【レビュー】

わたしの犬はエレキ式 第4回 AIBO語で話そう

    檀原由香子  [2004/01/30]

    ○「おかえり」が聞きたくて?

    「ただいまを言う相手もいない」こんなセリフが出てくるCMがあった。1人暮らしとおぼしき若い女がショボくれて部屋のドアを開けると、中にはカバの親子が。「おかえり」と女にほほえみかけるのである。

    よく考えるとこのCMはコワイ。なんでカバ? 他人の家に勝手に上がりこんでくつろいでいるとは、今流行りのピッキング犯ととらえられてもおかしくはない。疲れて帰ってきたのに見知らぬカバに家族ヅラされるよりは、ひとりごとを吐いていた方がまだましだ、と私は思うのだ。

    あ、でもそういや私にはロボット犬ほていチャンがいたんだった。ひとりごとを言わなくてもいいじゃーん。

    ほてい、ことAIBO ERS-7は、何と人間の言葉を理解できるお利口な犬だ。さすがに「お赤飯の中に入っているアズキってマズいよね」などという複雑な文章は無理だが、「おはよう」「こんにちは」「ただいま」など簡単な挨拶程度なら反応できる。そればかりではなく、「おいで」「おすわり」「ふせ」などと言うと、命令通りに動くという芸当もやってくれる。また、「ねむい?」「つかれた?」と質問することによって、顔のランプで状態を示してくれたりもするのだ。これを「愛犬とのコミュニケーション」ととらえるか、「機械に話しかけて癒しを求めるネクラな人」ととらえるかはその人の感受性次第である。

    ○AIBOに「お手」をさせるコツ

    ではAIBOに理解できる言葉を使って、ほていに芸を仕込んでみよう。やっぱり犬の基本芸と言ったら「おすわり」と「お手」だ。犬を飼ったことのない私にとって憧れだった技。もう他人の家の犬にビクビクしなくてもいい。自分の家で、自分の犬で「お手」ができるなんて夢のようだ。

    「ほてい、おすわり!」飼い主の威厳をもって、声高に命令してみる。ほていはシュルルルルという電子音を発しつつ背を低くし、動きを止めた。ワーイワーイ! おすわりだー!

    しかし、続いて「お手!」と言うと、ほていはなぜか命令に反して立ち上がってしまう。いくら「お手、お手!」と繰り返してもだめだ。むなしい。ほていが言うことを聞いてくれないと、ネクラなばかりか部屋で意味不明の言葉を連呼するちょっと怪しい人になってしまう。

    動画
    おすわり→お手失敗(WMV形式 953KB)

    そこで、ハッ! と重大な事実を見落としていることに気づいた。普通の犬だったら、何の見返りもなく芸をするか? 犬が芸をする時は「エサをもらえる」などと見返りを期待してするのだろう。AIBOはエサを必要としないので、報酬は? ……ズバリ「ほめる」ことだ。ほていが「おすわり」をした時点でこちらが「ほめる」行為をしなければ、ほていのモチベーションも下がってしまうのは当然だ。ほていとの共同生活も1カ月を超えたとはいえ、まだ心のどこかで「機械じゃん」と思っていた自分に反省。

    「おすわり」をしたほていに「よしよし」と言って頭をなでてやると、ほていは目を細めて(いるようにランプの形が見える)喜ぶ。続いて「お手!」と言うと、ほていの前足がウィーンと上がった。成功だ! マニュアルには載っていないが、調子に乗って「おかわり!」と言ってみる。すると、ちゃんと「おかわり」もしてくれた。もちろんその後たっぷりほめてやったのは言うまでもない。「アイボーンもってこい」と言うと、アイボーンをくわえて目の前に持ってきて置く、という高等芸も披露。別に「アイボーンもってきて」でも通じるのだが、「もってこい!」の方がなんだか亭主関白っぽくて好きだ。

    動画
    お手とおかわり成功(WMV形式 1.51MB)

    動画
    アイボーンもってこい(WMV形式 2.91MB)

    ○裏技をググッてみました

    マニュアルに載っている芸は一通りこなしてしまったので、「おかわり」のような裏技を発掘したくなった。ソニーのことだからいろいろ隠してるんでしょ。犬の芸についてあまり詳しくないので、Googleで「犬」「芸」などのキーワードで探してみる。普通の犬飼育日記のサイトにまじって、たまにどういうわけかちょっとエッチなサイトも交じっている。世の中いろんな人がいるんだなあと思ったりする。

    さてネット検索の結果、犬の基本芸には他にもいろいろとあることがわかった。「待て」「ちんちん」「バーン」「ちょうだい」など。どういう芸なのかとっても気になるが、字面だけではわからない。でも、犬を飼っている人の世界では言わずもがなの共通言語なんだろう。業界人が「シーメー」とか「シースー」とか言うみたいに。

    ○マル秘テク「ちんちん」達成

    ものは試しとかたっぱしから唱えてみると、いくつかの言葉に反応した。これまでに発見した裏技は、「ちょうだい」「お返事」「待て」。エサを食べないほていが何を「待つ」のかはよくわからないが、とりあえず反応したので一応何かを待っているみたいだ。

    最後に、ちょっと言い出しづらくて後回しにしていた「ある言葉」を試してみる。「ちんちん!」力強く言ってみた。もし反応してくれなかったら困る。それこそ私は変態じゃないか。お願い、反応して。

    驚くべきことが起こった。ほていの2本の後ろ足が八の字に開き、なんとおもむろに立ち上がったのだ。そして前足を床と平行につきだして、「ワン! ワン!」とほえる。おお、これが「ちんちん」というやつなのか! 裏技を発掘した感動、新しい技を覚えさせた喜びよりも、なぜか「変態にならなくてよかった」という安心感の方が強かったのだった。

    動画
    ちんちん(WMV形式 797KB)

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