【レポート】
○ATIとNVIDIA、それぞれの異なる選択
この究極の選択において、2大GPUメーカーのATIとNVIDIAは異なる方針を取ることになる。
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| GeForce FX系とRADEON系、それぞれのピクセルレンダリングパイプライン概念図 |
ATIはピクセルレンダリングパイプラインの本数を8本とすることを選択、現行のGPU製造技術の範疇内で最大パフォーマンスが出るアプローチを取る。このアーキテクチャの第一号GPUがRADEON 9700だ。
8本のパイプライン全てにFP-SIMD汎用演算器を内包させたために、逐次実行性の高い構造となり、リニアなパフォーマンスを発揮できることとなった。これは現在使用されている3Dベンチマークソフトとの相性が抜群で、2002年から2003年にかけてのベンチマーク競争で連勝することへ繋がっていく。
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ただし、パイプラインを8本にしたその代償として、FP演算精度は128ビット(32ビット×4データ)精度を実現できず、96ビット(24ビットFP×4データ)精度に妥協することになる。つまり、32ビットFPは24ビットFPに近似されて演算が行われるのだ。
これに対してNVIDIAは、ピクセルレンダリングパイプラインを明確な8本とせずにバーチャル化。演算の種類に応じた専用のFP演算器を、このバーチャルパイプライン間で共有して使い回す構造を選択する。このため、各パイプラインの処理系は、そのパイプライン演算器構成に制限されないため、自由度の高いプログラマビリティを同時に獲得する。これがプログラマブルシェーダ2.0を超越した仕様であるプログラマブルシェーダ2.0 "+" というわけだ。
ところが、シェーダプログラムを最適化しないとバーチャルパイプラインにて共有演算器の奪い合いが発生し、実効効率が上がらない。NVIDIA GeForce FXシリーズが最適化にシビアになってしまったのはこうした経緯があったためなのだ。ただし、GeForce FXシリーズは2003年時点において、D3D 9が規定する128ビットのフルFP演算精度を唯一具現化したGPUとなったのだ。
○2004年のGPUはどうなるのか、そしてDirectXは?
今年は、二大GPU勢力ATI/NVIDIA以外の第三勢力GPUともいうべき製品群にも期待が寄せられている。
1つは2003年末にリリースが開始されたS3 DeltaChromeシリーズだ。プログラマブル頂点シェーダ4基、ピクセルレンダリングパイプライン8本でプログラマブルピクセルシェーダ8基を搭載したDirectX 9世代プログラマブルシェーダ2.0対応GPUで、低価格でコストパフォーマンスが高いという特長を持つ。そして300MHz時の最大消費電力が3.4W以下という圧倒的な省電力性能を活かし、ノートPCへの組み込みにも期待がかかっている。
もう1つは、XGIが今年早々にリリースを開始する予定のVolariシリーズだ。こちらもDirectX 9世代プログラマブルシェーダ2.0対応GPUで、デュアルGPUでの使用を前提に開発されたというユニークな生い立ちを持つ。
デュアル動作時には、Volari#1があるフレームを描画している最中に、Volari#2が次のフレームの描画をオーバーラップして実行にかかるという仕組みをとる。つまり、オーバーラップ出来た時間分だけ描画時間が短縮されるという寸法だ。
DeltaChromeとVolari、この2つがどの程度ATI/NVIDIAの牙城に食い込めるかが2004年の見どころの1つとなる。
一方、その二大勢力の動向だが、2004年早々、ATIは完全新アーキテクチャとなるR42x、NVIDIAはNV4xをリリースする予定だ。両者ともに、プログラマブルシェーダ3.0仕様へステップアップするのか、注目はもっぱらここに集まる。
プログラマブルシェーダ3.0仕様ではプログラマブル頂点シェーダがテクスチャへのアクセス能力を持つようになり、より高度で複雑なボーン構造を持つキャラクタのスキニング処理やディスプレースメントマッピング(頂点テクスチャマッピング)が可能になる。
もし二大勢力が今年早々にプログラマブルシェーダ3.0対応GPUをリリースすることになれば、やっとプログラマブルシェーダ2.0への対応を終えたばかりの第三勢力はさっそく一世代分のギャップを被ることになる。
なお、R42xやNV4xの製造プロセスルールが90nmとなる可能性は低く、130nmのままか、あるいは110nmとなる可能性が高い。つまりGPUに積載可能なトランジスタ数はそれほど増加しないのだ。にもかかわらずプログラマブルシェーダ3.0仕様のような新フィーチャーには相当量のロジックを喰われるため、プログラマブルシェーダ2.0世代GPUで直面したジレンマはR42xやNV4xにおいてもつきまとうのだ。
そして、R42xは128ビットFP-SIMDへ進化してフル演算精度を獲得できているのか、NV4xはバーチャルパイプラインの弱点を克服できているのか、この点も気にかかるところだ。
DirectXの動向についても簡単に触れおこう。DirectXは、次期DirectX 10の発表が年内に行われる可能性がなきにしもあらずといったレベル。おそらく基本的に2004年内はDirectX 9がこのまま続投される。これにはいくつかの理由が考えられる。
1つは次期Windows(開発コードネーム:Longhorn)がDirectX 9を統合することを踏まえ、DirectX 9の成熟を図りたいというマイクロソフトの思惑。
そしてもう1つは、DirectX 9の華、3Dグラフィックスを司るDirect3D以外、ここしばらくDirectMusic、DirectPlayなどに大きな技術変革がなかったという点。そして進化速度の著しい3Dグラフィックス分野においても、これを司るD3D 9が、既に次世代プログラマブルシェーダの仕様である「3.0」への対応を完了してしまっているというのも、DirectX 9続投の大きな理由だろう。
マイクロソフトにしてみれば、「DirectX 9は、あと1年は戦える」といったところなのだ。
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