テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第84回は、17日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『ENGEIグランドスラムLIVE』をピックアップする。

漫才、コント、ピン芸、音楽ネタ、モノマネ、落語など、あらゆるジャンルのネタを披露する大型演芸特番であり、2015年5月の第1回からすでに12回を放送。旬の芸人たちに加えて大物芸人もネタを披露するという希少さに加え、昨秋の前々回から生放送に変わったことで、視聴者・業界関係者ともに注目度を増している。

  • 『ENGEIグランドスラム』MCの(左から)矢部浩之、岡村隆史、松岡茉優

■トップはまさかのキングコング

“スペシャルオープニングアクト”は、水谷千重子(友近)とChage(本物)のデュオ。フジテレビの2Fタレントクロークを回りながら名曲「ふたりの愛ランド」を歌い、若手芸人が浴衣姿でバックダンサーを務めるなど、8月の大型特番に相応しい真夏のムードを醸し出した。

ネタのトップバッターは、今や漫才師の印象が薄いキングコングという意表を突くチョイス。意外性に加えて、いきなり「闇」「反社」をイジるハイテンポ漫才で盛り上げた。

その後は、ロッチ(コント)、NON STYLE(漫才)、ロバート(コント)、変人(モノマネ)、チョコレートプラネット(コント)、和牛(漫才)、ハライチ(漫才)、かまいたち(コント)、フットボールアワー(漫才)、バイきんぐ(コント)、ジャルジャル(コント)、ナイツ(漫才)、霜降り明星(漫才)、四千頭身(漫才)、ハナコ(コント)、EXIT(漫才)、宮下草薙(漫才)、ゆりやんレトリィバァ(コント)、ジャングルポケット(コント)、バカリズム(コント)、友近&ハリセンボン春菜(コント)、麒麟(漫才)、ミキ(漫才)、かが屋(コント)、まんじゅう大帝国(漫才)、ザ・マミィ(コント)、金属バット(漫才)、千原兄弟(コント)、アインシュタイン(漫才)、モンスターエンジン(コント)、東京03(コント)が次々にネタを披露。

大トリはいつも通り爆笑問題(漫才)が務め、吉本興業、N国党、小泉進次郎議員と滝川クリステル、原田龍二、ピエール瀧をいじるなどの毒舌時事漫才で、4時間超の番組を締めくくった。

今回のラインナップは、漫才とコントの最前線で活躍する芸人たちが中心であったものの、若手が多かった感は否めない。やはり、サンドウィッチマン、ブラックマヨネーズ、チュートリアルらM-1王者。さらに千鳥、南海キャンディーズ、オードリー、博多華丸・大吉らの実力者が見られないのは寂しいし、当然ながらMCを務めるナインティナインのネタも見たかった。

その意味で今回は、千原兄弟の長尺コントと爆笑問題の時事漫才に対するリスペクトがおのずと募ってしまう。

■お化け芸人を秒単位で仕切る麒麟・川島明

一方、ネタ以外の企画は、主に3つ。

最も放送時間が割かれたのは、出演終わりの芸人がくつろぐスポットとして用意された「プレミアムビアガーデン」。夏らしく生ビールで乾杯するとともに、「視聴者からの質問を生募集して答えてもらう」という企画だったが、仕切り役を霜降り明星が務め、背後を同世代の若手が固めたところに「第七世代をフィーチャーする」という今回の主旨が表れていた。

しかし、第七世代はネタに自信があっても、生放送のトーク力はまだまだなのか、グダグダに終わることがほとんど。ナインティナインが無理して拾わずCMに持ち込んでいたことが、その不発ぶりを証明していた。

次に、箸休めのような歌コーナーとして企画された「2019夏ENGEI歌謡祭」は、懐メロ×替え歌の定番企画。EXIT×大事マンブラザーズ・立川俊之が「それが大事」、TT兄弟×岩崎良美が「Tッチ(タッチ)」、ココリコ遠藤×武田真治が「愛は勝つ」を歌い上げたが、芸人とアーティストの絡みが少ない上に、生放送らしいアドリブもなく、急仕上げの感は否めなかった。EXITとTT兄弟という子ども世代の人気芸人を仕掛けたが、結果的に最も盛り上がりを欠く時間帯になったのかもしれない。

