明を行った。一方「NFCIP-2」は、NFCIP-1に加えてICカードの国際標準であるISO/IEC 14443、ISO/IEC 15693などの規格も包含したもの。

NFCIP-1/2は既にECMA(欧州電子計算機工業会)において「ECMA-340/352」として標準化が行われており、NFCIP-1はISOにおいても「ISO/IEC 18092」として標準化が完了している。この点について同氏は「ECMAは(ISO/IEC JTC1における)Category A団体に当たるため、ECMAで標準化が完了したものをISOに持ち込めばFast Track Procedureによって早期にISO標準とすることが可能だ」と指摘した上で「私の知っている手順で最も早くISO標準を成立させられそうな方法を選んだ」と、同規格の標準化の舞台としてECMAを選んだ理由を語った。

高速Ethernetの標準化の動向は?

同セッションからはもう一つ、日本IBMの杉山秀紀氏による講演「高速イーサネットの標準化動向」をご紹介したい。同セッションの大半はこれまでのEthernet、IEEE802.3規格の変遷などをたどったり、IEEE標準とISO標準(ISO8802-3)、JIS標準(JIS X 5252)との間の差に関する話題などに費やされたが、講演の最後では現在策定中のドラフトに関する話題が紹介された。

まず802.3ah Task Forceは、「Ethernet in the First Mile(EFM)」の別称で知られる、ADSLなどの技術を応用してEthernetベースのアクセス網の標準化を目指すグループ。杉山氏によれば、直近のDraft 3.0はかなり内容的にまとまってきているということで、標準化も比較的近そうな雰囲気だという(現在はさらに新しいDraft 3.1がリリースされているようだ)。

次に802.3ak Task Forceは、10G Ethernetの中でも「Twinax Cable」と呼ばれる同軸ケーブルを4対使用して10Gbpsの伝送を実現しようというもの。こちらは10G Ethernetとしては初めて光ファイバ以外の媒体での伝送を可能にするもので「同一ラック内のサーバの接続など、光ファイバ接続ではコスト的に負担が重いケースを想定している」(同氏)とのことだが、それだけに伝送可能距離は最大15mとかなり短め。

さらに10G Ethernetでは、いわゆる一般的なツイストペアケーブルで10Gbps伝送を可能にする「10GBase-T」も忘れてはならない。こちらは現在のギガビットイーサネット同様、最大伝送距離は100mを目標としている。またケーブル条件については、当初は現在一般的なカテゴリー5ケーブルの利用を想定していたものの「今もカテゴリー5は視野に入れているが、いわゆるBit Error Rateなどの条件がかなり厳しくなる」(同氏)とのことで、現在はカテゴリー6以上、もしくはカテゴリー7に絞った形での標準化も検討されているようだ。なお同氏はStudy Groupとしてこのプロジェクトを紹介したが、このプロジェクトは先頃「802.3an Task Force」への格上げが決まったばかりであり、いよいよ本格的に標準化が動き出すことが期待される。

これ以外にStudy Groupとしては、現在のマルチモード光ファイバを利用した10G Ethernet規格が実際には使いづらいとの声から誕生した「10Gb/s on FDDI-grade MM fiber Study Group」、そしてEthernetをいわゆるブレードサーバなどのバックプレーンバスに利用しようという「Backplane Ethernet Study Group」の2つが存在する。ただ前者はともかく、後者については「IEEE802委員会は基本的にネットワーク屋の集まりであり、バスの専門家が少ない」(同氏)という問題から、今後同グループが存続できるかどうかは疑問視されているという。

このように現在は、主に10G Ethernetに関連した標準化作業が主であり(Backplane Ethernetも基本的には10G Ethernetに立脚した形での標準化を目指している)、それ以上の高速化というよりはまず10G Ethernetを多様な環境で使えるようにすることが優先されている様子がうかがえた。

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