【レポート】

坂村教授、「RFID普及のカギがチップコストというのはあまりに短絡的」

情報処理推進機構(IPA)は、開発成果発表などを行う「IPAX Winter 2004」を21日から2日間の日程で開幕した。初日にはT-Engineフォーラム会長・ユビキタスIDセンター代表で東京大学教授の坂村健氏が、RFIDなどユビキタスコンピューティング環境を実現するためのインフラをテーマに基調講演を行った。

T-Engineフォーラム会長・ユビキタスIDセンター代表・東京大学教授の坂村健氏

「これから何が起こるかわからない激動の時代に、どういうディシジョンをとるかによって、産業構造が決まる。PCが可能性のある製品だと十数年前に言われていて、いろいろな試みが行われた結果出てきた部品がいま使われている。同じことがユビキタスコンピューティングにも起こる。国際標準でもう決まっているからこの規格、というような安易な議論は絶対にいけない。国際協調はもちろん重要だが、やはり日本の中でどういうポジションを得て、どういうものに従って展開していくかを決めるのが非常に大事」と文字通り声を大にして強調する坂村氏。今年から独立行政法人となったIPAに期待することとしても、日本におけるユビキタス社会の将来像を明確に描くこと、そして先進的なアプリケーションを実際に開発していくことが重要だと訴える。

今月から横須賀などで始まった青果物トレーサビリティシステムの実証実験については「野菜を作るところから食べるところまで一貫して情報システムが支援するということ」が最大の意義であると説明する。「誰が作ったのか、どんな農薬・肥料をいつどれだけ使ったか、いつ収穫したか、どこにどう運ばれたかなど、1本のダイコンにまつわるストーリーを全部知ることができる。農薬の名前を見てわからなければ、リンクしてある資料を見ることもできる。食品の安全性は命にかかわることであり、誰もが知りたい情報。一見同じに見えるダイコンも、これからはより情報が公開されているものが売れるようになる。このようにダイレクトに消費者の役に立つアプリケーションがユビキタスには求められるのであって、もちろん流通コスト削減にもなるが、流通コストを下げることだけを目的としたバーコードとは違うものだ」。

店頭の端末やユビキタス・コミュニケータで使用された肥料などを知ることができる。肥料や農薬の説明を見ることもできる

商品1個1個すべてにICチップを添付する必要があるので、そのコストが店頭の商品価格に跳ね返ってくることを懸念する声もある。しかし坂村氏は「生産者、流通にかかわるいくつかの業者、そして消費者をあわせると、1個の商品には5者くらいのプレイヤーが関係している。単純計算だが、チップが1個10円だったとしても5で割れば2円。チップを付けることによって2円以上の価値を生めばいい。あらゆる食物の情報が1個2円でわかるなら私は払いたいと思う。何だかわからないものを食べて死ぬのはいやだ。そして、チップをつけることで当然流通コストは下がる。コンピューターはそもそも生産性を上げるために導入するものだ。そう考えると、『普及のカギはチップコストの低減』などというのはあまりに短絡的すぎる。100円の商品に10円のチップは付けられない、なんてのはウソ」と一蹴する。

動画情報のある商品にユビキタス・コミュニケータを近づけた例。農家から「消費者へ直接メッセージを伝えたい」という声もあったという

坂村氏は「アプリケーション、RFID、ユビキタス・コミュニケータと作っていくのはけっこう大変なことだ。チップだけを作って終わりではなくトータルシステムなので、この分野に日本人は弱かった」と話し、多くの領域にまたがるサービスの開発はこれまで日本が苦手とした分野だったと指摘する。しかし、組み込みコンピューターの開発基盤「T-Engine」が立ち上がり、技術が広く流通する環境が整いつつある。「いまTRONは強い。なぜなら1回ひどい目に遭った経験があるからで、ずっとうまくいっていたら逆に、もし何か起こったときに弱いのだろう。ユビキタスに関しては『そう簡単にはやられないぞ』という自負がある」。

ユビキタスサービスはトータルシステム

最後に坂村氏は、いつも講演で強調している「技術による国際貢献」を繰り返し訴えた。「世界が争うのではなく、私たちが技術を発信し、世界の人たちがそれを使うことによって、日本が技術貢献をしたことになる。私たちから情報を、新しいものを出さなければいけない。先進的な実証実験も私たちがリスクを負ってやらなければいけない。その結果は、失敗も成功もすべてオープンにする。あらゆる情報を外に出すことで世界が、日本はよくやっている、貢献しているとわかってくれる。それは10年後にわかることであり、いますぐにわかることではない」。

「『みんなと仲良く』がいまの私のキーテーマ」(坂村氏)。右はMicrosoftの古川享氏、左は組み込みLinuxで知られるMontaVista SoftwareのJim Ready氏で、いずれの陣営ともケンカはしていないと強調。ただし「両隣の人たちが戦っているのは事実ですが」とつけ加えた



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