【レポート】
23日に行われた7.「環境マネジメントとコミュニティ形成」では、「地球環境問題の解決や都市再生に不可欠なコミュニティを形成するための技術と応用」をテーマにしたセッションが行われた。
講演者は、慶応義塾大学 総合政策学部教授の福井弘道氏、同じく、環境情報学部教授兼政策・メディア研究科委員の石川幹子氏、大和市企画部情報政策課チーフで、慶応義塾大学SFC研究所所員兼環境情報学部非常勤講師の小林隆氏、藤沢市市民電子会議室運営委員で富士ゼロックス・光システム事業開発部の新津岳洋氏、慶応義塾大学客員教授でInternational Center for Remote Sensing EducationのPresidentであるTimothy W. Foresman氏、司会は環境情報学部教授の武藤佳恭氏。
○福井弘道氏 統合型「GIS」
福井弘道氏の講演では、地理情報システム「GIS」に関する研究内容が紹介された。最近、地方自治体などでは統合型GISを導入し、防災、福祉、環境に役立てていこうという動きが活発だが、福井氏は、国や地方自治体、民間企業、海外標準化コンソーシアムなどと連携して、「空間情報基盤の相互運用性」に関する研究・開発や次世代の地球データベースの開発とその応用研究などを行っている。講演では、PDAを利用したMobile real time GISやWEB-GIS(インターネット対応の双方向型地理情報システム)などについて紹介された。
○石川幹子氏 「ビオトープマップ」
地球環境問題と都市再生に取り組んでいる石川幹子氏は、GISなどを用いて鎌倉市の自然環境のデータベース化を行い、自然の状態で多様な動植物が生息する環境の最小単位である「ビオトープマップ」というものを作成している。講演では、今後、高度情報技術を長期的なまちづくりにどう反映させていくかといった課題を踏まえつつ、ビオトープマップを用いた鎌倉市の生物多様性調査の内容や横浜の緑地の推移などが紹介された。
○小林隆氏 ICカードを利用した電子地域通貨
また、神奈川県大和市における情報政策の推進を行っている小林隆氏の講演では、電子会議室による市民参加や約9万枚のICカードを利用した電子地域通貨など、ネットコミュニティの形成を情報政策の柱としてきた神奈川県大和市の取り組みについての報告が行われた。
大和市では、ユーザー登録さえ行えば、大和市民だけでなく誰でも参加することができる「どこでもコミュニティ」という電子コミュニティを運営しており、60代以上の高齢者による参加率が非常に高いという。また、循環型まちづくりを目的に、「LOVES」と名付けられた地域電子通貨システムのコミュニティも形成しており、これに関しても、地域住民による高い利用率を示している。このように、大和市では他の都道府県に比べ電子自治体への取り組みがかなり進んでおり、地域コミュニティの活性化や地域経済の再生に大きな効果をもたらしているという。これからのユビキタス社会を前提とした電子自治体のあり方を学べるという点で、非常に興味深い成功例と言えるだろう。
○新津岳洋氏 市民電子会議室の可能性
神奈川県藤沢市市民電子会議室運営委員の新津岳洋氏による講演のテーマは、問題解決システムとしての市民電子会議室の可能性についてであった。神奈川県藤沢市では藤沢市市民電子会議室を運営しているが、これは、インターネットを利用した「新しい市民参加システムの構築」と「コミュティ形成」を目指し、藤沢市が慶応義塾大学SFCや藤沢市産業振興財団と共同で導入を進めてきたもので、2001年4月に本格稼動を開始している。その背景には、インターネットの急速な普及と、神戸大震災を機に起こった地域の情報化に対する必要性の高まりがあったという。現在、藤沢市市民電子会議室では、参加者同士の自由な情報交流などにより、新しいコミュニティ形成が図られているという。講演では、そういった藤沢市市民電子会議室の果たしている役割や利用者に関する分析結果などが報告された。
○Timothy W. Foresman氏
また、最後に行われたTimothy W. Foresman氏による講演では、同氏が熱弁をふるった。科学物質汚染などによる環境破壊や戦争、各地で起こっているテロなどを例に挙げ、われわれは地球を守るための活動に真剣に取り組んでいかなければならないと力強く述べ、セッションを締めくくった。
国際シンポジウムの締めくくりとして、23日16:30から行われた8.「全体のまとめとこれからの課題」には、21世紀COEプログラム拠点リーダーであり慶応義塾大学 政策・メディア研究科委員長の徳田英幸教授、同じく環境情報学部教授兼政策・メディア研究科委員の千代倉弘明氏、環境情報学部教授兼政策・メディア研究科委員の村井純氏、韓国科学技術院( KAIST )教授のKilnam Chon氏、政策・メディア研究科教授の金子郁容氏が出席した。
2時間に及ぶセッションでは、今後のブロードバンドアクセスやデジタルデバイドの問題、ネットワークコモンズなどに関する活発な意見が数多く出された。例えば、デジタルデバイドは年齢層、地域、貧富の差などによって起こりやすい。そのため、ネットワークの普及が遅れている農村部などでは、今後、都市部へ移動するといった傾向が高まる可能性もあり、「新しい技術が導入されることによって、人が引っ越しを強いられるのはおかしい」(Kilnam Chon氏 )とし、デジタルデバイドを広げないための配慮が必要不可欠だといった意見が出された。
また、近い将来、あらゆるものにIDタグが付けられ、ユビキタスネットワークが地球規模で広がっていくためには、Open Technology、Open sourceであることが重要であるとの意見も出された。しかしながら、資本主義社会においては、Open sourceであるためには新たなビジネスモデルを考えることが必要である。より快適なユビキタス社会を実現させていくためには、今後も数多くの課題をクリアしていく必要がありそうだ。
(山田久美 k-yamada@pc.mycom.co.jp)
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