【レポート】
○IP放送は今後普及するのか?
30日のパネルディスカッションからはもうひとつ「電気通信役務利用放送法による通信役務上での放送」をご紹介したい。ADSLや光ファイバなどの通信サービスを媒介として放送を行うサービスについては、今のところ大きく分けてIPマルチキャストベースで行われるサービス(KDDIの「光プラスTV」、ソフトバンクBB/ビー・ビー・ケーブルの「BBケーブルTV」など)と、光波長多重などIP以外の伝送手段を使用するサービス(スカイパーフェクト・コミュニケーションズの「オプティキャスト」など)の2種類があるが、今後果たしてIP放送は広く普及していくのか。
パネリストの中でIP放送支持派として登場したのがKDDIの雨宮直彦氏、ビー・ビー・ケーブルの大出富康氏の2人。まず雨宮氏は「光ファイバ上ではInternet接続や電話・放送・VoDなどさまざまなサービスが可能だが、それぞれサポート窓口が分かれてしまうのは問題だし、1つのIP網で全部やってしまえば手間がかからない」とIPベースのネットワークを使用するメリットを挙げた上で、「よくIP伝送だと視聴者が増えるごとにトラフィックが急増すると言われるが、IPマルチキャストならトラフィックはそもそも一定にできる」「ちょっと前までは確かに映像伝送は厳しかったが、光ファイバ伝送であれば独自にトラフィックをコントロールし得るCDNありきだが、UDPとFEC(Forward Error Correction)の組み合わせで十分高い映像品質を確保出来る」と述べ、IPマルチキャストベースによる放送が十分商用に耐えうるとの認識を示した。
大出氏も「IPマルチキャスト伝送はベストエフォートだから品質を保証できないというが、QOSやCDN等の技術により、品質・安定性は向上できる。従来型の電波による映像伝送にしても地上アナログであればゴースト、衛星波なら降雨減衰、デジタル放送ならブロックノイズなどの要因があり、実際には(末端までの品質を保証できないという点でいえば)ベストエフォートなサービスといえるのではないか?」と述べ、放送という概念と品質保証とが必ずしも一致していないことを強調した。同氏は「別にADSLにこだわっているわけではない」と前置きした上で「今までは(映像伝送に使用する)インタフェースごとに免許が分かれていたし伝送方式も異なっていたが、IPベースならどこでも流せる」とIPベースの放送の利点を挙げた。
一方で、IP放送の現状の問題点を指摘したのは、NTTスマートコネクトの沖本忠久氏、スカイパーフェクト・コミュニケーションズの河崎憲一郎氏の2人。沖本氏は「IPベースのブロードバンドのライブ配信はトラフィックパターンが読めない」「全国民が見るようなシステムなんてコストが馬鹿にならない」と語った上で、「今は無理にIPを使わなくても、WDMを使えば何でも流せる時代になってきている」「少なくとも放送屋(と呼ばれる人々)はIP放送に対して懐疑的なイメージをもたれている部分もある」と述べ、IP配信以外の放送方法もありうることを指摘した。
また、河崎氏は「放送屋にとっては"Internet=不正コピー"とのイメージが強いために、IPベースの伝送だと放送開始に必要な再送信同意がとれない」と、実務的な理由から当面IP放送の本格導入は難しいとの認識を示した。とはいえ同社がIP放送を一切否定しているわけではなく、後の質疑応答において河崎氏は同社とNTT西日本・伊藤忠商事が共同で行うIPv6による映像配信実験について触れ「スカパーはプラットフォーム会社であり放送局そのものではないので、品質、権利保護、コストなどの点で使えるメディアがあれば何でも使う方針」と、将来的に同社としてIP放送を導入する可能性を否定しなかった。
結論としていずれのパネリストも、少なくともIP放送が今後普及するためには「放送屋と通信屋の相互理解」が不可欠であるという点では一致。沖本氏は「放送と通信ではビジネスモデルの成り立ちや技術者のスキルといったものが大きく異なるため、それらを通信サイドがきちんと理解することが必要」と述べたほか、雨宮氏は「(放送屋を納得させるために)今後放送のQualityを上回る技術開発を行って欲しい」と、会場にいる開発関係者に訴えた。
大出氏は「これまでダウンロード型放送は(不正コピーなどの問題があり)タブーとされてきたが、著作権保護などの技術開発が進んできたことで、少なくともハリウッドは(ダウンロード型に)理解を示し始めている」と述べ、これまでに比べ放送サイドも通信側の事情を理解した上で現実解を探り始めている様子が伺えた。
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