テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第243回は、25日に放送されたテレビ東京のバラエティ特番『よだれもん家族SP 間野一家チートデイ幸せ口を探せ!』(16:00~)をピックアップする。

『よだれもん家族』は、今春から毎週日曜11時台に放送されていた“お取り寄せ”がテーマのグルメドラマ。25日昼に終了したが、同日16時から「登場人物がグルメロケ」を行うバラエティを放送された。

これは、テレ東がシルバーウィークの19~25日に行った『~テレ東系 食べる1週間~食べ東 世界を幸せ口にする』というグルメキャンペーンの一環だが、グルメドラマとグルメバラエティの両者に新たな可能性を広げるものになったのか。異色かつ意欲的な取り組みであり興味深い。

  • 『よだれもん家族SP』に出演する(左から)宮澤エマ、大竹一樹、松尾諭

    『よだれもん家族SP』に出演する(左から)宮澤エマ、大竹一樹、松尾諭

■ミニドラマの自虐からスタート

番組は父・間野啓太(大竹一樹)の「何だよ、またテレ東のグルメ番組か」「嫌じゃないけどさ、テレ東ってすぐグルメに走る節があるから」「(『食べ東』という)またネーミングが安直だな」というボヤキからスタート。

父・啓太(大竹)、妻・絵理子(宮澤エマ)、娘・そら(長谷川百々花)の3人が登場し、やはりあくまで“間野家”という設定で番組を進めるようだ。冒頭はこの日の昼で終了したドラマの続きを思わせるミニドラマだったが、自虐から始めるところがテレ東らしい。

続いて、ナレーションで「ふだんはお取り寄せをしてささやかな贅沢を満喫している家族が、年に1回、団地を飛び出し、おいしい店の数々をただただ山賊のように食べ歩くというエグい家族行事を行っている。名付けて“間野一家チートデイ”」という特番のコンセプトを紹介。“お取り寄せ”から“食べ歩き”に変わっても、同じグルメドラマのジャンルだけに何の違和感もなく、理にかなった企画であることを感じさせられた。

たとえば、『孤独のグルメ』の井之頭五郎(松重豊)や『ワカコ酒』の村崎ワカコ(武田梨奈)が、逆にお取り寄せグルメを紹介しても違和感はなく、むしろ「見てみたい」と思ってしまうのではないか。これはテレ東が放送した『きのう何食べた?』『絶メシロード』『先生のおとりよせ』『ザ・タクシー飯店』『しろめし修行僧』など、他のグルメドラマも同様だろう。質量ともに十分な同局ならではの企画であり、ひいては『食べ東』というグルメキャンペーンを行う理由にもつながっている。

ドラマと同じオープニングをはさんで、3人はグルメロケへ突入。白いトンカツが名物の南阿佐ヶ谷「とんかつ成蔵」に入ると、『家、ついて行ってイイですか?』MCのビビる大木と狩野恵里アナが本人役で登場する。料理が届けられるまでの間、「“一般人の間野家”がMC2人に番組の魅力を尋ねる」というシーンが始まった。

■撮影+役名での出演で息ピッタリ

同番組は今秋から日曜20時に放送時間が変わるだけに、番宣のタイミングとしては最適。つまり『よだれもん家族SP』は、「ドラマ最終話の派生特番ながら、他番組の番宣要素を含む」という巧みな企画であることが発覚した。

白いトンカツを食べた啓太は、「うまい」「食べたことない」「やわらかい」と、食レポというより一般人を思わせるリアクションを連発。これも大竹一樹ではなく、間野啓太として出演しているドラマの派生特番だからなのだろうか。その分、狩野アナがしっかり食レポしていたほか、全員で口をとがらせてキャンペーン名の「幸せ口」をアピールするなど、異色メンバーながらまとまりのあるグルメロケだった。

2軒目の店に入ると、もう1人の出演者で間野家に居候している絵理子の兄・久慈元(松尾諭)が登場。店は「元のバイト先」という設定だが、間野家の3人はテイクアウトスイーツを3品持ち込んで食べるという。唐突であり、理由も説明されなかっただけに、出演者のスケジュールや拘束時間などの都合でこうなったのかもしれない。

続いて4人は、元のおすすめというカレー店の三田「ゼロワンカレーA.o.D」へ。そこに放送中のドラマ『絶メシロードseason2』主演・濱津隆之が現れ、またも間野家によるインタビューが始まった。さらに、啓太が「撮影とか全部1人でやってるの?」と素人のような質問を浴びせて盛り上げるパターンも前の店と同様。食事が始まると4人それぞれが幸せ口のポーズを連発したが、変顔大会のようでもあり、笑いを誘っていた。

4人の役割分担が整理され、その呼吸が合っていたのは、2クールドラマの撮影をともにした上に、そのまま役名で出演しているからではないか。その意味で「グルメドラマから派生したグルメバラエティ」は、想像以上にいい企画なのかもしれない。