ネタ以外のコーナーで唯一盛り上がったと言えるのが、一世を風靡したお笑いキャラを集め、視聴者投票で最も蘇らせたいキャラを決める「蘇りお化け屋敷」。三瓶、とにかく明るい安村、ハンバーグ師匠、モンスターエンジン、クールポコ。、キャプテンボンバー、レギュラーが登場し、視聴者投票の結果は3位レギュラー、2位ハンバーグ師匠、1位モンスターエンジンだった。

テレビから消えた芸人をお化けに見立てるシュールさに加えて、ネタ披露の寸前でバッサリと斬ってしまう麒麟・川島明の仕切りで爆笑を連発。生放送でありながら、各お化けキャラの「ネタ披露」「ネタ終了」を秒単位での切り換える川島とスタッフの技術が冴え渡っていた。

■賞レースに負けない緊張感と臨場感を

『M-1グランプリ』『R-1ぐらんぷり』『キングオブコント』などの賞レースが例年盛り上がっているのは、「生放送の臨場感によるところが大きい」ことは今さら言うまでもないだろう。

では、『ENGEIグランドスラム』に、賞レースのような「結果が読めない」「とんでもない失敗をしてしまうかもしれない」という緊張感や臨場感があったかと言えば、残念ながら答えはノー。強いて言えば「大トリの爆笑問題・太田光がどんな暴れ方をするのか?」という期待感があったくらいだ。

「賞レースとネタ番組は異なるものであること」も、「売れっ子芸人をそろえることだけでも難しいこと」も、百も承知だが、関連性のないネタを立て続けに見せていくだけでは、よほどタイムリーなアドリブを交えない限り、生放送の醍醐味を伝えていくのは難しいだろう。「同世代の芸人でガチンコのワンマッチを組む」「“ネタの夏祭り”と題したのなら、夏の関連ネタで統一する」程度の構成を求めてしまうのは高望みなのか。

もう1つ気になったのは、出演者たちが繰り返し「お笑い第七世代」というフレーズを口走り、ネタも霜降り明星から数珠つなぎで連続出演させたこと。視聴者にしてみれば第何世代だろうが関係ない上に、岡村が「(ひとつ前の)第六世代って誰だっけ?」と言っていたように、各世代を覚えている人はほとんどいない。

「ブームを作って盛り上げたい」という気持ちはわかるが、ネットが普及した今はメディアが仕掛けたものを受け取るより、人々が自ら発信し合うレコメンドの時代。このようなテレビ主導による仕掛けは前時代的であり、昨春の『めちゃ×2イケてるッ!』終了で完全に終わったものと思われていた。

フジテレビは『新しい波』シリーズで世代ごとに芸人をプロデュースしてきた歴史を持つが、令和に入るなど時代は着実に進んでいる。だからこそ『ENGEIグランドスラム』は、「本当に視聴者が見たい芸人は誰なのか?」という答えのような番組であってほしいと願わずにはいられない。

■次の“贔屓”は…前代未聞のチャリティ駅伝は成功するか? 『24時間テレビ』

『24時間テレビ42』総合司会の水卜麻美アナウンサー(左)と羽鳥慎一

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、24~25日に放送される日本テレビ系大型特番『24時間テレビ42 愛は地球を救う』(18:30~翌20:54)。

42回目を数える今年のテーマは、「人と人 ~ともに新たな時代へ~」で、メインパーソナリティーは嵐、チャリティーパーソナリティーは浅田真央、総合司会は羽鳥慎一と水卜麻美アナ。令和という新たな時代になり、チャリティーマラソンが駅伝方式になるなど、いくつかの変化が予想されている。

主なコーナーとしては、「土屋太鳳が難病少年とアルプス登山に挑戦」「羽生結弦&松任谷由実のスペシャルコラボショー」「大野智が義足の少女を応援。国技館100人ダンス」「二宮和也が贈るお節介バラエティ」「深夜のしゃべくり007で嵐が餌食に」など。

近年は感動と同等以上に、番組の意義が問うような声も飛び交っているだけに、全体を見渡しながらポイントをかいつまんで掘り下げていきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。