テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第128回は、28日に放送されたテレビ朝日系バラエティ番組『相葉マナブ』(毎週日曜18:00~)をピックアップする。

「ニッポンを元気に!! を合い言葉に」のコンセプトで、13年4月に相葉雅紀初の冠番組としてスタート。相葉がさまざまな日本の文化を学びながら成長を重ねていくロケバラエティとして定着し、安定した人気を保っている。

今回の放送は新企画「マナブ! ご当地フルーツ料理選手権」。山形のさくらんぼや山梨の桃など全国各地の美味しいフルーツを紹介し、ご当地ならではの料理を学んでいくという。

主に進行役を務めていた渡部建がスキャンダルで不在となった影響はあるのか? また、相葉は『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)で事実上の2代目MCとなったが、その影響は冠番組にも及んでいるのか? 相葉は「嵐の中で最も好感度が高い」と言われ、日曜夕方の密かな人気番組だけに、このタイミングで現状をチェックしておきたい。


■2人きりゆえのハイテンション

ハライチの澤部佑

森が広がる大自然の中、相葉が拳を突き上げながら元気よく「マナブ! ご当地フルーツ料理選手権」とタイトルコール。すかさず澤部佑が「待ってました~!」と盛り上げると、相葉も「恒例みたいに言うけど、初めて(の企画)よ」と返して息の合ったところを見せる。出演者は2人きりで、背景は大自然だけに、これくらいのハイテンションが必要なのだろう。

続けて相葉が「もうすぐ夏。夏と言えばフルーツですね。日本各地にはおいしいフルーツや、それを使ったおいしい食べ方がたくさんあるのでご紹介していこうと。ただ食べるしか僕らは知らないんで。それを料理するらしいです」と企画の主旨を説明すると、澤部は「助かりますよ!」と再びハイテンションで合いの手を入れる。すると相葉も、「やっていこうぜ!」と、さらに上をいくハイテンションで応え、2人はソーシャル・ディスタンスの距離感を守りながら「イエーイ!」とグータッチを交わした。

まずは、山形県のさくらんぼ・佐藤錦が登場。相葉が「めちゃめちゃかわいくない? このビジュアル。赤い感じが恥ずかしがっているみたい」と口火を切ると、澤部が「桃もかわいいですけどね」と話を広げ、相葉は「ああ~っ、桃ね。桃! さくらんぼ! いちご!」と“3大カワイイフルーツ”を掲げて盛り上げる。これが台本ではなくアドリブなら、相葉のトーク力はなかなかのレベルにありそうだ。

ここで制作サイドが、「山形県はさくらんぼの収穫量が47年連続1位」「2018年の収穫量は1位の山形県が1万4,200tで2位の山梨県が1,080t」と圧倒的であることを紹介。さらに現地のさくらんぼ農家・小座間剛さんと姪の富樫美羽さんが自撮り映像で登場し、「カルピスに漬ける」という意外な保存方法を公開した。このあたりのデータや一般人の扱いは丁寧かつ親切で、ファミリー視聴の多い日曜18時にふさわしい。

相葉と澤部は、さくらんぼ入りのカルピスを飲んで絶賛。相葉から「今日、小学生大興奮していると思うよ」と話を振られた澤部は「オイ! 芸能人になったらカルピス濃いめでいけるのかよ」とノリボケで応じて笑わせた。

■乳児への配慮に見えるターゲット層

2つ目のフルーツは岡山県のバナナで、国産品として話題の「もんげー(“ものすごい”の方言)バナナ」が登場。凍結解凍覚醒法を駆使した「もんげーバナナ」は、皮まで食べられる珍しさに加えて、糖度は約25度もある(普通は約15度)という。

相葉と澤部は「もんげーバナナ」生みの親の田中節三さんからスムージー作りを教わり、そのおいしさを絶賛。さらに、相葉が「澤ちゃん、これを練り込んだパンケーキ食べたくない?」とボケを誘うと、澤部はバカっぽく「パンケーキ食べたいな~」とふざけて返した。

