元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな著作物は『確定申告書』です。

フリーランス、つまり、個人事業者として仕事をしていると、たくさんの会社と取り引きをします。イラストレーターもライターも芸人も、売れていなければ仕事をふる側の力の方が強く、あなたが作ったものを好き勝手に使われてしまうかもしれません。でも、作品の著作権はあなたにあります。著作権を正しく理解して、悪意ある取引先に対抗できるようにしましょう。

著作権って何?

基本的に、あなたは、あなたが作ったものの著作権を持っています。あなたがプロとかアマチュアにかかわらず、作ったものは著作物です。うまいとかヘタとか関係なく、思想や感情が創作的に表現されていれば著作物になります。 幼児の絵も、小学生の作文も、芸人のコントも著作物です。芸人のネタは、実名なら死後50年、芸名なら公表後50年保護されます。だから、50年経つと、誰がそのネタをやっても良くなります。

著作物になるものはたくさんありますが、身近なものだと、文章、音楽、振り付け、絵、写真、映画、ゲーム、プログラミングがあります。それらを誰かに販売しても、著作権は作者のものです。著作権がほしければ、著作権も買わなければいけません。では、著作権とは何なのか。 著作者の権利“著作権”は、2つに分けられます。それが、著作者人格権と著作権(財産権)です。

著作者人格権は以下の3つからなり、これらの権利は、他人にあげたり、売ったりできません。

・公表権……公表するかしないか、公表するならどんな方法で公表するか決める権利
・氏名表示権……著作者名を表示するかしないか、表示するなら実名か変名か決める権利
・同一性保持権……内容、タイトルを勝手に改変されない権利

著作権(財産権)はいろいろな権利の集合です。

・複製権……印刷、複写、録音、録画、撮影してコピーする権利
・上演権……上演する権利
・上映権……上映する権利
・公衆送信権……放送、送信する権利
・口述権……言語の著作物を朗読して口頭で公に伝える権利
・展示権……美術品と未発行の写真の現作品を公に公示する権利
・頒布権……映画の複製物を頒布する権利
・譲渡権……映画以外の著作物を譲渡する権利
・貸与権……映画以外の著作物の複製を貸与する権利
・翻訳権……翻訳する権利
・二次的著作物の利用権……自分の著作物をもとにする二次的著作物の著作権者が持つのと同じ権利

著作権がない人はこれらを勝手にできません。その作品を購入しても、著作権は著作者にあるので、できません。例えば、絵を買ったからといって、その絵の写真を撮って販売することはできません。作品を好きなようにしたい場合は、著作権も譲渡する旨を契約書に書くことになります。

作品を作った側は、作品と一緒に著作権を譲渡するなら、その分だけ金額を上乗せして交渉すると良いと思います。また、取り決めはなくとも、契約書を確認すると、著作権の譲渡が盛り込まれていることもあるので、注意が必要です。

著作物でも、著作権がないものも存在します。憲法や法令、国や地方公共団体の告示、通達、裁判所の判決などです。また、著作物といえないものには、アイデアや標語、タイトルなどがあります。

そうすると、漫画や映画、小説のタイトルで大喜利をするのは可能ですが、作品内の名セリフを改変するような大喜利は著作権侵害に当たる可能性があるような印象を受けます。ぼくは、法律の専門家ではないので、可否は判断できませんが、みなさんも知らないところで、気づかないところで、著作権侵害をしている可能性があります。

例えば、コンビニのコピー機で著作物をコピーするのは、本来であれば、著作権侵害に当たるそうです。しかし、当分の間は「文書又は図画」に限ってコピーが認められています。それでも配ったり、売ったりしてはいけません。 クリエイティブな仕事をしている場合は、自分の権利を正しく認識して、取引先との交渉を有利に進めましょう。

参考資料:一般社団法人日本児童出版美術家連盟『第一回著作権講演会・資料』

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら