【レポート】
ISSCC2004で米IBMは、90nmプロセスへの移行や高速動作に伴うオーバーヒートの問題に、効率化と制御という2つの可能性を示した。
ひとつはIBMのRISCアーキテクチャ「Power4」をベースにした小型コンピュータ向け64bitマイクロプロセッサ「PowerPC 970」である。同プロセッサは162種類の128bitSIMD(Single Instruction Multiple Data)を追加することで、マルチメディアやグラフィックス処理など演算負荷の高いワークロードの高速化を実現している。
130nmのSOI技術で製造したPowerPC 970のアップデートでは、同時実行命令数が最大5命令+1分岐命令/クロックとなり、サポートする動作周波数が1.3~2.0GHzとなっていた。ノースブリッジとの間に72bitバス(ポイントツーポイントの双方向36bitバス)が用意され、CPUが2.0GHz動作時、1.0GHzのFSBで、8.0GB/秒のデータ転送を実現。消費電力は66Wとなっている。キャッシュ容量は、命令用64KB、データ用32KB、L2キャッシュが512KB。配線層は8層のCu配線だ。
90nmのSOI技術で製造した「PowerPC 970+」はアーキテクチャの変更はなく、トランジス数は970と同じ5,800万個。配線層が10層となり、ダイサイズが970の118平方mmから62平方mmに縮小した。動作周波数は1.3~2.5GHz。
課題となるのは微細化に伴うリーク電流と発熱である。解決策としてIBMは「PowerTune」というクロック周波数/電圧のスケーリング技術を投入した。PowerTuneでは、動作周波数を最大から半分、または1/4へと切り換えられ、同時に電圧をスケーラブルに低減させることで総消費電力を抑えられる。どのような動作周波数/電圧の組み合わせでもnap mode(省電力モード)へと移行可能で、動作周波数が最大時の1/64となるDeep nap modeも用意されている。
消費電力は2.5GHz動作時でおよそ50W。動作周波数を625MHzに落とすと31Wになり、さらに電圧を1.0Vに落とすと15Wになるそうだ。パフォーマンスのために消費電力を犠牲にしたり、その逆のような状態を避けられるとしている。
IBMは13日、「PowerTune」技術を同社の90nm 300mm製造施設に導入し、SOI/歪シリコン/PowerTuneを用いた最初の製品として64bitマイクロプロセッサ「PowerPC 970FX」を製造すると発表した。970FXは、Apple Computerの「Xserve G5」に採用される予定だ。
IBMが初日に行ったもうひとつの発表は「POWER5」である。同プロセッサは、8ウエイのスーパースカラコアを2つ搭載。それぞれが複数のスレッドを並列処理するSMT(Simultaneous Multi-threading)機能を備えている。130nmのSOIプロセスで製造されており、動作周波数は1.5GHz以上。389平方mmのダイ上に2億7,000万個のトランジスタを集積可能だ。オンチップで1.9MBのL2キャッシュを搭載、36MBのL3キャッシュのコントローラを備える。
問題は、ハイパフォーマンス化による消費電力増と発熱である。オーバーヒートによるダメージを防ぐために、POWER5ではチップ全体に合計24個の温度センサーを配置。それぞれにリング発信回路が含まれている。
発振周波数は温度によって変化する電流でコントロールされており、一定時間内の発振回数を記録して温度を測るという仕組みだ。センサーには温度の上限がプログラムされ、設定値を上回った場合は、第一段階としてプロセッサコアの制御回路が動作周波数を引き下げる。それでも温度が下がらなかった場合は、第二段階としてフェッチやディパッチなどを通じてプロセッサのスループットが下げられる。講演では命令シーケンスを例に、およそ0.2秒間隔で81度から84度の間で上下させながら、温度を制御する例が示された。
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