【レポート】

情報処理学会第66回全国大会 ロボットの今と未来

2 ロボットの未来像とその課題

    山田久美  [2004/03/10]

    基調講演の後には、パネルディスカッションが行われた。テーマは「コミュニケーションロボットがもたらす未来像」で、東京大学の佐藤知正氏、電気通信大学の高瀬國克氏、テムザックの高本陽一、東芝の土井美和子、東京大学の廣瀬通孝氏の5名が参加し、基調講演を行った萩田氏が司会進行役を務めた。

    まず電通大の高瀬氏が、社会や人間の暮らしの中におけるロボットについての研究内容を報告した。

    1983年頃から、危険な場所で人間に代わって作業をさせるため、ネットワーク機能を持ち、遠隔操作できる作業用ロボットが登場してきてはいたが、遠隔操作は実際に人間が作業を行うよりも10倍も疲れる作業だったという。その問題を解決するためには、ロボットにある程度の自律が必要だということで、まず取り組んだのが、ロボットに"自分は今、どこにいるのか"という環境認識をさせることだったという。これまでロボットに環境認識をさせるためには、環境自体をある程度限定しなければならず、それでは利用範囲が限られてしまう。

    環境認識の壁をどう打ち破るか

    その打開策として、現在はIDタグに注目が集まっているという。IDタグを環境に付与することで、移動するロボットの自己位置を広範囲にわたり認識させようというわけだ。しかし、セキュリティやプライバシー侵害の問題などクリアしなければいけない課題も数多くあるようだ。

    また同氏は、現在企業や個人がロボットの大きさや機構に合わせて個別にソフトウェアを作っているが、ロボットの大きさに関係なく動作するミドルウェアの開発なども行っている。今後は、ネットワークを介して簡単に必要な動作プログラムをロボット本体にダウンロードして、動作させることもできるようになるという。

    東大の佐藤氏は、長年研究を行ってきたロボティックルームを紹介。ロボティックルームとは、部屋そのものがロボット化したもので、言い換えれば、ロボットシステムが環境化したものである。例えば、病室の天井に複数台のカメラを設置したり、ベッドの下に重さを感じるセンサを何百個も設置することで、部屋全体が患者の病状を絶えず監視し、さまざまなサポートを行ってくれるという。

    また、行動センサには行動パターンを蓄積する機能を搭載することもできるので、センサを人間につければ、日常の行動をすべて自動的に記録してくれることもできるようになる。

    東大の廣瀬氏はVR(バーチャルリアリティ)型ロボットについて紹介した。同氏はネットワークロボットを、今までの単体のロボットとは全く異なる概念だという。つまり、単体で存在するロボットはロボットが自律していないといけないが、ネットワークロボットの場合、ネットワークが自律していればいいのだそうだ。

    VR型ロボットを考えた場合、広帯域の通信回線を使うことによって、遠隔地の人とも距離感を感じることなく、同じ空間をシェアすることができるという。人間がVRの世界に入り込んだ時、同じ空間を共有している遠隔地の人間を認識するための手段としてVR型ロボットである"アバター"があるが、今後はVR技術の進歩によって、よりリアルな3Dのアバターが登場するようになるという。また、コンピュータ内の閉じた世界だけでなく、実世界にもVRを浮かび上がらせることができるようになり、リアルとバーチャルがよりシームレスになっていくという。

    東芝の土井氏は、人とロボットの共生について述べた。

    数年後、人とロボットは本当に一緒に暮らしていけるのか--。現在、SF小説やSF映画に登場するロボットの多くは戦闘用として使われており、人間と平和的に共存する鉄腕アトムのようなロボットは意外に少ないのだそうだ。今後、ロボットをどう活用していくかについてはさまざまな考え方があるようだが、土井氏が日本の主婦を対象に"ロボット家電"についてのアンケートを取ったところ、その大半が、家事を助けてくれるロボットについては大歓迎だという。ただし、価格帯としては10万円未満が最も多かったそうで、ロボットの早期普及のためには、価格も大きな課題となりそうだ。

    小説や映画に登場するロボットの分類

    パートナーロボットで希望する金額

    しかしながら、東芝が26年前にワープロを初めて市販した時の価格が560万円で、現在、パソコンに搭載されているワープロ機能の低価格化を考えると、26年の間に価格は大きく下がっているわけで、価格に関してはあまり心配していないという。

    テムザックの高本氏はこれまで開発、販売してきた歴代ロボットを紹介した。

    テムザックが開発してきたロボット

    テムザックはご存知の通り、現在ロボットを専門に開発、販売活動を行っている会社で、実際にPHSなどを使って、福岡本社から銀座にいるロボットに向かって遠隔操作を行うなどさまざまな試みを行ってきた。最近では、恐竜型の4足歩行家庭用留守番ロボットを開発して198万円で販売したり、ビルなどの巡回警備ロボットを開発して年間300万円でレンタルするなど、精力的にロボットの事業化を推進している。

    そんな中、高木氏が感じることは、大きなロボットに関しては、免許制度が必要だということだという。ロボットがネットワークにつながり、遠隔地からでも安易に操縦できるようになれば悪用されないとも限らないからだ。自動車同様、事故が起こる可能性もあるため、ロボット専用の保険制度なども必要になるだろうと述べた。

    最後に行われた全員によるパネルディスカッションでは、ネットワークロボットの今後の課題などについて、パネリストたちから積極的な意見が出された。バッテリや価格の問題などもあるが、特にセキュリティ問題は重要だ。例えば、今後見守りロボットなどが生活に入り込み、所有者に関するさまざまな情報を蓄積するようになれば、ロボットを通じてプライバシーが流出する危険性も出てくる。それを防ぐためのしくみ作りは、今後の大きな課題であると言えるだろう。

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