しかし、相葉は苦笑いで「違うんだよ。(夢屋まさるのネタをしながら)これ求めてるんだけどな」とダメ出し。こんなコンビネーションが合わなかったトークを放送できることが、相性のよさを物語っている。

3つ目のフルーツは山梨県の桃で「日川白鳳」が登場し、桃農家の三井公司さんが桃のピザを紹介。試食シーンで相葉がはちみつをかけて食べはじめたとき、画面下部に「はちみつを含む食品は1歳未満の乳児には与えないでください」の文字が表示された。このような些細な配慮からも、番組が狙う視聴者層が見えてくる。

4つ目のフルーツは宮崎県のマンゴーで、糖度15度以上、主さ350グラム以上などの条件をクリアした「太陽のタマゴ」が登場。マンゴーのサンドイッチを食べた相葉がカタコトで「マンゴーと生クリームの相性最高ネ!」とコメントすると、澤部も「最高ネ!」と合わせ、「最高ネ!……どこの人だろ?」と笑い合った。中高生レベルのノリでくだらないが、こんな底抜けの明るさは、明朝の仕事や学校が気になりはじめる日曜18時にはちょうどいいのかもしれない。

最後はフルーツ単体ではなく、大阪名物のミックスジュースをピックアップ。作りたてのミックスジュースを飲んだ相葉は「ほとんど飲んだことないけど、全然『初めましての気がしない』っていうか、親しみやすい。だから俺らみたいな立ち位置よね。近所のお兄ちゃん的な。ねっ?」と続けて笑わせると、澤部も「確かに! 僕のキャッチフレーズは“国民の弟”ですから」ときっちりオチをつけて番組は終了した。

■渡部不在のネガティブな影響はなし

特筆すべきは、すべての料理を相葉自ら作っていること。この番組で包丁さばきや食材の扱いを習得した相葉の腕と手際は、すでに主婦がリスペクトするレベルにあり、レシピをそのままマネしたくなるほど安心して見ていられる。

となると不安なのは、作り終えたあとの食リポだが、渡部不在の影響はまったく感じさせなかった。それどころか2人きりになったことで、「相葉の食レポを澤部が生かす」「相葉の食レポを澤部が補足する」という関係性がスッキリして見やすくなった印象すらある。

2人は30代中盤と同年代だけに、タメ口で言葉を交わすことも多く、これも40代後半の渡部がいなくなったことで以前より際立っている。トリオではなくコンビになったことで、相葉のMC力が引き出され、澤部のアシスト力を証明しているのだから、まさにケガの功名ではないか。

『志村どうぶつ園』では「志村さんの遺志を継ぐ」という使命感からか、まだ硬さが見られるが、一方でハジけやすい状態となった『相葉マナブ』では相葉本来の天真爛漫さであふれている。各局がますますファミリー層狙いの戦略を強化する中、嵐の活動休止後に相葉がMCの仕事を増やしていきそうなムードが漂ってきた。

番組中、相葉は「家にバナナやベリーが常にある」「子どものころから桃が大好き、好きすぎてスリスリしていた」などのマイエピソードを連発。その撮れ高とファンサービスを意識した進行は、「これぞ冠番組」というものだった。個人的にはジャニーズ事務所のタレントで、最も現在の世相に合うMCではないかと思っている。

■次の“贔屓”は…コロナの謎に最先端科学で迫る 『タモリ×山中伸弥 人体VSウイルス』

(C)NHK

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、7月4日に放送されるNHKスペシャル『タモリ×山中伸弥「人体VSウイルス」~驚異の免疫ネットワーク~』(総合 19:30~20:45)。

17年から不定期放送されてきたタモリ×山中伸弥“人体シリーズ”の新型コロナウイルス版。いまだウイルスの脅威が消えない中、「免疫力の真実に最先端科学で迫る」というNHKスペシャルらしい骨太な構成に引かれる。

8K顕微鏡やCGを駆使した映像、タモリ&山中コンビならではの視点など、民放の報道・情報番組ではまず見られないものだけに、それらとの比較も含め見ていきたい。